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第10話 古代魔闘士(3) ――試し攻略?

 ――マギメタル鉱脈(推奨LV.64)


 私は今、1人でダンジョン攻略に来ている。

 職業を得た前後で、どう変わったのかを改めて確認する為だ。


 目の前に居る8本足で単眼のアラクネ型で無機質なゴーレムを上半身を回転蹴りで蹴り砕き、着地する。


『7240の経験値を獲得しました』


 上半身を砕かれたゴーレムは機能を停止し光となって消えた。


 今の私は拳や足だけに炎の魔力を纏っている。


「これがエンチャントかー、うーん……」


 そうこれが【エンシェ・エンチャント】の効果である。

 属性は念じる……というかイメージするだけで勝手に切り替わるので正直、使い勝手は悪くない。


 だが私の言い方が多少不満そうであるのは……。


 そこへ、今度は人形型のゴーレムが現れる。


 そのゴ―レムはカクカクと不気味な動きをしながら質量保存の法則無視で腕を伸ばし、私が居る場所を叩き付けた。


「……?」


「遅いよ」


「!?」


 私は風の魔力を纏ってゴーレムの背後に移動すると、相手が動く前に足を踏み込む【震脚】のスキルで動きを止め、その後その両手両足を拳と蹴りで破壊し、胴体に土の魔力を纏った【強打Ⅲ】を打ち込んでその体に風穴を空ける。


『5830の経験値を獲得しました』


 先程のアラクネ型ゴーレムと同じ様に人形型ゴーレムは光となって消えた。


 何回か使ってみてわかった事は炎なら火力の強化と炎属性の追加、風なら速度と風属性、土なら貫通力と土属性など、その属性に合った特色が発現する事がわかった。


 ネットとの情報を比較すると、古代魔法としての影響か通常より効果が大きいらしい。


「ふぅ……でもやっぱり、これじゃあなぁ~……」


 私はマジックスキルを切り、その場に座り込む。


 私がこの効果に不満な理由、それは単純に余り強くなった様に感じないのだ。


 属性のエンチャントがあればINT依存の攻撃になった今でも転職前の素の状態と同じ火力は出せる。


 適性の属性で戦えばそれ以上にもなるだろう。


 そう聞くと強くなった気がするかもしれないが、それはメリットだけを考えた場合である。


 適正な属性で戦えば火力は上がるが、逆に間違えれば火力は下がってしまう。


 敵に耐性がある属性だった場合、素で殴った時よりも火力が下がるときすらあるのだ。


 そして古代魔法としての特性は火力の下がり幅も大きくなっているし、【悠久の魔法使い】の併用はそれを更に3倍にする仕様の様である。


「扱いが難しすぎる……」


 これなら、慣れ始めていた【白砂姫の記憶】状態で突き進んだ方がお手軽で楽に、無傷での攻略も可能だっただろう。


 明らかに上級者向けの仕様に私はため息をつくのだった。



 ■



 ボス部屋に到着した私は即座に戦闘を開始する。


 ボスも大型のアラクネ型ゴーレムの様でその姿は大きい。


 道中に出てきた奴と違うのは4つの複眼で鎌の様な手が何本も生えている事だった。


「うわっ!?」


 多くの鎌から、何重にもなる飛ぶ斬撃の嵐に私は回避するしか無くなってしまう。


 これは元々の私の弱点だが私には遠距離どころか中距離攻撃手段が一切無い。

 手足に寄る超近接攻撃しか無いのだ。


 そしてこのレベルになると、簡単には近づけさせて貰えないモンスターばかりとなる。


「できれば速度の強化か遠距離攻撃の手段が欲しかったな。【エンシェ・スイッチ・エンチャント】【白砂姫の記憶】!」


 古代魔闘士には、耐久を下げるくせに速度の補正がほとんど無い。


 それに対して文句を言いながらも、時間制限付きの強化状態に入った私はモンスターの攻撃を上手く掻い潜りながら近づいていった。



 ■



 大型のアラクネ型ゴーレムの体が沈み光となって消える。


『ダンジョンボス:Type-CT-GGを倒しました』


『68000の経験値を獲得しました』


「ぜぇ……ぜぇ……SPにも、結構、問題が、あるのかな……」


 私は息を切らしながらもダンジョンを脱出しようとした。


 恐らく、このゲームには魔法以外のスキルにはSPを使用する仕様でもあるのだろう。

 そうじゃなきゃ、僅か数分で決着が着いた戦闘でここまで息が切れるのもおかしいと思う。


「それにしても……この職業、火力だけは頭おかしい……。案外相性良かったりするのかなー、すっごい限定的だけど」


 僅か数撃で倒せてしまったダンジョンボスの居た場所を見てそんな事を思う。


 私のスキルは使いこなせれば、レベル以上のステータスを発揮させる強力なものが多い。


 しかし、その分明らかに異様な程、疲れるのがとても速いのだ。


 体力には自信があったのだが、レベル以上のステータスは制御が難しく、その上負担も大きいということだろうか。


 だとしたら通常時はかなり抑える代わりに瞬間火力では、爆発的な力を発揮させる事が可能なこの職業は、案外相性が良かったのかも知れないと考える。


 おかげでボス戦だけはいつもより速く終えられた。


「ダンジョンのクリアランクはAか……一応職業を手に入れる前よりは上がってるんだね」


 ダンジョンのランク審査はかなり厳しいらしく、あの初めてのダンジョン以来S以上は取れていない。


 安定的にA、Bランクが取れているだけでも相当凄いそうだ。


 そんなことを考えながら私は外に出る。



 ■



 ダンジョンの外に出た私は空を見ながらぽつりと呟いた。


「ウキナ達に並ぶには難しい仕様も学ぶ事は必要か……」


 実際、今回のボスもMPが足りなかったが、属性や【悠久の魔法使い】の効果をしっかり載せられていたらもっと速く倒せただろう。


「伸びしろはまだまだあるんだもんね。遠距離攻撃の手段や速度上昇は欲しかったけれど、無い物ねだりをしても仕方が無い! 私はこの職業で頑張るぞ!」


 方針を決めた所で1つの用事を思い出す。


「そう言えば、今日はウキナとルユが話があるって言ってたっけ……そろそろ行った方が良いかな?」


 約束した時間にはまだ少し余裕があるものの、そろそろ行っても良さそうだった。


 場所はウキナの家との事だったので私は彼女から貰った転移石を使用して家の前に移動する。


 使い切りだが、そこまで高価な物でも無いので長距離移動には便利だ。


「お邪魔しまー……す?」


 私がウキナの家にお邪魔して見たのは、ウキナ、ルユ、クロ、トウカちゃん達が全員揃ってテーブルに突っ伏している姿だった。


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