第10話 古代魔闘士 ――転職クエスト
ファストタウンからは遙か遠い森にある石造りの神殿の中、カナは転職クエストを発生させる石碑の前に立っていた。
「思っていたよりも遠かったな~。途中までまた迷子になっちゃったのかと心配したけれど、ちゃんと辿り着けてよかった~!」
例によって、全然ちゃんと辿り着けていないカナだったのだが、そんなことは知らずにどんどん間違った方へ進む。
カナが石碑を調べると石版からホログラムのようなクエストパネルが表示された。
『転職クエスト:古代魔闘士を始めますか?』
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転職クエスト:古代魔闘士
目標:ボーグAA-G 30体
ボーグAB-G 30体
ボーグDB-G 30体
ボーグMS-G 30体
ボーグSS-S 20体の撃破
報酬:古代上級職《古代魔闘士》への転職
受注条件:不明
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「ウキナが言っていたのってこの職業かな?」
実はウキナから、職業の詳細すら何も聞かされていなかったカナはそこで自分が間違っている可能性を考え一瞬躊躇する。
「職業の詳細は……見れないのか、うーん」
こういうときはゲーム内からでもネットに接続して情報を収集するのが有効だったりするのだが、カナにはまだその発想が出来るほど、このゲームに慣れてはいなかった。
ネット上にもこの職業についての情報はほとんど出ていないのだが、何か気づける事はあったかもしれない。
「まぁいっか。折角ここまで来たんだし、ウキナのオススメなら問題無いでしょ! 職業名もそれっぽいし!」
しかし、カナは何も気づかぬままその転職クエストの受注にYesと応えてしまった。
直後、神殿の奥の床が音を立てながらスライドし、地下への下り階段が出てくる。
「おー、隠し階段か、この先に行けば良いのかな?」
階段を下っていくと薄明かりの点いた大きな広場に出た。
そこには球状に手足の生えたロボット達がガラクタの様に機能停止し、佇んでいる姿があった。
「もしかして……これがボーグほにゃららって奴かな? 全部機能停止しているみたいだけれど……うわっ!?」
突如背後の階段の入り口にガチャンっと鉄格子が降ろされるとボーグシリーズが全て再起動し始める。
カナの目にはおびただしい数の赤いアイコンと、それよりも紅いロボット達のフェイスアイの光が線を引いて写っていた。
「これって……まさか目標の100体以上を同時に相手をしろって事……?」
その呟きに応える様にAB-G型からは鉛玉が発射される。
「あぶっ!?」
レベルが上がり、反応速度も上がっていたカナには言うほどの速度では無かったが密度が酷い。
AA-G型は突進やら決して遅くは無い殴打を繰り出し、DB-G型は明らかに重装甲な装備で徐々に距離を詰めてくる。
更にそれぞれの機体の手前で障壁の様な物を展開するMS-G型。
そして-Gというだけあって全ての機体がかなり大型の機体であった。
「……これ、また間違えたかも」
明らかに高難易度なクエストに、カナは今更ながら自分がウキナのオススメとは違う転職クエストを受けてしまった可能性を考える。
このぐらいカナなら大丈夫と言いそうなウキナの姿も目に浮かぶが、流石にこの難易度は無いだろう。
しかし、ここまで来てしまったらもう遅い。
退路を断たれたカナには脱出手段はなく、ご丁寧にほとんどのアイテムまで機能停止していた。
「ああ、もう! 私のバカ~!?」
こうしてカナは何度目かの失敗を繰り返しながらクエストに挑むのだった。
■
「これで……最後……!」
『9720の経験値を獲得しました』
『Lv.が50から51に上がりました』
『転職クエスト:古代魔闘士の達成条件をクリアしました』
140体目の機体を倒したカナはその場に尻餅をついた。
辺りには機械の残骸が散らばっている。
かなりの消耗はしたものの、最終的にはノーダメージで切り抜ける事ができていた。
カナの火力振りなステータス構成に対して、かなりの高耐久を誇ったボーグ達であったが、それでも回避しながら着実に打撃を加えて装甲をシールドごと砕き、時には他の機体を盾や投げ飛ばしての武器として使うことで確実に倒して行った。
「疲れた……」
それでも高難易度であったのはたしかである。
カナのステータスは防御を捨てて回避と火力に全振りしている。
被弾はまだしも、直撃は死亡に直結しかねないので今回は意外と危なかったと言える。
そもそもカナは他のプレイヤーと違い、BP2倍、アクセサリー効果1.5倍などの恩恵によってステータスだけなら既に自身のレベルの2倍近い性能となっている。
ネックとなる大器晩成型故に起きる序盤の辛さをその異常な反射神経で乗り越え、デメリットはユニーク装備などで打ち消し、逆にメリットを最大限に活かす形ができているのだ。
相性もあるが、そんなカナが苦戦するくらいには今回のクエストは高難易度だっただろう。
「さて、お楽しみはこれからだよね」
息を整えたカナは開いた階段を登り、再度石碑の前に立つ。
『転職クエスト:古代魔闘士の達成を確認しました』
『職業:古代魔闘士への転職が可能になりました』
『職業:古代魔闘士への転職を開始しますか?』
「多分、本来の目的とは違うんだろうけれど……うん、折角達成したんだしなってみよう」
そうしてカナは古代魔闘士への転職に同意してしまった。
引き返す最後のチャンスだったとは知らないカナに、システムは無慈悲にも転職作業を開始した。
『職業を《古代魔闘士》へ変更します』
『【古代の呪い】が発動します』
『装備へ【古代の魔呪】が付与されます』
『初職業です。適性診断を開始します……診断完了です。ステータスに反映します』
『称号……
~
……を獲得しました』
『称号【悠久の魔法使い】を獲得しました』
『……
~
……』
「え?」
いつもの称号ラッシュだったので、特におかしな所は無かったのだが、一番初めの方に不吉なメッセージを聞いたカナは、システムメッセージも鳴り止まない間に急いで自身のステータスを開き、その詳細を確認した。
状態:【古代の呪い】
効果:古代職以外への転職ができなくなる。この効果は古代職に就いている限り永続。
状態異常呪いに完全無効耐性を得る。
『古代の魔呪』
装備の効果全てにINTへの補正も追加する。
魔法使い系統以外の職業で装備すると職業補正が無くなる。
獲得した称号スキルや細かいカナのステータスは次回以降やります




