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第9.5話 閑話 ――ウキナとルギの特訓

閑話なので物語の本筋とは少しずれた寄り道回

たまに割り込み投稿でこのように追加していく予定

 これは奏がこのゲームを遊び始める前の時間軸。


 MakeO.S.が発売されて数ヶ月、ウキナが死神と呼ばれ始めた頃の話である。


 ――宇條姫奈の家


「ちょっと李臥、私に付き合いなさい!」


 扉を外からバンッと開け放ち、そんなことを大声で宣っているのはこの家の長女、宇條姫奈だ。


 そしてそんな彼女に対し、部屋の中で机に向かってPCを操作していた少年は面倒くさそうにしながらも椅子を回転させ、返事を返す。


「何、姉さん。僕、今は忙しいんだけれど……」


 彼は宇條李臥、宇條姫奈の弟だ。


 容姿は黒髪で短めな髪、身長は157cmと男子の割には背が低い方だろう。


「忙しいって言ってもネットの攻略情報漁っているだけでしょ? それなら私の方を手伝いなさいよ」


 そんな彼女の言い分に、李臥はため息を吐きながらもMakeO.S.のデバイスへ近づく。


 姉の頼みなど大体がこれだ。

 どうせ言っても聞かないし、終わるまではしつこいのでさっさと終わらせることにしたのだ。


「それで、何を手伝えば良いの?」


 デバイスの上部、半透明の黒いガラス部分を開けながら詳細を姉に聞く。


 それに対して姉は。


「ふふふ、さっすが李臥、嫌々ながらも付き合ってくれるわね! それじゃあ、早速だけれど私の手足を斬り飛ばして貰うわ!」


 李臥の手が止まった。


「姉さん、狂化バフ使いすぎてこっちでも発症するようになった……?」


「何失礼な事言ってるのよ。大体、あっちの影響はこっちでは絶対に出ないって色々証明されているでしょう?」


「元から頭のネジが外れているのが、ゲームで悪化したのかと……」


「誰の頭のネジが外れているですって……? まぁ、いいわ。とにかく細かい説明は向こうでするわね」


「わ、わかった……」


 そう言って姫奈は李臥の部屋から出て行く。


 恐らく自分のゲームデバイスに乗り込みに行ったのだろう。


「姉さん、今度は何をするつもりなんだ……?」


 李臥は今までに姉が行ってきた、奇怪な行動を思い出しながらゲームを起動するのだった。


「ダイブイン:MakeO.S.――――アクティベート」


 今ではすっかり慣れた、睡魔に襲われる感覚を味わいながら目を閉じると、次に目を開けた時にはもう自分のアバター、ルギに魂が乗り移っていた。


 フレンドチャットには姉からのメッセージがある。


「それじゃあ、行こうかな」


 ギルドのメンバーにばれると面倒なので、非ログイン設定にして姉の指定した待ち合わせ場所に向かう。



 ■



「姉さん、本気……?」


 姉の先程の頼み事の意図を聞いたルギは彼女の正気を疑っていた。


「本気よ。折角のスキルなのに、一々攻撃を喰らう度に痛がっていたら使い物にならないでしょ?」


 姉が言っている事はこうだ。


 この前姉が手に入れたユニーク装備【死神装束】シリーズには、幾つかの装備に備わったスキルがあったのだが、その中にはステータスをかなり底上げする代わりに《感覚》を2.5倍にするスキルがあった。


 《感覚》は実質ペンクロ率を2.5倍にするようなもので痛みなども2.5倍になる。


 その痛みで痛がっていたら使い物にならないから、繊細な動きが要求される森の周回ルートを、手足を切り落としながら木にぶつからない様になるまで高速移動し続けて慣らすと言う物だった。


 どう考えても頭がおかしいとしか思えない発想だ。


「いやいやだって姉さん、ペンクロ100%でしょ!? それもおかしいとは思うけれど、スキル合わせたら戦闘時500%になるわけだよ!? 現実の5倍ってことだよ!? その状態で腕切り落とそうってどういう発想だよ!?」


「うるさいわね。だから慣らそうって話じゃない。現実(リアル)へのフィードバックも無ければ、ショック死する訳でも無いんだし、良いじゃない」


「全然良くないよ!?」


 幾ら痛みがこのゲーム内だけのものとは言っても、それを普通の思考なら平気で受け入れようなんて発想にはならない。


 そうルギは姉に言うのだが……。


「別に私も進んで痛みを受け入れようってわけじゃ無いわよ。《感覚》のステータスは文字通り異常に感覚が鋭くなるから回避とかには物凄く役に立つ。本来デメリットのスキル効果を使いこなせればメリットのみを得られる強力なスキルになる。その為の慣らしよ、実際の戦闘ではそもそもそんなダメージを受けるわけには行かないけれど、万が一もあるしね……」


 そんな事を真剣に話す姉を見て、ルギは戸惑いながらも諦めるしかないと悟るのだった。


「はぁ……、そこまで言うって事はもう何言っても止めてくれないんだね」


「そういうこと。我が弟ながら物分かりが良いわね」


 ルギが折れ、自身の特訓に付き合ってくれる気になった事がわかった姉は、実に嬉しそうに笑う。


「もうどうなっても知らないから……」


 そうしてルギは、しばらくの間姉の特訓に付き合うのだった。


 ……何回も辺りに飛び散る流血エフェクトと、その度に木に激突し、地面をのたうち回る姉を遠い目で眺めながら。


「あー、こんなことをする変人は家の姉だけだろうな……」


 尚、この数ヶ月後にペンクロ率実質600%で戦おうとする初心者が現れる事を彼はまだ知らない。

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[一言] 類は友を呼ぶ?・・・・・・・・・・・
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