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第9話 拳魔少女(4) ――ルユと死神

「お邪魔するよー」


「いらっしゃい、ルユ」


 ウキナの家へとやってきたルユは彼女の家に上がる。


 ルユは戦闘用のアーマー装備をしていたが、ウキナの装備が如何にも部屋着というような服を着ていた為、空気を読んで装備を解除し冒険者のノーマル装備になる。


 ウキナは家に居るとき、ゲーム内のネットを用いて情報収集をするため、今のような楽な格好をしているのだ。


「あら、折角可愛い女の子キャラなのにそういう服は持っていないの?」


「前にも似たような事言っていたよね……」


 ルユが言う、前とは学校の時以外にももっと前……カナがこのゲームを始める前の時にあった事も指している。


「前にも言ったけれど私の好みは可愛いよりカッコイイ装備。例の装備みたいなのは必要が無い限り着ないよ」


「ええー、勿体ない……」


「そういうのはうちの妹やカナの方に言ってよ、あの2人の方が少なくとも私よりは全然似合うでしょ」


 不満そうに言うウキナにルユはため息を吐きながら返す。


「それにしてもよくここまで来れたわね」


「君がカナを連れ回すもんだから、こっちも久々に暇になっちゃってね。前にここから見えた景色から、こっち方面の探索を進めてみることにしたんだ」


「貴方も相変わらずね。前まで誰も知らないエリアなはずだったのに、いきなり家を訪ねてもいいか聞いてくるからびっくりしたわよ」


「あははは、ちょうど私達で話したい事もあったからね」


 そう言ってルユはウキナに案内されたテーブルに着き、何でも無いことの様に笑う。


「奇遇ね。私も1つ貴方に聞いてみたい事があったの」


「ん、何かな?」


「どうして今までファストタウンなんかに居たのかしら?」


 ウキナのその言葉に、ルユは笑顔を浮かべたままだが若干瞳が鋭くなった。


「どういう意味かな?」


「そのままの意味よ。どうしてトッププレイヤーの貴方が、初心者が集まる最初の町なんかに居たのかしら?」


 カナがルユ達と出会ったファストタウンは、文字通り初心者達のチュートリアルが終わって最初に着く町である。

 大きな町で拠点には成り得るものの、活動範囲を広げればもっと便利な大きな町が他にある。

 トッププレイヤーであるルユが、そんな最初の町に居る理由は無いはずなのである。


「あそこにはクロのお店もあるんだよ? 私が居たところで不思議じゃ無いと思うんだけどなー」


「数日ならありえるかもね。でも、貴方のプレイスタイルは仲間と約束した時以外、本来ソロで活動する事の多い冒険者型。ゲーム内時間で1ヶ月近い期間も留まっていたのは、いくら何でもおかしいわよね?」


 1=8時間のMakeO.S.では現実時間で最大連続プレイ時間9時間を考えると、ゲーム内では最長3日分を過ごせることになる。


「私はそんな限界までやらないかもしれないよ。それにここ数日間はカナも居たでしょ?」


「私達みたいなトッププレイヤー同士でその言い訳が通じるとでも? それに、カナがインしてない時も最初の町周辺によく出没していたそうじゃない。掲示版に目撃情報が結構上がっているわよ」


 トッププレイヤーというのはどうしても目立ってしまうものである。

 顔を覚えている者も居るだろうし、ウキナと同じ疑問を持った者も居るはずだ。

 掲示版の話題にされてしまうのも仕方が無いだろう。


 だが、ルユは尚も笑みを絶やさずにウキナの話を聞く。


「それに、そもそもカナと出会ったのは初日? たまたまファストタウンに寄ったときにたまたま会ったの? 凄い偶然ね」


 そこまで聞いて、ルユは笑いながら両手を挙げて降参した。


「流石にごまかせないかな。でも残念、いつもみたいに情報の奪い合いがしたかったみたいだけれど、今回はそんな必要無いよ。今日私が持ってきた話も実はその件なんだ」


 そう言って、ルユは1つの紙を広げた。


「これは?」


 そこには一体の竜の姿と何か言葉が描かれていた。


「私はたしかにカナに会う前、会った後からもずっと1つのクエストを調べていたよ。その成果がこれ、古代光炎竜・ラシェロン」


「なっ!?」


 ルユが説明を加えると、ウキナは最後の単語に大きく反応する。


「たしかそれって三大古代竜の一匹よね!? 伝承とかの扱いで出てくる」


「そうそう。倒せばプラチナ称号は硬いんじゃ無いかな? いやー、大変だったよ、元々NPCの気分次第で発注されるクエスト受けまくって、ようやく出現条件を掴んだんだもの」


 そうしてルユはテーブルに突っ伏し、ウキナはマジマジとその紙切れを見る。


「……それで、何でこんなものを私に? そんなに苦労したのに、どうして自分から見せようとしていたの?」


 当然の質問にルユはピクリと動く。


「……強いの」


「え?」


 良く聞き取れずにウキナはもう一度聞く。


「そいつ、とんでもなく強いの。少なくとも私1人ではさじ投げるレベル」


「……つまり、手伝えって言ってるの?」


「正直魔王やうちのギルドも総動員したいレベル。報酬的に、カナ以外は悪く無い条件だと思うんだけれど駄目かなー?」


「えぇ……、まぁ私は良いけれど」


「やった!」


「……貴方、キャラが崩壊しかけているわよ」


 ルユの余りな反応に呆れるウキナ。

 余程手酷くやられたのだろう。


「ところで、今日はカナはどうしたの?」


「今日はカナのレベルも50になったし、職業クエストに行って貰っているわ」


「へぇー、ついにカナも職業決めたんだ。何にするんだい?」


「私のオススメにするって言って≪武豪≫になりに行ったわ。爪使いや短剣使いとかのスピード重視に多い上級職業ね。カナにも合っていると思うわ」


「なるほど……あれ、それってかなりの遠出になるけれど大丈夫なの?」


「何が? 上級職だからクリア条件の試練も難しいはずだけど、カナなら1人でも余裕でクリアできるでしょ?」


 上級の職業クエストは、上級故にファストタウンからはかなり遠く、道中のモンスターも結構強い。そして、石碑に着いてからが本題の試練もあり、その難易度は決して簡単では無いのである。

 だが、カナの強さをよく知るウキナは問題無いだろうと考えていた。だから、同じく彼女の強さをよく知っているはずのルユも同じ判断になるはずだろうと同意を求めたのだ。

 

 しかし、ルユの心配はそこでは無い様で困り顔を崩さない。


 何を心配しているのかわからなかったウキナは、若干言い辛そうにしている彼女の続く言葉を待った。


「いや……そうじゃなくて、彼女ってその……方向音痴みたいだし道案内とか、せめて地図とか」


 その言葉を聞いたウキナは――


「あー!!!」


 家に響き渡るくらいの絶叫を発した。



 ■



「ウキナが言っていたのってこの職業かな?」


『転職クエスト:古代魔闘士を始めますか?』

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