第8話 理不尽の権化:死神(4) ――決着
「【白砂姫の記憶】!」
再度【白砂姫の記憶】を発動させたカナは最大限に周囲を警戒する。
できる限り使いたく無いスキルではあるのだが、今の状態では無抵抗に切り刻まれかねない為、少しでもステータス差を埋める為に使用することにしたのだ。
「流石に私のMPも持たないから、【マジックリンク】があっても大技を撃てるのは後1回かな」
「わかった」
一撃だけでも大技を当てられたのはかなり大きいが、連発してしまえばあっという間にルユのMPは空になってしまう。
対してウキナの攻撃は、そのほとんどがカナどころかルユですら恐らく一撃でHPが消し飛ぶ攻撃になる。
よって……。
「来るよ!」
「うん!」
相手の攻撃は確実に避け、少しずつでもこちらの攻撃を通さなければならない。
炎の鎌と氷の鎌の柄を合わせて車輪のようにぶん投げられた鎌は、地面を氷結させながら焼き焦がすという異様な光景を作り出してカナ達を襲う。
2人は二手に分かれて避けたが、カナは背後に気配を感じる。
「アハッ!」
「っ、【回し蹴り(Ⅱ)】!」
ウキナの大鎌の振り降ろしをカナは片手を地面に着いて軸にし、鎌の側面を蹴り抜いて逸らす。
しかし、振り下ろされた鎌は当然1つでは無い。
「【双飛斬】!」
後を追うように大振りで振り下ろされた雷と氷の鎌は、ルユが2つの飛ぶ斬撃で弾いてくれた。
「えいっ!」
蹴り抜いた勢いで地面を転がったカナは即座に態勢を整えてロングボウを放つ。
僅かなダメージだが無いよりはマシ、そう思って放った一発だが思っていたよりは効果が有るようで頭に当てられたウキナは少しのけぞる。
このチャンスに追撃を仕掛けようとカナは飛び出した。
「フフフフッ、……?」
そのくらい簡単に回避できるはずのウキナではあったが、足と体に何かが巻き付く。
「俺達を!」
「忘れちゃ困るよ!」
クロは分裂した鞭で体を多重に縛り、ルギは流動体金属に何やら小さなゴーレムまで作り出して足を固めて動きを止める。
だが……。
「アハハ! こんなんじゃ止まらないわよ~っ!」
馬鹿げたSTR値を持つ今のウキナにはほとんど意味は無いようで、一瞬にして全て砕かれてしまう。
「【乱打】、【二段蹴り】!」
それでもお構いなしに手数が多めなスキルを使うカナ。
【乱打】は一瞬で三発の突きを放つスキル、【二段蹴り】は【二段ジャンプ】のスキルを獲得している事が条件になる、型が多く自由度が高めな名前の通りのスキルだ。
しかしその攻撃は全て避けられてしまう。
「零距離【飛斬乱舞】!」
その間に近づいたルユによって斬撃の嵐を浴びせる。
「ウフフフ、本当に楽しいわ皆!」
その攻撃はウキナも数発受け損なっては居るものの、9割方相殺し、躱してしまう。
そして凌ぎきったウキナは一瞬で引き下がると距離を取った。
「ギリギリ戦闘にはなっているが……」
「こんなの絶対スタミナが持たないよ……」
「あの状態の死神は疲れ知らずな挙げ句にほぼ最大火力をぶっ放し続けるから、こっちが崩れるのも時間の問題だね」
「武器の耐久値や在庫もゴリゴリ削れてますね……」
その予想は正しく、しばらくは同じ様な戦法を用いて戦っていたもののすぐに均衡は崩れた。
「うっ……!」
「ルユ!?」
スタミナが追い着かなくなってきたルユに対して、どんどん動きが速くなってゆくウキナ。
幾ら超人的な予測能力があっても体が追い着いてこなければ意味が無い。
限界を迎えたルユは左腕を切り飛ばされてしまったのだった。
腕は胴体と離れた瞬間に光となって消える。
腕や足なら最大ダメージの上限が決まっているものの、手足の欠損状態はしばらく続く。
「まず1人!」
「……ここらが勝負所かな」
「え?」
ルユはウキナの攻撃に合わせて引くのでは無く、前に出て自身の今放てる最大火力を放つ。
「腕の1本くらいくれてあげるよ! 【カウンターⅣ】、【剣聖の心眼】! 最大出力【エネルギーブレイドォォオ】!」
「っつ!?」
ルユは光を纏い、超巨大な大剣の莫大なエネルギーを解放させて光の大剣を顕現させると強烈な一撃をウキナに向けて切り上げる。
僅かに、膨大なステータス差のおかげでルユの予測を上回っていたウキナは直撃は避けれたものの左腕と鎌2本を持っていかれてしまう。
「今だ皆!」
「「「――!」」」
ここで決めるしか無いと察した全員はそれぞれの大技を仕掛ける。
「【超巨岩蛇の閃尾】!」
「【斬撃の牢獄】!」
「【極魔銀の蒼爆】!」
カナ以外はMP度外視のとにかく威力が高く、発生が速い範囲技である。
カナの放った【超巨岩蛇の閃尾】による鋭い尾を模した攻撃に、更に態勢を崩すことになったウキナはクロの多数に分かれた、鞭による牢獄を象った攻撃に捕らわれ、さらにその中に発生する斬撃の嵐に大きくダメージを受ける。
そして、いつの間にか紛れ込んでいたルギによる流動体金属に体を絡め取られ、牢獄ごと粉砕しそうな大規模な魔力大爆発を内側でもろに受けた。
全員この一撃で倒しきるつもりであった。
当然だが、モンスターに比べれば人のHPは大幅に低い。
しかし……それでも死神の強さは半端じゃないのだろう。
ヒビの入った牢獄に真一文字の切れ目が入り、全てを内側から粉砕される。
「……!」
「これでもまだ足りないか……!」
「嘘だろ!?」
「どれだけスキルを隠し持っていたんだよ、姉さん!」
「耐えきってみせたわよ!」
装備の破損状態は酷いことになっているが、それでも発する光は未だ衰えていなかった。
大鎌は1本となり、いつの間にか口調も戻りかけているが瞳は両方とも金色のままだ。
「とはいえ、もう私も打ち止め! やっぱり正面切っての5対1はキツいわね!」
そう言ってウキナは真っ直ぐとカナの方に向かう。
「最後に付き合って貰うわよカナ! 躱してみせなさい!」
「う、ここでこっちに来るのか、【見切……】」
「甘い!」
「「「「……!」」」」
カナは自身の直感を信じ、完璧なタイミングで【見切り】を使った。
しかし、そんな一般スキルは当に見慣れたウキナはその回避先を完全に読み切り、カナを真っ二つに切ったのだった。
私の勝ちだとウキナは笑う。
「まぁ、カナはデスペナルティも少ないし良いでしょ。一撃で仕留めて上げたから別に痛くも無かったはず……よ?」
そこでウキナは自身に物理的な衝撃が走る。
スキル【残打】、ウキナに見切られたカナが咄嗟に放ったスキルは、技の出が異様に速く、残影と自身が被り真っ二つにされる代わりに相手にもカウンターダメージを与える状態となっていた。
「相打ち……か、まさか100レベル差でこうなるとはなー……」
ウキナの僅かに残っていたHPがようやく0になり、意識が遠くなる中で背後を見る。
同じ様に光となって消えかけている状態であるはずの親友がどんな表情をしているか気になったのだ。
だが、その場所に居たのは……頭に?が沢山湧いているだろう表情をしながら、普通に立っているカナだった。
「な……んでよ」
そこでウキナの意識は1度途切れるのだった。




