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第8話 理不尽の権化:死神(3) ――VS死神(死闘)

「やったか?」


 ウキナに渾身の一撃を与えた直後、そんなことを言ったのはクロである。


「そんな訳無いでしょ」


「あれで仕留められるなら前回以前でも、もうちょっとマシに戦えたはずです」


「だよな」


 先程の一撃はカナが放てる最大火力であると同時に、ルユ達ギルド全員の中でも最大火力だったというのが満場一致だが、それでもあの一撃だけで勝てる程、死神は甘くないとして警戒を強めていた。


「これで満足して終わりの可能性もあるにはあるけれど……どう?」


「……多分、まだ来ると思う」


 1度スキルを解いたカナは周りに自身の見解を述べる。


 負けず嫌いな彼女の性格をよく知るカナは、これでは終わらないと予測した。


「僕も同意見ですね」


「だよね、私達の死神に対する認識もそんな感じ」


 その予想は正しかった様で森の奥からウキナが戻ってくる。


「痛たたた……、カナ……容赦無いわね……。ペンクロ500%近くまで引き上げられてるからかなり痛かったわよ……」


 ウキナはまだスキルを多重発動している様だったが、その格好は装備が少し破損していたり、擦り傷があったりと所々乱れていた。


「え、そんなに上げてたの!? ごめん大丈夫!?」


 実は現在、彼女はスキルの発動により戦闘時のペインシンクロ率が2.5倍の500%になっていたのだ。


 カナとは違い、何度もスキルを使って感覚にも慣らしていった彼女は、自身のピーキーなスキルの使い方もほぼマスターしていた。


 だからこそ、あれほどまでに異常な回避能力を誇っていたのである。


 ウキナがそこまでペンクロを上げていたとは思わなかったカナは、途端に心配になり彼女を気遣う。


「その割には、そこまでダメージを受けているように見えないんだけれどな……」


 反面、ルユは直撃していたのにむしろその程度で済んでいることに疑問を持つ。


「これでもHP700近く削られてるわよ? 全く、レベル20代で私にこれだけのダメージ与えられるってどんだけよ…………まぁ、ボスモンスターに食い千切られた時よりは全然だけれど」


「ひえっ!?」


「断面とかはエフェクトで隠されるから、カナが考えている程グロくないわよ?」


「それでも凄い痛そう……」


「まぁたしかに痛いけど。でも、どんなに痛くてもショック死なんて事にはならないし、かえって非現実的すぎる感覚だから案外慣れるわよ?」


「えっと……本当?」


「慣れはしないんじゃないかなー」


「だよね…」


 前に【白砂姫の記憶】状態でスモールラビットの頭突きの直撃を貰ったら、それだけでしばらく悶絶していた事をカナは思い出す。

 たしかに、現実に戻ったら忘れることができ、その感覚はもう思い出せない程だが出来ればもう2度と経験したくない。


 その数倍の痛みになるはずのダメージを、慣れるの一言で済ませられるウキナは普通では無いだろう。


 尚、この時ルギが凄く遠い目をしていたのだが、誰もそれに気付くことは無かった。


「それで、結構なダメージを喰らったって言うなら、ここらで引いてくれるのか?」


「ウキナさんもデスペナルティを貰ったら色々パーになりますよ」


「ここで引いてくれるなら私達も楽で良いんだけれど」


 クロ達は、暗にここで引いてくれと伝えるのだがウキナはまだまだ物足りないようで大鎌を構える。


「いいえ? 折角の戦いだもの、まだまだ行けるわよ」


 そう言うとウキナは更なる戦闘態勢へと以降するスキルを使い始めた。


「【刈り取る者:死神(覚醒)】!」


「げっ!?」


 ウキナはオッドアイ状態だった紫紺の瞳も金色に変わると、体に走っていたラインは桃紫色に輝き、髪の色も同じく桃紫色に変わり淡い光を纏う、額には何かの紋章まで表れている。


 そして、彼女の周囲に浮いていた大鎌は1度消えたと思うとすぐに4つの大鎌に増え、更にそれぞれの鎌には炎、風、氷気、雷を纏っているのだった。


「なに……これ」


「トウカ! 全力で下がれ!」


「言われなくてもしてますよ!」


 これを見るのが初めてでは無いカナ以外は、この後に起きる事を知っている為急いで対処する。


「アハハハハ! 【冥府の世界】&【冥府の霧】!」


「本当に何これ!?」


 ウキナが次に放ったスキルは空を黒く塗りつぶし、黒い霧が辺りに広がるスキルだった。


 先の闇異常程では無いが、一瞬にして視界が黒に染まっていく。


「アハハハ皆、鬼ごっこの始まりだよ~!」


「鬼の方がまだ可愛げがあるよ姉さんっ!?」


 明らかに雰囲気が変わったウキナは狂った様に笑い、その姿は霧に包まれる。


 全員霧に包まれ、近くに居たルユとカナ以外は孤立状態となった。


「ルユ! これってどういうことなの!?」


「ちょっと待って、順番に説明するから!」


 珍しく焦っているルユは息を整えると、カナに説明を始める。


「死神のユニークスキル【刈り取る者:死神(覚醒)】は自身のSTRとAGI、それにDEXを爆上げする代わりにVITとINTは0、それに狂化と暴走、興奮の状態異常も付与する状態移行スキル。それに【冥府の世界】は自他共に回復スキルの封印と捉えた区間から外には出られなく能力、【冥府の霧】は同じく自他共に魔法、遠距離スキルを全て封印するスキルだよ!」


「何その効果の暴力!? それであの子、あんな状態なの!?」


「死神の切り札的スキルなんだ! 一筋縄じゃいかないよ!」


 未だに高笑いをしながら恐らく様子見をしているのだろうウキナを警戒し、視界の悪い霧の中に意識を集中する。


「一定時間はあの状態から治らないから気をつけて! 遠距離攻撃手段が無くなるし、魔王でも完封されたスキルだからトウカには戦線離脱して貰ったよ! 火力と速度は特に、最大状態で異次元だから注意してね!」


 ルユがそう言ったそばからウキナは雷と氷を纏っている浮いた大鎌を掴み、ブーメランの様に回転しながら挟み込むように()()()()()()きた。


「ぐっ……」


「うわっ!?」


 霧を切り裂きながら襲ってきたその大鎌達をルユは大剣で逸らし、カナはギリギリながらも避ける。

 だが、カナは纏っていた雷に僅かながら触れてしまい、痛みが走った。


「痛っ!?」


「大丈夫!?」


「う……ん、大丈夫」


 かなりの痛みを感じたものの、痺れたりすること無く立ち上がる。


「ぶん投げて無理矢理遠距離攻撃にしてきたか」


「無茶苦茶過ぎない?」


「まさか私も、理性がほとんど吹き飛んじゃうようなスキルを使ってまで来るとは思わなかったよ」


「第2形態とか、もう魔王より魔王っぽい事してるじゃん……」


「あはは、その言葉あいつにも聞かせてあげたいな。あっちは魔法の王の意味の方が強いから仕方ないけどね」


「幾ら久し振りにログインできたからって、はしゃぎ過ぎだよ……」


 実際はカナと初めて遊べ、テンションが上がっている事もあるのだが、ウキナは後先考えずにこのスキルを使っていた。


 霧の中ではまだ高笑いを続けている彼女の影があった。

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