第8話 理不尽の権化:死神 ――死神の正体
「えーと、これは一体どういうこと?」
カナは今の状況が理解できず、そんな言葉を零す。
全員臨戦態勢でカナの親友である姫奈のゲームアバター、ウキナの前に立っている。
髪や目の色、全体的に幼いなど違いは色々あるが、それでも間違っていないと思えるだけの姫奈の面影がウキナにはあった。
そして、恐らくではあるがルユはウキナの事を一瞬、死神と言おうとしたのである。
死神といえば、今まで何度か聞いてきたMakeO.S.のトッププレイヤ―だ。
それがウキナだとでも言うのだろうか?
そんなことを考えているとウキナはカナに対して口を開く。
「カナー、学校ぶりね。あ、でもこっちでは初めましてか。私の名前はウキナ、又の名を死神と呼ぶわ」
(あ、やっぱり姫奈なんだ……!)
妖しい雰囲気とは裏腹に、いつもと同じく、とてもフレンドリーで何処かノリノリで話しかけて来たウキナに、カナは近づこうとする。
「ちょっと待ってカナ!」
それを止めたのはルユである。
彼女は2人の間に立って、ウキナに話し掛ける。
「色々と言いたいことはあるけれど、まず何でカナに攻撃を仕掛けたのかな? それにこれはどういうこと? 説明してくれないかな、死神、それにルギも。」
「あ、そうだった。どうして? き……こっちだとウキナか」
そう、彼女は最初、不意打ちの一撃をカナに浴びせようとしていたのだ。
「あれは、カナが強いって聞いてたからどれくらいか試したくなっただけよ。あれぐらいなら避けれるんでしょう?」
「100以上のレベル差で放つスキル攻撃をあれくらいとはよく言うね。それに、君にやられた場合は失うものが大分大きいのだけれど?」
「あれはカナじゃ無ければ一撃でやられてたぞ」
「私でも補助魔法でバフがなければ8割近く、HPを持ってかれてますよ!」
「ふふ、流石……経験談だと説得力が違うわね」
今のウキナの言葉で皆の琴線に触れた音がカナの耳に聞こえた気がするのは気のせいだろうか。
「って、レベル差100!?」
情報が多すぎて一瞬流しかけたが、冷静に考えてみてその数字の大きさに驚愕する。
「あ、そう言えばカナは何度か私のレベルを知りたがっていたわね。それじゃあ教えて上げるわねカナ。私のレベルは、Lv.132よ」
「ひゃくさんじゅうに……」
そのレベルを聞いて、先程の攻撃が急に怖くなったカナだった。
実際、【先読み】が【先読みⅡ】になっていなかったら避けられずに、今頃は気付かず真っ二つだろう。
「姉さん、本当に何してるの? 今日は喧嘩しに来たわけじゃ無かったでしょ」
「そ……そうだ、ルギ君はずっと知っていた訳でしょ? 今までルユ達には何も言って無かったの?」
「それは是非、私達も教えて欲しいかな~ルギ」
「俺もだ」
「私もです。というか、私ですら何も聞かされてません」
「ええ……」
完全に修羅場な雰囲気にカナは気圧される。
どうしてこうなっているのだろうか。
「はぁ……言える訳無いじゃないですか。僕がギルドに入ってきたときには姉さん、既に滅茶苦茶暴れ回ってましたから」
「あの時は色んなプレイヤーの恨み買って、片っ端から返り討ちにしていたからね」
「ああ、あの時か」
「そういえば、私達もルユの面白そうだから行こうって言葉に乗って、討伐に参加しましたね」
「見事に魔王共々返り討ちにされたけどね」
「え、あの魔王さんも?」
「別に共闘はしてないよ。ただ別々に挑んで負けただけ」
「あの時はご馳走様。貴方達の経験値は美味しいからいつでもウェルカムよ!」
どう考えても、これから仲間になる人の態度じゃない言葉を連発するウキナを訝しみ、カナは一歩前に出る。
「ウキナ、どうしたの? 私と一緒にゲームするって言っていたじゃん。その為にこのゲームを私に勧めてくれたんでしょ? そんな態度じゃ、流石に仲間に入れて貰えないよ?」
「そうですよ姉さん、今日ももうごまかすのが限界だからって、全てのタネ明かしをして正体も明かす上で何とかギルドに入れて貰う予定だったじゃないか」
「ちょっとルギ、それは言っちゃダメ!」
ウキナは大鎌を振るうと、風の刃がルギを襲う。
それをルギは無表情に流動体の金属の壁を作って防いだ。
「……やっぱり重い」
防いだ金属は大きく抉れ、ギリギリで防げている所だった。
「……別にPKだからって、それもプレイスタイルの1つだと思ってるから邪険にするつもりも無かったけれど、本当にこれはどういうつもり?」
「その言葉を聞いて安心したわ」
そう言ってウキナはカナを見る。
「私ね、カナをこのゲームに誘ってから一緒にどう遊ぼうか、色々考えてたの」
ウキナは自分の今考えていることを全て話し出す。
「最初は私と一緒にPKになって貰う事を考えて、色々と誘う準備もしてたわ」
「そんなこと考えてたの!?」
裏でそんな事をしていたと聞かされたカナは困惑する。
「でも、流石にリアルの友人が居る普通のギルドに入るのなら、そんなことするのはリスクが高い」
「たしかに、そんなことをするプレイヤーが2人も居るギルドがあれば、イベントとかで集中砲火だな」
「だから正体を明かした上でPKは辞めて、カナと一緒に普通のプレイでゲームを楽しむ事も考えてたの」
「それが僕の聞いてた本来の計画プランでしたね」
「まぁ、ギルドメンバーをターゲットにしないのであれば、私達がするしないは別にして、それならそれで手伝うのもやぶさかではなかったけどね」
「結構おもしろそうだし、俺も賛成だな」
トウカも「私もです」と言いながら話は続く。
「でも入ったギルドが、まさかのトップギルドとトッププレイヤーの1人本人だと言うじゃない。有名なプレイヤーだし、只の同名プレイヤーだと最初は思っていたから、本人だったと聞いた時はかなり驚いたわよ……」
そう言って、ウキナは先程放った二発の風の刃の跡を見る。
「それに加えて、カナ自身も予想外に異常な強さをしている。その上でまだまだ急成長中でしょ? それで1つ思い付いた事があったの。更にさっき、私の【空断】を避けたことでそれは決めたわ」
最後にもう一度、ウキナはにこやかに笑ってカナを見る。
「同じ側に立って遊ぶより、ライバルとして戦って遊ぶ方が面白そうよね?」
「え……」
「まさか……」
「本気か……?」
ウキナは笑いながら話を続ける。
「ふふふふふ、本気も本気よ。私は協力ゲーより対人ゲーの方が好みなの。手始めに、私は自分で自分のギルドを立ち上げる。カナとルギはそっちに残っててよ」
「「「「「なっ!?」」」」」
「私が作るギルドよ? 当然、トップを目指すんだから……ライバルギルドさんには張り合いがあって欲しいものよね!」
ライバルギルドの所で全員を見回しながらウキナは武器を構え始めた。
「って事で今日は宣戦布告のつもりで来たの。それと挨拶代わりよ。皆、装備は持ってきてるわね!」
そうして戦闘態勢に入ったウキナは自身の周囲に、手に持つ大鎌と同じ物を2つ顕現させ、体は毒々しい紫のオーラに包まれる。
更に、蒼かった目は紫紺と金色の瞳のオッドアイになり、体にはラインの様な物まで表れて明らかに幾つものスキルを多重発動させていた。
「私は死神、ウカウカしていると経験値もアイテムも全部刈り取っていっちゃうわよ!」
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[ステータス(暫定)]
ウキナ(死神)
Lv.132
HP:2100
MP:2800
STR:300(補正込み(常時):1200){スキル使用時の最大:6000over}
VIT:150(補正込み(常時):450){スキル使用時の最大:1200over}
AGI:300(補正込み(常時):1200){スキル使用時の最大:4500over}
INT:150(補正込み(常時):375){スキル使用時の最大:7000over]
DEX:121(補正込み(常時):360){スキル使用時の最大:1600over}
ペインシンクロ率(戦闘時): 500%
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死神のステータスがバグっているのは色々なスキルが組み合わさっている結果の仕様です。
また、スキル使用時最大の値は、ウキナがステータス強化の可変式スキルを使用した時に上げられる上限値です。よって全てのステータスが同時にこうなる訳ではありません。
(例:INT7000時はVIT0等)




