第7話 イベント結果とその後(4) ――ウキナ登場
「私はスクロールまだ使えないんだよね」
私は詳細を教えて貰ったアイテムを1つ1つ確認する。
「そうだね、近いうちに何の職業に就くか決めておいた方が良いかも」
「うーん、そうする。考えてみるよ」
まだ何の適性も持たない私にはスクロールが使えない。
早めに職業に就く方法と就く先を考えておくべきだろう。
それはそれとして、今考えていても仕方が無いので次のアイテムに移る。
「スキル珠かー、今使った方が良いのかな」
「うーん、基本的には強化の方が現れるからね。希なスキル獲得をしたときに入手しやすいものだと損だからって、使わない人もいるけど難しいなー」
「スキル数自体膨大だからな。幾ら後回しにしても結局死にスキルが手に入る可能性も大きいし、さっさと使った方が良いと思うぜ」
「僕も基本さっさと使っちゃいますね、後回しにしても死にスキルが強化されるリスクだってありますし」
「私もです」
「皆先に使うんだね。それじゃあ私もエリクサー症候群になりそうだし、使っちゃおうかな」
私がスキル珠を今使うことを決意すると、他の皆も使い始める。
私はスキル珠を2つ手に持ち、同時に砕く。
『スロットスキル【残打】を入手しました』
『サブスキル【先読み】が強化され、サブスキル【先読みⅡ】になりました』
「ふえ?」
すると連続で鳴った、システムメッセージに驚き、変な声が出てしまう。
「ん、どうしたのカナ?」
「何か良いスキルでも強化されたか?」
「スキルの強化確率もそこまで高く無いですし、スキルが手に入ったらかなりラッキーですよ」
システムの音は本人にしか聞こえないが、私の反応に気付いて私に何か起きたと皆が察してくれる。
皆が優しく教えてくれるので今の結果がかなり運が良いこともわかった。
「スロットスキル【残打】の入手と【先読み】が強化されたんだけど……」
「「「「え?」」」」
【残打】
分類:スロット
コスト:1
スキルを発動するとその場にカウンターの打撃を放つ自身の残影を設置する。
自動取得条件
格上のモンスターにカウンター攻撃を1000回行う。
【先読みⅡ】
分類:サブ
コスト:3
敵の攻撃予測地点が表示され、感じ取れる。
視界外からの攻撃は表示されないが五感を通じて感じ取る事はできる。
それも、かなり使い勝手が良さそうなスキルだ。
「薄々思っていたけれど、カナってLuckのステータスがあったら絶対高いよね」
ルユの言葉に全員が頷く。
「そういえばカナ先輩って、昔から強運ですよね」
色々と心当たりはあったが、どういう反応を返せばいいかわからない。
「あ……ははは」
取り敢えず、笑ってごまかした。
■
「うーん、私は強化4つに失敗4つ、内使えそうなのは2つかな」
「俺も1:1だ。使えるスキルだったから、良かった方だな」
「私は失敗でした」
それぞれの結果は丁度平均的な結果だったらしく、これでも良い方らしい。
私はやはり、かなり運が良かった方なのだろう。
「まぁ、スキルは狙い通りになる確率がかなり低いからおまけみたいな物だけどね。それじゃあトウカ、スクロール2つ渡しとくよ」
「はい、今回は当たりの魔法だと良いですよね」
ルユがトウカちゃんに2つスクロールを手渡すと、トウカちゃんはその場で両方とも使用する。
彼女にとって今回、ポイントを稼ぎづらいイベントだったが、ヒーラーの魔法職である以上、魔法の重要性が他のメンバーと段違いになるので可能な限り、渡してあげているらしい。
開かれたスクロールは文字の様な物を浮かび上がらせたと思うと、その文字はトウカちゃんに吸収される。
そして使ったスクロールは灰になって消えてしまうのだった。
「あ、2つとも補助系の魔法でした。当たりですね」
「おおー」
どうやら、手に入ったスキルは有用なものだった様で彼女の表情は明るい。
「どんな魔法なの?」
「それは実際に使ってみたときのお楽しみですよ」
「それもそっか」
どんな魔法なのか興味はあるが、折角なら実際に使っているところを見た方が良いだろう。
「後は素材か、すぐに強化するか?」
今ここで確認する中では、次で最後の報酬だ。
素材を使って装備を強化できるらしい。
「うん、それじゃあ頼むね、クロ、ルギ」
「私もお願いします」
「おう」
「任せてください」
皆の装備を強化しようと素材を取り出……。
そこでピコンッと通知が響いた。
「あ、連絡が来たかも」
Player:ウキナ
もしもーし、カナー?
準備終わったよー
それでちょっと悪いんだけれど、この位置まで皆を連れて来てくれないかな?
フレンドチャットに送られたメッセージは確かに姫奈のものだった。
「どうだった?」
「えっと、あの子からだったんだけれど、一緒に位置情報が送られてきて、そこに皆で来て欲しいって」
「うん? ここは……森林フィールドの広場を指してるな」
場所を細かく尋ねると、どうやらイーズ平原を囲む森地帯の一カ所らしい。
「どうして、こんな所に?」
「さぁ、私は何も聞いてないんだけれどルギ君は何か聞いてる?」
「いえ、特に何も聞いてませんよ」
「うーん、よくわからないけれど、取り敢えず来て欲しいって言うならそこに皆で行ってみようか」
そうして、皆で姫奈が指定した場所へと向かう事になった。
「……、姉さんまさかあんな場所でタネ明かしする気なのか……?」
■
森の中、私達は姫奈ことウキナが指定した場所まで来ていた。
周りは森だが、広場の中心には湖があってそこそこに広い。
彼女は一体、こんな場所で何がしたいんだろうか。
「それで人影1つ見えない訳だが、どうすれば良いんだ?」
「カナさん、本当に此処で合っているんですよね?」
「う、うん、マップを照らし合わせても見たから、此処で合っていると思うけれど」
たしかにマップと姫奈から送られてきた位置情報の特徴は一致していて間違いない。
道中此処で待っているとの連絡も来ていたはずなのだが……。
そこまで考えた所で私の強化された【先読みⅡ】が何かを察知する。
反射的に避けると何かが私の横を抉り飛ばして行ったのだった。
「何だ!?」
「えっ、まさか……?」
「何で此処に……?」
「……?」
「……」
私に何かを飛ばしてきたその人物を全員で一斉に見ると、クロ、ルユ、トウカちゃん、私、ルギ君はそれぞれの反応を浮かべる。
私は見たことも無い人物だったが、他の皆はよく知っている人物を見たような反応をしている。
その人物は白い仮面で顔を覆い、全体的に紺色の服で統一されている。
そして背はかなり小さく、長い……とても長くて多い、ピンクがかった薄紫の髪と華奢な体格からして女の子だろうか?
そして片手にはその体格には似合わない大きな鎌が握られていた。
ゆっくりと近づいてくる彼女にルユは一歩出て、話し掛ける。
「どうしてここに居るんだい、しにが……」
「何してるの姉さん……」
ルユの言葉はルギ君の言葉に掻き消され、皆の視線が彼と彼が姉さんと呼んだ人物に交互に集まる。
そしてその視線に相手は動きを止め、ため息を吐くような仕草をする。
「なんでバラしちゃうかなー……ルギ」
そう言った彼女は仮面を取り、素顔を見せた。
その顔は……多少幼かったりして雰囲気が違うものの、たしかに私のよく知る姫奈だった。




