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第6話 イベント開始!(3)――魔王

「お待たせー!」


「お待たせしました」


「おせぇよ……だが、ギリギリセーフだ」


「カナちゃん探しに行ってくるって言って、何処まで行ってたんですか……」


 私とルユは急いで森林地帯から平原まで走ってきた。


 まだ頭の整理が出来ていないが、今はクロとトウカちゃんがピンチらしいので混乱しながらも黙って着いてきたのだ。


「あれが魔王さん?」


 結構離れた位置だが、先程から爆炎が何度も発生しているのが見える。


「今は他の参加者達が、数人がかりで特攻をしかけているのでこっちには向けてきませんが、その内来るはずです」


「もうあいつにかれこれ数百人はやられてるな」


「ひゃ……」


「絶好調だねー。それでクロ達は他の参加者囮にして、何とかここまで引いて来たと」


「仕方無いですよ。そうでもしないと合流できませんでしたから」


「そんで、多分これで打ち止めだ。こっちに来るぞ」


 話を聞いて、私がここに来た意味はあったのだろうかと疑問に思う。


 何も考えずにここまで来てしまったが、冷静になってみると明らかな力不足を感じる。


「というか、そんな人相手に勝てるんですか? 1度逃げた方が……」


 そう提案する私に全員こちらを向く。


 その顔は呆れ……と言うより、今まで何度も見てきた『ああこいつ何も知らないんだな……』という顔だった。


「昔からよく言うだろ? 魔王からは逃げられないって」


「……それって、まさか」


「似たようなスキルがあるんですよね。【マーキング】って言うんですけど」


「1度使えば対象がどれだけ離れても魔法を撃てるスキルね」


「厄介なのは転移系魔法で追うこともにできるんだよな」


「一定時間の経過、対象の死亡、自身の死亡等の条件で解けますが、彼は効果が解けるまで手が空く度に遠距離爆撃したり、転移して一人ずつ狩っていったりしてますね」


「厄介すぎないそのスキル!?」


 余りに破格なその性能にたじろぐ。


 というかそんな相手なら私は邪魔だろうし、尚更さっさと【マーキング】される前にこの場から離れるべきでは、と考える。 


 恐らく、クロ達が助けを借りたいのもルユだけだろう。


「それなら私は……」


「あ、あいつさっきこっち見てたから多分カナと私も、もうマーキングされているよ」


「ちょっと!?」


 いつの間にか巻き添えが決定していた。


 もう足手纏いになる予感しかしていない。


「すまんが、おしゃべりもここまでみたいだ。魔王が来るぞ」


「ええ……?」


 そして間が悪い事に、このタイミングで魔王さんが来てしまったようだ。


 そりゃあ、向こうにとってこっちの都合は関係無いだろうが、もう私の頭はもう色々と限界である。


 私は構えもしないでこちらに近づいてきた魔王と呼ばれるプレイヤーを眺めた。


「やぁ、これは驚いたなー。クロとトウカが居たからその内来るとは思っていたけれど、まさかルギじゃなくて別の女の子連れてきているとは」


 彼はサイズが合っていなさそうなぶかぶかな紫色のローブに、黒に緑の刺繍が入ったこれまたサイズの合っていない大きな魔法使いハットを被っている。

 手に持つ武器は彼の全長と同じくらいの大きな杖と如何にもな格好だった。

 でも、一番の特徴は恐らく魔法なのだろうが、その体が浮いてる事だろう。

 そして頭の上には深い紫色のアイコンが浮かんでいる。


「うちのギルドの新しいメンバーなんだ。中々凄い子が入ってくれたんだよ? 因みにルギは今回、お休み中」


「なるほど、それは楽しみだ」


 二人は意外と仲が良さそうに話している。


「ところで魔王様は今回随分とお行儀良いじゃないか。いつもは不意打ち上等、最大火力ドッカーンってぶっ放してくるのに」


「流石に明らかな新人さん相手にそんな野暮なことはしないさ、単純に興味もあったし……それとも纏めて消し炭にされたかったかい?」


 おや……?


「本当の理由は後半だけだね。後ろの大惨事を見てから物を言いなよ」


「ん、纏めて消し炭の部分はスルーかい? まぁ、僕に散々消し炭にされたことがあるもんね。変態剣士さん(笑)」


「よし、今回こそは切り刻む」


 前言撤回。どうやら、全然仲は良くなかったようだ。


 ルユがかつてない程に黒い顔で笑っている。


「あいつ、あの魔王と死神には散々苦渋を舐めさせられているから、その二人とは犬猿の仲だぞ」


「前回イベントでは集中砲火喰らって、順位を8位まで下げられてましたし」


「へぇー……って8位!?」


 前回イベントがどのくらいの規模かわからないけれど、今回とそう大きくかけ離れたものではないだろう。


 それも下げられて8位なら本来はもっと上の順位って事だろうか?


「ん、知らなかったのか? ルユは色んな評価ptを合算した公式総合ランキング3位のプレイヤーだぞ」


「さんっ!?」


「てっきり公式サイトにも載っているランキングだから知っていると思っていました……」


「たしかにアイコンも特別仕様だし、上位のプレイヤーだとは思っていたけれど……、ルユってそんなに強かったの!?」


 もうここ数時間でオーバーフローした私の頭に追い打ちをかける事実続きだ。


「……どうやら、ちゃんと意思の疎通も出来ていない様に見えるけど大丈夫なのかい?」


 というか、そのルユを下に見るって時点で彼も同じ枠組と言うことに気付く。


「正直、もう一回情報交換する必要性を感じているけれど、お構いなく。君が心配する事でも無いでしょ」


「それもそうだね」


 全員武器を構え始める。


「あ、ついでに君のことを説明する時間も取れなかったからもうちょっと待っててくれない?」


「それは無理な相談だよっ!」


 そう言って魔王は魔法陣を3つ同時に作りだし、3つの巨大な火球が螺旋状に発射される。


「まずは挨拶代わりだよ」


 そして、何を考えたのかその3つの火球は見事に全部、()()()()来た。


「何でっ!?」


 回避を試みるが、範囲が広すぎてそもそも避ける場所が無い。


 初撃でダウンしかねない状況に、私は大分焦ったもののその必要は無かった。


 私に当たる直前、巨大な3つの火球は同じく大きな3つのヨーヨーの様な物に全て切り裂かれたのだった。


「今のは……」


「今回はパーティー戦だ、ぶっつけ本番で悪いが勝つぞ」


 クロはいつの間にかヨーヨーの様な形状を持つ歯車が先端に取り付けられた鞭を持っていた。


 今のはクロが防いでくれたと言うことだろうか?


「流石に舐めすぎか」


「ちょっと! いきなり新人を集中狙いって相変わらずの性格だね!?」


「数を減らすのはパーティ戦の基本だろ? イベントの残り時間も後30分、ここからが本番といこうか!」


 魔王は浮遊しながら一旦距離を取り、ルユも一旦私の隣まで下がる。


「魔王のステータスと危険なスキルだけでも共有しておこうか。大まかな私の予測だけどね。大丈夫、カナでも戦えるよ。そもそもそうじゃなきゃ、流石に連れて来てないから」


 そう言って、ルユの口から伝えられた魔王の予測ステータスはまたまた衝撃的な物だった。


「嘘でしょ?」


「本当、被弾したら終わりなのはいつものことだし行けるでしょ?」


 そう言って笑うルユだった。


 たしかに、驚くべきステータスではあったが、そのステータスなら私のステータスでも、戦い方次第では一人は無理でも一緒に戦う事は十分出来そうだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 [ルユのステータス予測]

 ???(魔王)

 Lv.86


 HP:8700

 MP:12000


 STR:0

 VIT:0

 AGI:0

 INT:570 (補正込み(常時):1600over)

 DEX:0


――――――――――――――――――――――――――――――――――

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