第6話 イベント開始!(2) ――カナvsルユ
豪速な一閃を仕掛けるルユに対し、間一髪で避けるカナ。
「流石だね、ステータス差はまだまだ有るのに避けられるかー」
「特訓中に何度か見てたからね!」
バカみたいに大きな剣を軽々と振るうルユの攻撃は、当たれば恐らく一撃でHPが消し飛ぶがカナのステータス振りは回避重視だ。
そう簡単に当てられる程、カナのPSも甘くない。
「でも、私もまだまだ本気じゃないよー。まずはこれから、【飛斬乱舞】!」
「っ!?」
ゼロ距離で飛ぶ斬撃の嵐を放ってきたルユから、カナは【思考加速】と【見切り】を使って距離を取り、後はPSだけの自力回避で一つ一つ避けて対処する。
「おー、この攻撃PSだけで避けきる人初めて見たよ。って事でもう一発【飛斬乱舞】」
「ちょっ!? そのスキルCTないの!?」
普通、スキルは1度使えば固有に数秒のCTがあるはずなのだが、どういうわけかあれほどの威力でも連発可能らしい。
(流石にこれを連発されるのは不味いかも……それなら)
近づくのが難しいと判断したカナは距離を更に取り、回避に余裕を持たしてロングボウでの隙作りに専念しようとする。
「普通は悪く無いんだけど、私にそれは悪手かな」
「なっ……痛っ!?」
ルユはなんと大剣を振るい、ロングボウの弾を反射させてカナの足に当ててきた。
弾はパッシブスキル【サブウエポンマスター】の効果で防具貫通となり、ブーツごと足を貫く。
特訓中にダメージを受けて多少は慣れてきていたカナだったが、それでもやはり痛みが走れば集中力は切れてしまった。
「チェックメイト、かな」
「うっ……」
その隙を見逃さずに距離を詰めたルユは刃をカナの首に構える。
「やっぱり、まだルユには勝てないかー」
「中級プレイヤーには勝ててたし、相性次第では上位プレイヤーにも届くと思うけどね」
「そう、なのかなー」
「そうそう、結構凄い事だよ? 始めて1週間で上位争いに食い込めるんだから」
「それはルユ達が色々教えてくれたおかげかな」
「そっか、それなら私達も手伝ったかいが有るってものかな」
今、この場にはカナとルユしか居ない。
片方がもう片方に剣を突きつけながらという誰かが見れば異様と感じる状況だが、お互いに談笑する。
「あ、でもルユ、一個間違えてるよ」
「ん、何を?」
「この場合、チェックメイトじゃなくてチェックだよ?」
「えっ」
そう言ってカナは、視線は動かさず、何処かに向けてロングボウを放つ。
ルユはそれを見て、急いで剣を振るうがこの態勢でもカナに避けられる。
「何でっ!? まだ【見切り】も【思考加速】も使えないはずだよ!?」
「その2つがCT中でも、これくらいなら避けるの難しくないよ」
「嘘でしょっ!?」
想像以上なカナの反射神経に驚くルユだったが、カナが何を狙ってロングボウを放ったのかを確かめる。
(ボタン……?)
弾は木に当たり、めり込んでいた。
しかし、めり込み方が何かのスイッチを押し砕いている様に見えたのだ。
「ステージギミックか!」
「正解、せめて一矢報いさせて貰うよ、ルユ!」
カナは急いで、その場から離れるとルユの周りに結界が現れる。
そして結界内にあった木が急に魔力を纏い始めて、大量の魔弾の矢を全方向に放ち始めたのだった。
「その魔弾が結界の外に出ない事は他のプレイヤーが使っているのを見て確認済、1度張られた結界はギミックが終わるまで干渉もできないらしいよ!」
このギミックは過去のイベントにも無かった新ギミックと、プレイヤー達が話しているのをカナは【白砂姫の記憶】で強化された聴覚で聞き取ったのだ。
ルユも知らないギミックの可能性にかけ、その賭けに勝ったカナであった。
(これで勝てるとは思っていないけれど、少なくとも多少のダメージは喰らうはず……)
多少のダメージや体勢を崩す事だけでもできれば、十分大きな隙になるとカナは思っていた。
そんな急な反撃に対しルユは……。
「……何だ、こういうタイプのギミックか」
ステージギミックを確認したルユはそれまでの態度から一転、焦るでも無く妙に落ち着いた口調でそう言った。
ルユは少し移動した後の一点に経ち、武器を解除する。
そして、殺到した矢に対し……。
「え……」
カナの驚きの声がやけに響く。
ルユは全て避けたのだ。
それもカナがする様な機敏な動きで避けたのでは無く、ゆっくりとした動作で数歩歩きながら。
まるで、その場所には最初から矢が来ないというのを知っているように。
全ての矢が撃ち終わると結界は解かれ、ルユも武装を戻した。
「惜しかったねー。全方位型のトラップじゃなくて、回避不可の範囲攻撃かステータス作用系だったら危なかったかも」
装備を着け直したルユは、そう言って笑いながらカナに近づく。
「えーと、もしかして知っているギミックだった? それかスキル?」
疑問系だったのはスキル発動時には、大小はあれどオーラの様なエフェクトが発生する。
しかし、先程のルユにそれはなかったのだ。
つまり……。
「ううん、知らないギミックだったし、ただ避けただけだよ」
完全なPSのみで避けたという事である。
「ルユも私の事言えないじゃん……」
「射角がわかっていれば、来る位置は予測可能だから簡単だよ。現実と違って複雑な演算は要らないし、矢が飛んで来ない所に移動するだけだしね。まぁ、完全な安置では無いから少しの移動は必要だったけど」
「えぇ……」
要するに、矢が発射される角度がわかれば、矢が飛んで来ない安置を見つけて移動できると言っているのだろう。
理屈はわかるが、理解できない。
此処は森ステージなのだ、結界の中だけとは言え木の本数は尋常じゃない。
「まるで……瑠璃鐘君みたいな事言うね」
カナは兄妹は似るという事だろうか、と思ってそんな事を言ったのだったが驚きの返事が返ってきた。
「ん? そりゃあ、だって本人だし」
「え?」
そこでステージの何処かで大きな爆発音が鳴り響き、同時にルユには通知が来たようで彼女はチャット欄を開く。
「ん、チャットじゃなくて通話か……、どうしたのクロ?」
「ルユか! ちょっと助けてくれ、トウカと今居たんだが魔王とエンカウントした!」
「あー……、今回死神も参加してないみたいだし、暴れ放題なのか。わかった、今カナと一緒に居るから連れて行っても良い?」
「ああ、できるだけ速く来てくれ!」
ッピと言う通話を切った音の後に、ルユはカナの方を向きこう言う。
「って事で一次休戦、カナも手伝ってくれないかな?」
「あ……うん」
情報のオンパレードで頭がショートしたカナであった。
今回の話は賛否が絶対分かれる要素だけに、ちゃんと伏線張れてたか不安。




