第6話 イベント開始! ――森の探索
カナは森の中を探索しながら歩いていた。
「1万人近く参加している割には全然人に会わないな」
もう既にイベントが開始してから1時間近く経とうとしているのだが誰にも会わない。
イノシシや大型の熊みたいなモンスターを倒しつつ、たまに隠されたように置かれた金のコインを集めるのみだった。
途中洞穴の様な物まで見つけ、中を探索してみれば奥にはボスモンスターが居り、倒せば黒い宝玉の様な物を入手するイレギュラーもあったが、人には全くあっていない。
尚、これらのアイテムは全て『???』表示で詳細はわからない。
「うーん、折角なら他の参加者とも戦ってみたいんだけどなー」
そこでガサガサと近くの草陰からの物音を聞き取り、振り返る。
「貰った!」
ここに来ての初めてのプレイヤーだ。
相手はオーソドックスな大剣を持ち、見るからに剣士タイプの格好をした男だ。
オレンジ色のバンダナに動きやすそうな軽装備、斜めに振り下ろされた斬撃はそれなりの威力がありそうだ。
……要するにカナにとってはそれぐらいじっくり観察できるほどの余裕があった。
「ほっ、はぁっ!」
「ぐがっ!?」
少しかがんで大剣の太刀筋から逃れたカナは反動で跳び上がり気味に【回し蹴り】を喰らわせると男は吹っ飛び木に激突する。
「――ひっ!?」
更に間髪入れずに【瞬歩】で一気に近づいたカナは【強打Ⅲ】で男をぶち抜く。
男は粒子となって消え、木はメキメキと音を立てて倒れた。
「やった、対人でも勝てた!」
初めての対人戦闘を勝利でおさめたカナは飛び跳ねて喜ぶ。
今頃、男はリスポーン地点で呆然としているだろうが関係無い。
「それじゃあ、どんどん戦ってみようかな」
カナはそう言うと精神を落ち着かせ1つのスキルを使う。
「【白砂姫の記憶】」
スキルを使ったカナは赤いオーラを身に纏い一部のステータスが上昇する。
そして同時に感覚も鋭くなった。
「うーん、あっちの方に誰か居そうかな?」
カナは人の居そうな方向を確認すると、スキルを解いてから走り出す。
そう、これがここ数日でカナが編み出した【白砂姫の記憶】の使い方だ。
感覚合計6倍とレベルに合わない特化ステータスの暴力は流石のカナでもやはり制御し切れず、練習初日はスライム相手に酷いことになっていたが、敢えて動かず使用する事で気配感知の様な使い方を編み出したのだった。
そして今のカナは素の状態でも結構速いので、森を探索していたプレイヤー達を着実にキルしていくのだった。
■
「あいつに距離を詰めさせるな! 魔法やスキルで距離を保ちながら戦え」
男は三人組みでパーティーを組んでいる味方に指示を出す。
このイベントは個人戦だがパーティを組むのは禁止では無い。
着実にポイントを稼ぐための戦術としてもナシでは無いだろう。
「あちゃあ、近接スキルしか無いのバレちゃってるな」
カナは魔法などの遠距離攻撃で中々近づけずに居る。
一応今なら数発攻撃を喰らっても耐えられるだけの体力とVITだが、痛いのでできれば喰らいたくない。
そこでカナは左手に持ったクロスボウを構えた。
クロスボウの照準はDEXによってブレが決まるが、カナは正確に相手の武器を狙って放った。
「しまっ……」
「遅いよ」
武器を落としたプレイヤーはすぐに拾おうとするが、あっという間に距離を詰められてカナの打撃を貰う。
一人崩れれば脆いものであっという間に三人共粒子に変えられてしまうのだった。
「なんだ、あの素手の奴」
「ユニーク装備だから注意が必要だとは思ったが、滅茶苦茶強いじゃねーか」
近くの物陰に隠れて様子を見ていたプレイヤーはカナの無双っぷりに驚く。
「ありゃあ無理だな、退くか」
「そうだな……ん、何かあいつ赤いオーラを身に纏い始めたぞ……?」
次の瞬間には男達の悲鳴が上がることになるのだった。
「うーん、見た感じアイコンが青い人しか居ないし、上位プレイヤーは別の場所で戦ってたりするのかな?」
お前も青アイコンなんだが、というツッコミを入れれる人はこの場には居なかった。
「あははは、流石だねーカナちゃん」
いや、1人だけなら居たようである。
「あ、ルユ……」
一瞬警戒を解きかけたカナだったが、ルユが抜き身の超巨大な剣を持っていた事で考えを改める。
「えっと……私、もしかして狩られちゃう感じ?」
ふふふと笑いながらルユは近づき、カナは後ずさる。
流石に相手が悪い気がしていた。
「困っているようなら助けて上げようかとも思っていたんだけどねー。順調に美味しそうなくらいポイント蓄えている様だし」
「あー、うーんと……、見逃して?」
こてんと首を傾けながら頼むカナ。
それに対し、ルユは……。
「無 理 ☆」
無慈悲な急接近を仕掛けるのだった。




