第5話 イベントへの参加(2) ――ダンジョン攻略を終えて
「そういえば、良かったのか?」
クロがカナに向けて尋ねる。
「えっと……何が?」
「いや、当初イーズの洞穴に行こうとしていたのって、姫奈さんと差を広げない為だっただろ。これじゃあ、本末転倒になったと思うが」
「「「あっ」」」
■
――翌日、学校にて
「姫奈、本当にごめん!」
私は全力で姫奈に頭を下げていた。
「奏スゴイネー。まさか公式サイト見たら、歴代SSクリアの中に名前が載っているとは私もオモワナカッタナー」
「う……」
「別に私はキニシテナイヨー。まさか一緒に遊んでくれるって約束したその日の内にコンナコトされるなんて思わなかったけど、全ッ然キニシテナイヨー」
「本当にごめんって、私も結構予想外の事が重なっただけだから許して……」
いつにないレベルで姫奈の視線が冷たい。
本人は気にして無いって言っているが、それにしては今朝のタックルが過去一重かった。
明らかに拗ねた態度を見せる姫奈に、私がいたたまれないでいると助け船を出してくれる人が居た。
「宇條さん、黒崎さんは一応ちゃんと約束を守ろうとして、始めはちゃんとイーズの洞穴に行こうとしていたよ」
「瑠璃鐘君?」
助け船としてフォローを入れてくれたのは瑠璃鐘優冴君だ。
彼はこちらに目で挨拶をすると姫奈に昨日の様子を教えてくれた。
「だから宇條さん、黒崎さんの事許してあげてくれないかな?」
それに対して、姫奈は。
「だから別に怒っては無いって……。奏の性格と方向音痴はよく知ってるし、大体想像着いてたわよ」
「そーなんだ、良かったぁ……」
「ただ……」
姫奈の言葉にホッとしたのだが、姫奈は更に言葉を付け足す。
「私のあざと可愛い、涙目&上目遣いのお願いが全く刺さらなかったのかと思ってちょっと不服だっただけ」
「「へ?」」
「あれだけ、私史上全力の可愛さアピールで奏の同情を引こうと思ったのに、それがこの結果なんて悔しいじゃない?」
今私はとんでもない爆弾発言を聞いている気がするんですが、気のせいでしょうか……?
瑠璃鐘君も目が点になっている。
というか……。
「あれ演技だったの!?」
「当然よ、私があんなに塩らしくするわけないでしょ。あ、でも奏が本気で心配してくれたなら成功かしら?」
忘れていた。
この子はこういう子だった……。
同じ様な手に引っかかるのは何回目だろうか。
「あ、それとレベルは気にしなくて良いわよ。どうせ、どう考えても後1週間で追いつけるようなレベルじゃ無いから」
「ちょっ……」
「あははは……、宇條さんも面白い性格してるんだね」
恐らく瑠璃鐘君精一杯のフォローである。
昨日のアレは何だったのだろうか……?
私の心配を返せと言いたい。
「一応、初期レベルの奏に私の強さを見て、『凄いっ!』って褒めて貰いたい欲望も有ったんだけど、まぁいいや。他にもやりたいことは沢山有るし、そのくらいはもう別に気にしない」
「姫奈のレベルって一体……」
「あ、それは俺も気になるな~」
「ひ・み・つ、ゲーム内で会ったときに教えてあげる」
もう、ゲーム内でも姫奈に振り回される気しかしなかった。
私と瑠璃鐘君は目が合い、互いに苦笑いでごまかすが、恐らく私の目にハイライトは灯っていないだろう。
「そういうことなら、黒崎さんをアレに誘ってもよさそうかな?」
「アレ?」
いきなり振ってきた話に心当たりがなく、疑問形で返事を返す。
「ああ、そういえば個人戦イベントが週末にあるんだっけ」
「そうそう、それそれ」
そんなものがあるのか。
どんな物かいまいちわかっていないがイベントと聞いて興味はあるので、できれば参加したいけれど……。
「良いと思うわよ。今の奏でどのくらい通じるのかわからないけれど、雰囲気だけでも楽しめると思うし。私は気にしないで」
姫奈も賛成のようだ。
「それなら、参加したい……かな?」
「よし、決まりだね! エントリーの仕方とか事前準備とかはまたゲーム内で教えるよ」
方針が決まるとそう言って瑠璃鐘君は去って行ってしまった。
私はというと、まだ実態も知らないそのイベントにわくわくして胸を高鳴らせていた。
「……奏と瑠璃鐘君、大分仲良くなったよねー」
ボソッと呟いた姫奈の言葉に若干の違和感はあったが、この時の私は完全にスルーした。




