プロローグ 第0話 Make O.S.
『Many art keep Online』――”~私達のオリジナルなストーリー~”を……と言うキャッチコピーで発売されたこのゲームは通称『Make O.S.』と呼ばれている。
フルダイブ型VR技術を採用している本作だが、その一番の魅力は規模の大きさだろう。
なんとこのゲーム、運営は9割方AIが行っているのである。
最新鋭のAIが作り出した膨大なデータ達は、大量のモンスターやアイテム、その他様々なシステムを構築し、日々新しい情報が発見されている。
AIの力が大きすぎて一部のゲーマーからは、『ほぼ人間の運営は仕事していないゲーム』と言われる程である。
尚、全く人間の運営が居ないわけではなく寧ろ多い。
プレイヤー間のトラブル対応やAI達の作り出す様々なデータの調整など、どうしても人の手が必要な場面は多く出てくるからである。
それでもこの様に言われてしまうのは、余りの規模の大きさにAIが行う作業量の方が圧倒的に大きいからだ。
如何にこのゲームの規模の大きさが他作品と比べて桁違いか、わかっていただけただろうか?
そして、この物語は一人の少女がそんなゲームを遊ぶところから始まる。
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「これがMakeO.S.かー」
彼女の名前は黒崎奏、容姿は柔らかい色の茶髪なセミロングにとても華奢な体付きをしている。綺麗というよりは可愛らしいと言われる見た目の少女だ。
身長は17歳で159cmとほぼ平均ぐらいの身長だろう。
「思っていたよりも大きいんだね……」
奏は用意した自分の部屋に置かれたゲームをする為のデバイスに手を置き眺める。
そのデバイスはカプセル型の大きなベッドの様になっており、部屋の1/4はこのデバイスに占拠されてしまっている。
色は銀をベースに所々金色の模様が施されていた。
そして、側面には『Make O.S.』のロゴが金色に輝く。
「えーと、中はどうなっているんだろう?」
奏はデバイス上部、半透明の黒いガラス部分を開けると中を覗き込んだ。
「わぁ、普通に寝れそう」
ゲームをするためのデバイスであり、決して寝具としてのベッドでは無いのだがそんな感想を漏らす程度には寝心地良そうだ。
中は白いクッションが敷き詰められており、とても柔らかい感触で広めである。
頭の部分には、太い幾つかのコードがデバイス本体に繋がっている球状のヘルメットの様な物が置いてあった。
「うーん、こんな大がかりなゲーム機、私ちゃんと動かせるかな……?」
そう言って、奏は友人から貰ったメモを眺める。
「姫奈に押し切られて買っちゃったけれど、私フルダイブどころかVRもオンラインも初めてなんだけどな……」
友人、宇條姫奈に渡されたメモは初期設定に関するメモだった。
奏はゲームをそこそこする方の女の子なので、『初期設定さえ乗り切れば後は大丈夫!他はそんなに難しくないよ!』と言われてゴリ押されたのだ。
「肝心の姫奈はしばらくゲームできないって言うし……」
奏をこのゲームに誘った張本人である姫奈は、β版からこのゲームをプレイしていたそうだがとある事情でしばらくログインできなくなったらしい。
「……ま、いっか。取り敢えず初期設定から始めよう」
買ってしまったモノは仕方が無い。
折角買ったゲームである。
難しい事は考えず、取り敢えずゲームを始めてみようと思う奏であった。