第3話 交流会(2) ――ギルド勧誘
「ダイブイン:MakeO.S.――――アクティベート」
カナはファストタウンの宿屋の中に降り立った後、広場の一点を目指した。
目的地へと着くとそこには3人の人影があった。
「初めましてカナさん」
彼女はトウカ、ルユ達のギルドのヒーラーであり、生産職として薬剤師でもある.
ピンクの髪に装備も全体的にピンクっぽいロープだ。
長杖を持ち、大人しそうな顔立ちは何というか、とてもヒーラーっぽいだろう。
「学校では色々あったが……よろしく頼む」
そして彼はクロ、ルユ達のギルドでは、大分生産寄りの職業らしい。
多少の違いはあれど、学校での彼の様相とは大きく変わらず、それに加えて全身黒っぽい服装だ。
「私はもう見慣れたかなー」
三者三様に様々な反応を見せる。
「はい、よろしくおねがいします! トウカちゃん、クロさん、そしてルユちゃん」
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――同日の昼、学校にて
「兄妹とかって居るかな?」
「ルユってプレイヤー知ってるかな?」
お互いに質問を投げかけた私達は二人して驚いた顔をしていたと思う。
「うお、まじで合っていたのか」
黒羽君まで何やら驚いている様子だった。
「え、何。まさか、ゲーム内で既に知り合いだったの?」
「ああ、直接会ったことは無かったんだが、俺達のギルドで少し話題に上がってな」
「え、私そんな話題にされてたの!?」
知らない間に噂になっていると聞かされ、動揺するのは仕方のない事だろう。
「いや、ギルドって言っても優冴の妹含めた身内4人だけで固まったギルドだからな」
「精々クラスメイトに似た人が居たって話をしたぐらいだよー」
「そ、そっか」
流石に、あんなポンコツぶりを晒してしまった後で話題にされているとなると恥ずかしかったが、ルユちゃんと親しい数人だけなら、そういうこともあるだろう。と、奏は自分なりに無理矢理納得でき落ち着くことが出来た。
「奏ってそんなわかり易いアバター使ってるの? たしか、初期アバターでは無いって言っていたけれど」
「結構好き勝手に変えたつもりだったんだけどなー」
「うん、俺もクラスメイトに似ているなーくらいの感覚だったから。気付かない人は気付かないと思うよ」
「ふーん、なるほど。それで今日は本人確認も兼ねて接触に来た……と」
「ぶっちゃけると、そういうことだね」
恐らくゲーム内のスクショなどで見せられただけなのだろうが、それで私だとバレてしまうほどあのアバターは私に似ていたのだろうか……?
「それにしても探してみれば案外身近に居るもんだね。このゲーム知名度がまだまだ低いから、一緒に話せるリアルの友人は中々居なくて寂しかったぐらいなんだよ」
「ああ、色々聞きたい事はあったんだが……、この際全部すっ飛ばして、もし良ければ俺達のギルドに入らないか?」
クラスメイトが同じゲームをやっていた事に驚きはしたものの、始めたばかりのあのゲームを一緒に楽しめる人が増えたのは私としても嬉しい。
当然、私はギルドの勧誘に大賛成だったのだが。
「勿論……」
「やだ」
「え、姫奈? どうしたの?」
まさかの所から拒否が出てきてしまった。
更に姫奈は私にしがみついてこんなことを言う。
「奏は渡さない」
「本当にどうしたのっ!?」
一瞬、姫奈は既にどっかのギルドに入っていたのかもしれない事などに思い至ったが、彼女が前にギルドには入っていないと言っていたことを思い出し、私は困惑を極める事になる。
男子2人は共に目が点になっていた。
「……えーと、宇條さんもプレイヤー何だよね?」
「無理に誘うつもりも無いが、理由だけでも聞いて良いか?」
流石に2人も納得できていない……いや、これで出来る方がおかしいと思うが。とにかく姫奈が拒否する理由を知ろうと再度質問を重ねてくる。
「私、デバイスが壊れてしばらくできないんだもん。折角奏をこのゲームに誘えたのに、先にギルドに入られたら一緒に遊ぶのが難しくなっちゃう」
そう言う姫奈の顔は割と涙目だった。
それで私は姫奈がゴネテいる理由に思い至った。
私と姫奈はそれなりに長い付き合いで仲も良かったのだが、私が普段やっていたゲームのほとんどはオフラインそれも1人用のゲームだったのもあり、実は姫奈と一緒にゲームを進めるのはこれが初めてだったりする。
このゲームに関しても私は始め余り乗り気ではなく、何度も誘われてようやく決断したという経緯がある為、姫奈にとっては私がギルドの方を優先して一緒に遊ぶ機会が減ってしまうかも知れないのは最大の不安なのだろう。
「えーと、姫奈、私そんなことしないよ?」
「私も奏はそんなことしないと思ってはいるんだけど、それでも……」
「約束するよ。元々姫奈と一緒に遊びたくて買ったゲームなんだし、姫奈が戻って来たら絶対放っておいたりはしないよ」
「別に俺達のギルドも自由奔放だし、ノルマとか無いから好き勝手行動してくれて構わないよ。ただ、できれば2人とも仲良くして貰えると嬉しいかな」
「何なら現在進行形で、同じ様にログインできなくなっている奴がこっちにも1人居るからな。全然気にしなくて良いと思うぞ」
「……ん、わかった。それならいい」
そうして姫奈が納得してくれて、この話は一旦纏まったのである。
そして取り敢えず集まれる人だけでも今日、ゲーム内での顔合わせをしたいという話で落ち着くのだった。
尚、この時の私……いや、恐らくこの場に居た姫奈以外の全員、彼女が何故このような行動を取った理由を誰も理解できていなかった事が、テスト明け後に発覚することになる。




