第3話 交流会 ――学校
「ふわぁ……まだ眠いな~……」
奏は校門をくぐり、学校の敷地内へと入る。
昨夜、またゲームの情報収集で夜更かししてしまった奏の頭はまだまだ半覚醒状態と言った所だ。
春のこのぽかぽかした陽気も原因だろう。
そんなぼ~っとした様子の奏に声をかけるものが居た。
「せいっ!」
「痛っ!?」
訂正、朝っぱらから頭からのタックルをかましてくる女生徒が居た。
「っとと」
奏は数歩よろめいたもののしっかりと立ち止まる。
「おはよ、寝ぼすけ奏、起きた?」
「おはよ姫奈、……朝から手荒な挨拶だね」
奏は後ろを振り返り自分の背の方を見ると、無邪気そうな顔を向けながらしがみつく親友が居た。
そう、彼女が奏の親友宇條姫奈だ。
身長は少し奏よりも小さい153cmぐらい、髪は完全に黒のロングで顔付きもおっとりとした雰囲気の為、周りからは実際の年齢よりも幼く見え、大人しそうな印象を持たれやすい。
……尚、そう見えるという話だけであり、実際はかなりアグレッシブな性格をしている。
「二日ぶりの奏だもん」
「電話では土日も話したでしょ」
「やー、直接は会ってない」
そう言って姫奈は全く悪びれる素振りは見せない。
こちらを背中越しにじっと見つめてくる姫奈を見ていると怒る気も失せてくる。
「はぁ……取り敢えず教室に行こう?」
「そうね♪」
流石にそこからは2人共離れて歩き、会話をしながら教室へ向かうのだった。
――そんなこんなで昼休み
「そういえばごめんね、奏。私があれだけ奏と一緒にやりたいって言って買ったゲームなのに、肝心の私ができなくて」
「ううん、それは仕方ないよ。私は私で勝手に進めちゃっているし」
「はぁーあー、まさかこんなタイミングで滅多に壊れないあのゲーム機が故障するとは……一生の不覚」
「いつ戻ってくるの?」
「うーん、まだしばらくかかるみたい、テスト明けにはやれるはずだけど」
「そっか」
テストは来週だ。
姫奈と一緒にゲームをプレイできるのはまだまだ先になりそうである。
「ゲームが出来るようになったらすぐに引き継ぎ設定をすませるから、それまで待っててね!」
「あはは……のんびりプレイしながら待っているよ」
そこで奏は姫奈にゲームの進捗はどこまで進んでいたのか聞きそびれていたことを思い出した。
彼女はMakeO.S.を元々既プレイである。
面白いから一緒にやろうと言われたのを、奏が困惑しながらも了承したのが事の始まりである。
(β版からやっていたぐらいならそこそこやりこんでいたと思うけれど……)
「ねぇ姫奈? 姫奈ってMakeO.S.では何レべ……」
「ちょっといいか」
姫奈に話しかけようとした奏の声は途中で遮られる。
「あ、すまん」
「いや、いいよ、どうしたの? 黒羽君」
レベルの話はまたどこかで聞けばいいやと考えた奏は彼に続きを促す。
彼の名は黒羽黒斗、クラスメイトだが特に話した事は余り無い。
身長174cmでクラスの中でも背が高く、目つきも悪いのでクラスでは避けられがちだ。
奏も正直に言うと、若干怖いので苦手意識がある。
「あー……、えーと……」
「「?」」
しかし、彼は続きを言うことは無く、何か困っている感じで煮え切らない様子だった。
(何か、言葉に迷っている?)
そんな風に奏が直感的に感じたとき――
「あっはははは!」
大きな笑い声が彼が来た方向から聞こえてきた。
驚いて3人共そちらの方向を見るともう1人、クラスメイトが近づいてきていた。
彼は……
「ごめんごめん、俺達は黒崎さん達から知っているゲームの話が聞こえてきたから少し話に入れて貰えないかと思ってさ」
「来るなら最初から来いよ……」
「瑠璃鐘君!?」
彼の名は……瑠璃鐘優冴、偏差値が高めなこの学校でもトップクラスの成績を誇る秀才。特に理系の科目に物凄く強い事は学年を通して有名だ。
黒羽黒斗とは色々な意味で対称的な彼だが、仲は良いらしくよく2人一緒に行動しているのを見かける事が多い。
「ゲームってMakeO.S.の事?」
「そうそう俺達もやっているんだ。そのゲーム」
そう返す、優冴君に驚いて私達2人は目を合わせる。
「どうかした?」
「いや……意外だなって思って、2人共ゲームをやる風には見えないから」
MakeO.S.はかなりコアなゲーマー達が見つけ出してきたゲームで、知名度はまだそこまで無い。
奏も姫奈に勧められなければ手を出さなかったはずだ。
そして彼らは2人共、そこまでゲーム好きなイメージは無かったのだが……人は見かけによらないという事だろうか。
「そんな意外なのかな? 俺達がゲーム好きなのを知ると皆驚くんだけど」
「俺も人の事は言えないが、こいつはドン引きするレベルのゲーマーだぞ」
「あーうん、我ながら否定はできないな」
「あははは……」
奏はそんな2人の会話に何が何だか……という様子で苦笑いを零す。
そしてふと2人、正確には瑠璃鐘の方を見ていて奏は既視感を感じた。
(似てる彼女に……)
「あ、そうだ」
奏は感じた既視感を確かめる為、彼に質問を投げかけた。
そして同時に、瑠璃鐘は何かを思い出した様に奏へと声をかけてきた。
「瑠璃鐘君――」
「黒崎さん――」
「兄妹とかって居るかな?」
「ルユってプレイヤー知ってるかな?」




