第2話 初戦闘(2)――カナvsスモールラビット
――イーズ平原
最初の街ファストタウンから一番近い、名を持ったフィールドだ。
その様相はとても穏やかな緑の原っぱで、出現するモンスターも数は少なく兎やスライムなどの危険性が低い敵が多い。
「まぁ、たまに強力なモンスターが近くの森から流れてきたりするから一概に安全とは言えないんだけど……今は大丈夫そうだね」
目的地へ到着したルユは先に周りの様子を確かめ安全を確保している。
その理由は100%のペインシンクロ率に設定してしまったカナが先制攻撃を受けない様にするためだ。
幾ら、現実に悪影響が無いとはいえ注意するに超したことは無い。
「まぁ、今居るモンスターなら大丈夫かな。カナちゃん、行けそう?」
「だ、大丈夫です……多分!」
「流石に序盤で腕切り飛ばす様なモンスターも居ないから安心して」
「は、はい」
周りに居るのは小くて、少しすばしっこそうな兎とスライムが居るのみだ。
これなら、1度に大きなダメージを受ける事も無いだろう。
カナは近くに居た兎の方へ進む。
「きゅきゅ?」
兎は近づいてきたカナに気付いた様で、頭上に浮かんでいるアイコンが徐々に黄緑色から赤色へと変色していく。
「気をつけて、スモールラビットの攻撃手段はタックルしかないけれど、見た目以上に速くて力強いよ」
そうルユが叫んだ瞬間、戦闘態勢に入った兎は勢いよくタックルをカナに仕掛けた。
「わわっ!?」
予想以上の勢いと速さに驚いたカナだったが、ギリギリで上半身を逸らして躱す。
「……へぇー」
その様子を見ていたルユは思わず、面白い子を見つけたという感じに感嘆の声を漏らす。
「きゅっ、きゅきゅう!」
タックルを避けられた兎は着地するとすぐに体勢を整え、そのまま振り向き際にもう一度タックル
を、まだ体勢の整っていなかったカナに仕掛けた。
「うっ……」
今度のタックルはお腹に直撃してしまい、体をくの字に曲げながら尻餅をつきそうになる。
しかし、カナは片手を軸に体を回転させ、体勢を整えようとした。
兎はその動きに一瞬驚いた様子を見せたが、カナの体勢が整う前にタックルをもう一度仕掛けようと地面を蹴る。
「まず……!?」
――その時、何か見えない力が兎を弾き飛ばした。
「きゅきゅうぅぅ!?」
弾き飛ばされた兎は悲鳴を上げながらゴロゴロと転がっていった。
「あ、ごめん助太刀はいらなかったかな?」
どうやら、今のはルユがやったことらしい。
その片手には、いつの間にか彼女の身長を優に超えた超巨大な剣が握られていた。
「いえ、助かりました。思っていたより結構痛かったですし……」
そう言ってカナはお腹をさすりながら立ち上がる。
「いててて……」
「まだ戦えそう?」
「はい、大丈夫です」
思っていた以上の衝撃を受けたカナはその痛みに少し顔を歪めるが、ルユの言葉には大丈夫だと伝えて気合いを入れ直す。
「そう、それなら私はまた下がっているね。さっきの攻撃はダメージを与えるスキルじゃないから、同じ個体がまた戻ってくるはずだよ」
「わかりました」
「それじゃ、頑張ってね!」
そう言って、ルユは後ろに下がっていった。
そしてそのすぐ後、先程の兎が姿を現した。
「きゅきゅきゅきゅっきゅきゅきゅきゅきゅーいっ!!!」
……姿を現した兎は明らかに怒った状態となって、爆走しながらこっちに向かって駆けていたのだった。
その体には、あちこちに葉っぱの様なものがくっつけている。
「あれだと、タックルと言うより突進って表現の方がしっくりくるなぁ……」
そんな兎の様子を見てカナは苦笑いをする。
「でも、速度は別にさっきまでと変わってない……悪いけれど倒させて貰うよ、兎さんっ!」
兎とカナの距離が近くなるといつ攻撃が来ても良いようにカナは構えをとる。
「きゅうっ!!」
兎は先程までと同じ様にタックルを仕掛けてきた。
それに対し、カナは余裕を持って避ける……様に見えた。
「捕まえたっ!」
「きゅきゅうっ!?」
なんと、カナは肘と足と脇腹を上手く使い、間に挟んで兎を捕まえたのである。
そして――、
「せいっ!」
「ぎゅっ!?」
……カナはそのまま兎を絞め倒しにかかったのである。
兎は最初、その短い手足をばたつかせてカナから逃れようとしていたが、次第にその動きには力が失われていく。
そして、その攻撃でHPが0になった兎は目をぐるぐるにし、ガラスの様にパリンッと割れた後、粒子となって消えたのだった。
『2の経験値を獲得しました』
何処かからアナウンスと共に視界の隅にログが写る。
「倒したー!」
カナの実戦初の勝利だった。




