第1話 ファストタウン(4) ――Game Start
「どうしよう、これ……」
まず最初に言っておこう、この手のネットゲームで情報を遮断するのは不利である。
まして最先端のAI達が管理するこのゲームは、無限に等しい情報の塊なのだ。
情報の重要性は他のゲームよりも高いといえるだろう。
幾らプレイスタイルが自由とはいえ、それはリスクも伴っている事を頭に入れておかなければならない。
―MakeO.S.攻略Wiki―
初期装備とボーナスポイント
このゲームの初期装備には隠しボーナスがある。
その一つが初期BPであり、基本30~50Pでランダムに振り分けられるが一部の武器はその枠組から大きく外れる。
ファストタウン到着直後に獲得通知が入る。
「こんな通知無かったからおかしいと思ったら……っ!」
隠し初期装備『素手』
現在判明している唯一の隠し初期装備。
初期装備を何も選ばずに次へ進もうとすることで選択可能。
通常プレイ時に装備を解除した時とは違い特殊ボーナスが発生する。
アクセサリー効果1.5倍、レベルアップボーナス2倍の破格の性能を誇る……様に見える罠である。
初期BPが0な他、武器を1度でも持つとボーナス効果は消失、その後に武器を外し『素手』に戻してもボーナス効果は永久消失する。尚、この時の初期BPも0のままである。
唯一の救いは将来性が決して低くは無いことだが、武器を一切装備出来ない事から装備の恩恵を得られない他、リーチの短さなど扱い辛さがトップレベルであることが予測される為、素直に通常の武器を選ぶことをオススメする。
「何、このピーキー性能……いつでも変えられると思ったら、それするとマイナススタートが確定するってことじゃんか」
他にもペインシンクロ率、通称”ペンクロ率”と呼ばれるこのシステムだが……。
変更レート1%=10BP
……因みにLv.1毎に2BP、Lv.2時のみ4BP、Lv.10毎に30BP手に入るシステムらしい。
デフォルトより少し高い40%、そこから少しずつ調整してゆく事をオススメすると書かれている……。
「たしかに変換レートは聞いてなかったけど、まさかさー……」
高すぎる。
奏は半ば半泣きになりながら机に突っ伏した。
アカウントを削除し、やり直せば良いと思うだろうか?
実はこのゲーム、プレイヤーの生体情報からデータを構築する為、複垢や垢削除ができないのである。
この情報も少し調べただけで奏の目につき、彼女にトドメを刺したのである。
「やっぱり姫奈との付き合いだけに留めておこうかな……」
そう考えた、奏の頭にゲーム内で出会った親切な青白髪の少女の姿が脳裏に映る。
「ううん、やっぱりもう少しちゃんとやってみよう。折角、姫奈以外のゲーム内での友達もできたんだし」
彼女は体を起こしてもう一度自室のPCに向かい、情報の収集へと戻った。
「いつまでも後悔してても駄目だよね。もうやっちゃったものは仕方ないんだしっ!」
そう言って画面をスクロールさせ、プレイヤー達がゲーム内で撮ったスクショを眺める。
「素手を選んでいる人はほぼ居ない、けれど0ではない……のなら」
そうして何枚ものスクショを漁った末に、素手でモンスターらしきものと戦う上位プレイヤーの画像を見つけた。
「私にだってやれない道理は無い。他の武器を装備して、折角のボーナス効果を消してしまう前に気づけたことを喜んだ方が良いよね!」
奏はそう前向きに捉えて、このゲームへ挑む事を決めるのだった。




