文字にのせるは過去そして未来の自分
今回は短編となっております。誰もが経験する出会いと別れシーズンの話です。
ガラガラ
この扉の音も今日で最後だと考えるのもちょっと寂しいものがある。そんなことを考えていたために、本来卒業生しか登校してないこの学校の図書室が、開いていることに疑問すらなかった。
いつものように、一番奥の司書室に入ったところで一人の少女に気が付きて、今日が特別な日であったことを思い出した。
「今日は卒業生以外登校してはいけないはずだが?あと、図書館も開館禁止のはずだが?」
その言葉を聞いた少女は振り返って
「どうせ、卒業式が終わった後来るであろうどっかの誰かさんのためにあらかじめ開けといたんですよ」
笑顔を向けてきた。
「そうかい、じゃあ規則も守れないような奴はまた生徒指導に怒ってもらうしかないようだな。」
「ええ!それだけは!」
「嘘だよ」
「先輩ってやっぱりひどい人ですね」
その瞬間、二人同時に吹き出した。しばらく笑っていたがその少女がまじめな顔をして
「先輩、、、卒業おめでとうございます。」
「おお、ありがとな」
さっきまでさんざん聞いた言葉だったがこう真っ向から言われるとなんだか寂しくなる。
こいつとは二年生からのつながりだ。
俺が二年生になって、先輩からこの図書室の管理を任されてから半年後くらいのときだ。もともと本を読むことが好きだった俺は、ここの管理を任されたことはたいして苦痛ではなかった、むしろ部活をやってなかった俺からするといい時間つぶしで快適だった。
そんなある日、こいつが生徒指導の先生に連れてこられた。事情はよく聞きはしなかったが生徒指導の罰でここのしばらくの管理をやらされることになったらしい。本人は入ってきてそうそう
「ええ!めんどくさい!そもそも本とか面白くないし!興味ないし!」
なんてことを言っていた。
その中の、「本なんか面白くない」が俺の何かしらのトリガーを引いたらしく、後から聞いた話だとそこから小一時間ほど、俺が本の面白さを説き、強制的に本を読ませていたらしい。
その後、泣きながら生徒指導室に戻ってきたこいつを、何人かの生徒が目撃していたらしい。俺は身に覚えはないが。そんなかんやでそれをしばらく続けているうちに、自首的に来るようになった。それ以来この感じが続いている。
と、言ってもお互い来て会話しながら本を読んでるだけだが、、、
「せんぱい?なんかぼ~としてます?」
「ああ、なんか昔のことを思い出しててな」
「あ!もしかして私のことですか?やだなもー恥ずかしいですよ~」
ここは認めるのもしゃくだったので
「いや、校長の挨拶をちょっとな」
「それ、全然昔じゃないじゃないですか!」
そんな盛大な突っ込みが炸裂したあとにまた表情を真面目な顔に戻して
「実は、先輩に渡したいものがありまして」
「ん?俺に?」
「はい、これなんですが」
そういいながら手の後ろから出てきたのは1つのUSBメモリだった。
「これは?」
「これはですね、先輩に本の魅力お教えてもらって読んでるうちに書くほうも興味持ちまして、、、その第一作目です!」
「おお!本当か!なんか俺の努力がやっと実ったような、、、読んでいいか?」
「そ、それなんですが。先輩の行く大学ってここからかなり遠いですよね?」
「ああ、覚えていたのか。そうだよ飛行機で二時間くらいかな?」
「な!なら!その中で読んでください!今は恥ずかしいので。」
「お、おう。わかった」
そこから、少し沈黙が続いてから
「先輩とも今日で最後か、、、寂しいですね」
「まあな、あ。まあ、その、ずっと聞けないでいた連絡先とか聞いてもいいか?」
「いいですよ!、、、ってあ携帯忘れた。」
「今時、そんなことある?」
「へへへ、すみません。あっ!でも!そも小説の最後に書いといたんで安心してください!」
「おお、なんでそこはちゃっかりなんだよ」
「へへへ、わたしらしいですね」
「それもそうか」
二人とも笑ってはいたがそこには悲しみの雰囲気もかんじられた
「よし、そろそろいくわ」
「はい、、、」
「最後に会えたのがお前でよかった」
「え、それって」
「それじゃあな、ありがとう」
そういって部屋を出て行った俺を追いかけようとせずただ、笑顔で手を振っていた彼女の頬には光るものが見えたような気がした。
振り切ったはずの気持ちだったが、心のどこかにもやもやを残したまんま、俺は飛行機に乗っていた。乗るやすぐにパソコンを取り出しUSBメモリを差し込んだ。小説が書かれているファイルを開き、小説を読み始めた。
そこには、生きているのが嫌になってきている1人の少女が、自分の好きなものについて真剣にかつ楽しそうに話す少年との出会いの話だった。最初、少女は少年の話など興味なかったが、その少年の熱量に押されて少しづつ興味がでてくる。完全に興味を持ったところで、自分が興味を持ったものが1つでないということに気づいてしまう少女の恋のお話だ。
気が付けばどんどん読み進めていた。途中読むペースが上がってしまったのは、心の苦しみを紛らわすためだったのか今はわからない。
読み進めているうちに、物語はクライマックスを迎えていた。少年が自分の夢をかなえるために少女とお別れをしているシーンだ。読んでるうちに予想外なことが起こった。少年はただ「さようなら」と言って船に乗り込んでしまった。少女も笑顔で見送っただけだった。
「嘘だろ?」
機内ではあったが一言声を漏らして1ページめくった。きっと、続きがあるはずだ。。だが、そこには何も書かれていなかった。希望を込めてもう1ページめくったあところで文字が出てきた。そこには大きな字で
「先輩へ。この話ここでは終わりではないですよ。
まだ続きます。いや、続かせます。」
「だから!」
「私のことを待っていてください!必ず続きを書きに行きます!」
春は出会いの季節。それは久々に会う人でも適応するんだろうか。そんなことを考えながら、桜の木に体を預け本を読んでいたら。
「先輩!お待たせしました。」
「随分と時間かかったな遅すぎだ。」
「何言ってるんですか!最速ですよ。さ・い・そ・く」
「悪い悪い冗談だ。で、ところで作者様?この後の展開は?」
目の前の少女はただ顔を赤くしながら
「そ、それはですね、、、ま!まあ!とりあえず歩きましょう!」
「それもそうだな」
まだ、春先だからだろうか人肌が恋しくなってしまうのは。出した左手に伝わってきたぬくもりが普通より暖かいのもきっと春先のせいだろう。
読んでいただきありがとうございました。出会いと別れの物語とか言っておいてそこまでそんな話ではなかった。反省反省
次回は連載3話を上げようと思っています。お暇でしたらお付き合いください。