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本日二回目の更新です!


「VRゲームって初めて! なんだかドキドキしちゃうなー!」


 少女が自室で一人、ご機嫌な様子で呟いた。

 その手にはヘッドギア型の機械がある。


「ゲーム機とソフトがセットで当選するなんて、私の運も捨てたものじゃなかったんだね」


 少女の名前は長峰(ながみね)真朝(まあさ)

 十六歳。

 彼女が手に持っているものは最新VRゲームがインストールされている、これまた最新のVR機器である。

 ゲームだけでなく、様々場面に対応出来るスペックを持った超高性能機であるが、機械に疎い真朝にとってはVRゲーム機でしかない。


「さーって――ん?」


 早速とばかりに装着しようとしたところで、スマホが音を鳴らした。

 初期設定のままのシンプルな電子音と共に点灯したディスプレイには、名前が表示されていた。


「あ、倉持(くらもち)さんだ。はいもしもしー。どうしたのー?」


『もしもし、長峰さん? 今日から≪CPO≫の先行プレイ期間だけど分かってる?』


 ≪CPO≫とは、ケイオスプライドオンラインの略称で、真朝がこれからプレイしようとしていたゲームのタイトルだ。

 VRゲームの溢れる現代において、圧倒的なクオリティとリアリティで話題騒然となった、期待の新作ゲームなのである。

 この日はβテストに参加したテスター達へのお礼としての、先行プレイ期間開始日だった。


 電話の相手である倉持は、真朝のクラスメイトであるが現在絶賛引きこもり中。

 真朝がなんとなく応募した懸賞で≪CPO≫一式を入手した事を聞きつけて、それから関わる様になった相手だ。


「うん、勿論分かってるよー。そんなに心配しなくても大丈夫だって」


『そんなこと言って、せっかくβテストの参加権もあったのにキャラだけ作ってあと全部放置してたじゃん』


「あ、あははー。ちょっとタイミングが無くって」


『それでも先行プレイはさせてもらえるんだから、運営も優しいね』


「ほんとだねー。もうたっぷり時間も取れるし、今日からはいっぱいプレイするよ!」


『ふぅん』


 嫌味が含まれていることにも気付かず、真朝は楽しそうに宣言する。

 何をやっても上手くいかず、ダメな自分は何をやっても駄目だと絶望している時に話しかけてくれた倉持に対して、真朝は好感を抱いているのだ。

 嫌味を言っている等夢にも思わない。

 話しているだけで楽しいし、これから一緒にゲームが出来ると思うともっと楽しい。

 

 それに対して倉持は、苛立たしさを出さないよう堪えていた。

 今はそれよりも優先したいことがあるからだ。


『それじゃあ前約束してた通り、あんたの為に考えたオススメの構築をデータで送っとくから、その通りにするんだよ。その通りにしたら絶対間違いないから。終わったら連絡してね』


「はーい。また後でね」





 気が付いた真朝は、真っ暗な空間にいた。

 周囲は黒に包まれているのに、自分の姿ははっきり認識出来る不思議な場所である。

 βテストの時に一度体験している真朝は久しぶりの光景にも感動しつつ、脳内に響いてくる声に意識を向けた。


『ケイオスプライドオンラインの世界へようこそ。私は管理AIのイレブン。よろしくお願いします。これからキャラクターの作成に入っていただきます』


「はーい。わぁ、こんなのだったね、もう既に懐かしいよー」


『説明は必要ですか?』


「えーっと……おねがいします」


 しばらく画面を眺めた真朝は、諦めて説明をお願いした。

 ゲームにも機械にも慣れていない真朝に、数か月前の記憶なんて残ってはいなかった。


『それではまず、一番上の空欄にキャラクターネームを入力してください。一度確定した後は変更出来ませんので、お気を付け下さい』


「あ、名前かー。名前は前に使ってたのそのままでいいね。マーサ、っと。確定!」


『マーサ様ですね。確認しました。キャラクターの外見はどうしましょうか?』


「うーん、大変そうなのでそのままで!」


 マーサの目の前に壁が現れ、人の姿が映し出された。

 今着ているのと全く同じ、簡素な服に薄い革の鎧。

 ほぼ真横に切り揃えられた前髪に、長くて黒い髪。


「これ、私?」


『そうです。キャラクターの外見はこちらでよろしいですか?』


「うん、いいですよ」


『それでは次は、クラスをお選びください』


「クラス?」


『クラスというのは、職業を表すものです。クラスによって得意な戦法や、習得するスキルの傾向が変わってきます。詳細は、一覧からクラス名をタップすることでご覧いただけます』


「なるほど。わあ、沢山あるんだね」


『正式サービスの開始に伴い、最初にお選びいただけるクラスは一般クラスが十五、適性によって選出された特殊クラスが十、そしてβテスターの皆様にはβテストの際に試して頂いたクラスの、計二十六となります』


「なるほどー。前は選べなかったもんね」


 βテストの時には、プレイヤー達は自由にクラスを選ぶことは出来なかった為、ランダムに割り振られたクラスのままテストに挑んだ。

 そのクラスは特典として、最初に選べるクラスとして一覧に載っている。


「うーん、読んでもよく分からないなぁ」


『よければ説明いたしましょうか? 分かりやすく丁寧に、解説致しますよ? 詳細にとなると各種シミュレーションも合わせますと五時間程お時間をいただきますが』


「五時間……あ、大丈夫です」


(倉持さんも待たせてるし。あ、そういえばオススメを考えてくれたんだっけ)


「ええっと……端末に送られてきたデータって見れますか?」


『はい、可能です』


「じゃあそれでお願いします!」


『かしこまりました。こちらは、βテスト時と同じクラスですね。説明は必要ですか?』


「えーっと、一応お願いします」


『≪プリンセス≫はやや特殊なクラスで、NPCやペットの力を借りて戦います。他にも支援スキル等も豊富なので、得意なポジションは後衛になります』


「なるほど、分かりました!」


『ステータスとスキルも入力されていますね。少々特殊な構成になりますが、そちらもデータ通りに割り振って構いませんか?』


「えへへ。実はそれ、ゲームに詳しい友達が私の為にって考えてくれたんだー。だからその通りでお願いします!」


『かしこまりました。それでは、ケイオスプライドオンラインの世界をお楽しみください』


 黒一色だった世界が段々と薄れていく。

 こうして、マーサのゲームライフが幕を開けた。



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