1 いざプロローグ
新作です。
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二十時丁度。
サービス開始を記念した、オープニングイベントが開始する時間だ。
綺麗な星空が赤く染まる。
まるで炎が燃え盛っているかのように、紅に発光する雲が世界を覆った。
現実なら阿鼻叫喚の地獄絵図に違いないが、これはゲームの世界の話。
プレイヤー達はイベントの始まりに、歓声をあげている。
空に、巨大なディスプレイが現れた。
山よりも大きなそれは、誰が見ても正面に見えるという特別仕様。
そこにはこのゲームのラスボスである、一人の少女が映し出されている。
『吾輩の名はアルディエル・ゴールドライト! 破滅と絶望から生まれた魔神の王である!』
映像越しだというのに、とてつもない迫力が画面から放たれる。
NPC達は恐れおののき、プレイヤー達は興奮する。
「あれが噂のラスボス、アルディエルちゃんか! 可愛い!」
「腹! 魔王少女の腹!」
「おお、白髪褐色ロリとは有難い。ロリから放たれた声が全身に染みわたっていくわい」
魔神王アルディエルは、このゲームのラスボスである。
その見た目は、十三歳程の、まだあどけなさの残る少女だ。
腰まである白髪をストレートに流し、頭の両側には一対の紫の角が冠のように生えている。
肌は褐色で、金の瞳と白い歯がよく映える。
服装はお腹を丸出しにしたタンクトップ状の黒くぴっちりした布と、同じく黒のショートパンツ。
その上に深紫色のマントという、露出度と中々見えないチラリズムの絶妙なバランスを誇っている。
首元に巻きつけたマントで首と顎の辺りまでが埋まっており、アルディエルのロリロリしさを更に増大させているのもポイントだ。
忘れてはいけないのが足元で、紫のニーハイソックスに黒のロングブーツを履いている。
ショートパンツとソックスの間はまさしく絶対領域。
視線が吸い込まれて離れない、魔神王の支配する絶対的空間だ。
そんな見た目であるからして、プレイヤー達からの人気は高い。
事前にビジュアルは公開されていた為、今回のイベント登場を待ち遠しく思っていた層は歓喜の声をあげていた。
『吾輩が復活したからには残り僅かな生ですら平穏は無いと思え! 混沌と絶望が押し寄せ、貴様らゴミ共は瞬く間に殲滅されるのである!』
「あー、偉そうな幼女、いい」
「殲滅されたい」
「画面から匂いとか出てないかな!? 嗅ぎたい!」
「スクショ連打ああああ! 唸れ! 俺の脳内一眼レフぅぅぅぅううぅぅぅぅう!!!」
男性プレイヤー達は大興奮し、女性プレイヤーはその姿にドン引きする。
一部の女性プレイヤーもアルディエルに熱い視線を送っているが、男共に冷たい視線を送る者達が大半だった。
そんな姿を見ても、アルディエルにブレはない。
魔神王としての役割を全うすることに、全ての意識を向けている。
『ふっふっふ、吾輩が恐ろしいようだな! だが、こんなものでは済まさないのである!』
カメラが引きになり、そこにはアルディエルと対峙する五人のプレイヤーがいた。
怪しい魔方陣の上に立つ彼らは、逃げる事も出来ずにただ呆然としている。
そう、彼らこそがβテスターの特典である輝石ガチャでS賞≪地獄への招待状≫を引き当てた五人である。
『吾輩の力を見せつけてやる為に、こやつらは終焉の狼煙となってもらう!』
アルディエルが正面に立つ五人のプレイヤー達へ右手を向ける。
すると、黒と金の光が掌へ収束していく。
それは数秒ほどで絶望の球体と化した。
『≪終焉導く金の極光≫!!』
放たれた光球はプレイヤー達の内一人に着弾し、破裂した。
チュドーン!
凄まじい光の奔流はドーム状に膨れ上がり、荒れ狂い、遂には画面に映る光景すらも光に呑みこんだ。
『わーはっはっは! 見たか吾輩の力を! まずは我が魔力で生み出した尖兵を中央都市スターレへと差し向ける。せいぜい楽に死ねることを祈っておくのだな! わーっはっはっは!』
金の光しか映さなくなった画面からは、アルディエルの高笑いだけが響き渡る。
その画面が消えると同時、空を覆っていた雲が降り注ぎ、魔族として姿を現した。
復活した魔神王の手により、始まりの首都スターレは壊滅的な被害を被った。
ケイオスプライドオンラインのメインストーリーが幕を開けた。
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