漫才 走れメロス
ツッコミ「どうもーよろしくおねがいします」
ボケ「……メロスは激怒した」
ツッコミ「はい?」
ボケ「メロスは激怒した」
ツッコミ「え。なに、突然」
ボケ「いや、走れメロスってあるじゃん」
ツッコミ「ああ、あるね。昔、国語の授業でやりました」
ボケ「そう、授業でやったよね。どんな話だったかなって思い出してたの」
ツッコミ「ああ、走れメロスの冒頭だったのね。僕は理系だったからあんまり覚えてないな。思い出せた?」
ボケ「うん」
ツッコミ「どんなだったっけ?」
ボケ「メロスは激怒した」
ツッコミ「うんうん」
ボケ「冷蔵庫を開けたら、あるはずのプリンがなかったからだ」
ツッコミ「え?」
ボケ「ひとつ残っているはずのプリンが見当たらないのだ」
ツッコミ「ちょっと待って……プリン?」
ボケ「食べようと思ってたプリンがなくなったら怒るでしょ」
ツッコミ「いや、まあ、そりゃ怒るかもだけど……メロスだよ?冷蔵庫?」
ボケ「冷蔵庫がないと溶けちゃうよ?」
ツッコミ「そうだけど……え?メロスにプリン出てきた?」
ボケ「メロスは激怒した」
ツッコミ「無視か……」
ボケ「『オカン!俺のプリン食べたやろ!』」
ツッコミ「え、何?関西弁?」
ボケ「『食べたけど?どないしたん?』『どないしたんちゃうわ。楽しみにしてたプリンやぞ!』」
ツッコミ「なんか小芝居始まった?」
ボケ「『そらゴメンなぁ』『ゴメンで済むか!』『うるさい子やな。ほんならお母ちゃんが買うてきたるさかい、ちょっと待ち』『買うてくるて、飛行機で北海道行って買い付けてきたプリンやぞ。スーパーのプリンとは違うねんで』」
ツッコミ「みみっちいことを言うメロスだな」
ボケ「『ああ、うるさいな。プリンなんてどこで買っても一緒やろ?』『一緒なことあるかい!職人さんが材料を贅沢に使って一つずつ作る、一日20個の限定品やぞ』『そんなん、冷蔵庫にただ入れとく方が悪いんちゃうの?』」
ツッコミ「おーい……なんか無視して話が流れてくけれど、こんなの文豪の作品じゃないよね」
ボケ「『いや、勝手に食う方が悪いやろ。大体、豪華な見た目が違うやん』『知らんがな』『ああ、もう。今日はやる気なくした。出かけるつもりやったけど、もうアカンわ』『あんた、そないなこと言うて、また、職安行くのサボる気やろ?』」
ツッコミ「え?メロス無職なの?仕事には就いてなかったっけ?」
ボケ「『うるさい。また、と違うわ。いつも行ってるわ』『そないなこと言って、いつも部屋に引きこもってるやんか』」
ツッコミ「いや、飛行機乗ってプリン買いに行ったよね。うわ~引くわ」
ボケ「『だいたい、あんたお金どうしたん?小遣いじゃ足りひんよね』」
ツッコミ「そうだよ。なんか悪い事してるんじゃないの?」
ボケ「『自分で稼いでるわ!落語チップスの付録のカードがネットで売れてん』」
ツッコミ「カード付いたプロ野球チップスみたいなやつ?」
ボケ「『いくらで?』『談志師匠のほら吹き二代と柳昇師匠の南極探検のセットのやつが十五万』」
ツッコミ「高っ!っていうか、なにそのカード。レアだけども、これ分かる人いるの?」
ボケ「『あんた、そないな事ばかりやってないで真面目に働きなさい!お父ちゃんもわたしも、もうすぐ年金暮らしやねんから、ちゃんと働いてくれな困んねん』『うるさい!どうせハローワーク行っても仕事なんてあれへん』」
ツッコミ「うわ、メロス酷いな。仕事する気ないじゃん」
ボケ「『あんたのやる気がないからやろ。そないなこと言うんやったら小遣いなしやで』『なんでや?そんなにワシのこと邪魔やったら出てったる!』」
ツッコミ「なんかもう、絶対に違うよね。教科書にこんなの載ってたらPTAが黙ってないよ?太宰先生に怒られるよ?」
ボケ「路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った」
ツッコミ「あ、メロスが走った。かっこよく言ってるけど、これただの家出だよね」
ボケ「最後の死力を尽くしてメロスは走った」
ツッコミ「仕事を探すのに死力を尽くすべきだと思うよ」
ボケ「メロスは着の身着のまま走った。自宅警備員という職業をなげうって」
ツッコミ「うん、それは職業じゃないね」
ボケ「『セリヌンティウス!』」
ツッコミ「あ、新しい登場人物だ。なんか、聞いた名前だな……」
ボケ「メロスの親友だよ」
ツッコミ「ああ、そんな人いた。メロスを待ってる人だよね。代わりに捕まってるんだっけ?」
ボケ「ネット環境の整った自室に後ろ髪を引かれながらも、セリヌンティウスの元へ向かって走り続けた」
ツッコミ「メロス最低だな。でも、そうだ、確かセリヌンテイウスの待つ王宮だか街だかへ向かって走ったんだったね」
ボケ「メロスはついにセリヌンティウスの元に辿り着いた」
ツッコミ「おお、たしか感動の場面だ!」
ボケ「『セリヌンティウス!しばらく泊めてくれ』」
ツッコミ「居候すんのかよ!もういいよ」
二人「ありがとうございました」




