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36.豊橋の吸血鬼⑤

加藤刑事が俺の羽交い締めを解き、品定めするかのように佐目野をジッと見つめる。

「君が、佐目野宝次郎君か」


「へぇ。私のことを知っているような口ぶりですね」


「……詳しい話を聞きたいんだが、いいか?」


「それは、任意ですよね?」

佐目野が鼻で笑いながら答える。


「いや、任意同行ですらない。文字通り、事件についての話を伺いたいだけだ」


思わぬ返答に佐目野は目を丸くしたが、またいつもの不敵な笑みに戻る。


「そうですか。ここでお話するだけですか。いやー残念だなー。取調室でカツ丼を食べるの夢だったんですけどねー」


「……じゃ、ちょっとこっち来てもらおうか?」


佐目野の冗談を無視する加藤刑事。そして、無視されたことをそれまた無視して大人しくついてくる佐目野。

抵抗すると思っていただけに、その行動は意外だった。


「何も容疑者として声をかけた訳じゃない。君の意見を聞かせて欲しいだけだ……霊能力者の君の意見を」


突然、加藤刑事が妙なことを言い出したがそれを聞いた佐目野は急に真顔になり、ピクリと眉をひそめる。


「なに、そう硬くなるな。君のことは刑事ん中で結構有名になってるからな」


佐目野は愛知県警を訴えた裏切り者だからこいつのことを知っている人物も少なくないだろう。

だが、警察の中で有名ではなく、刑事の中で有名ってのはどういうことだ?


「有名……ね。その話は私自身聞いたことありますが、お世辞か嫌味で言われてるもんだとばかり思ってましたよ」


「今回()色々と嗅ぎ回っているそうじゃないか」


「やはり、バレてましたか。これが結構悩みどころでしてね。偽名で聞き込みすりゃ警戒されるし、有名人パワー使って聞き込みすりゃ後で警察にバレるし……」


「有名人パワー?」

思わず素っ頓狂な声が出る。(愛知県警内を除いて)こいつのどこが有名人なんだよ?


「なんだ、同期の癖に知らないのか?ほら、たまにテレビにも出てるだろ?彼が霊能力者『S』だ」


は?……こいつが?何でそんなわけわかんねぇことしてんだ?


「刑事さん、『S』の正体は[S]ecretなんですよ?むやみやたらとバラして欲しくないですね」


佐目野がヘラヘラと笑う。それに釣られてか、加藤刑事も笑って答える。


「素顔のまま、『S』の名を語って聞き込みをしてたのは一体どこのどいつだ?有名人パワーばりばり使ってんじゃないか」


なるほど。大体事情が飲み込めてきた。

何故刑事課の中で佐目野の名が知れ渡っているのか。こいつはこれまでにも何度か霊能力(推理)を使って刑事課に情報提供してきた実績があるというわけか。

……何で霊能力者を語ってるのかはサッパリわかんねぇが。


「加藤刑事、こいつは一体何を聞いて回ってたんですか?」


「つれねぇな。そんなことくらい私に直接聞いてこいよ」


こいつには聞こえないように小声で話したつもりだったが、不覚にも聞こえてしまったらしい……不快だからいい加減上から目線でものを語るのはやめろ。


「まぁ、いい。私はお前と違って()()だから教えてやるよ。ここら辺で最近、動物の殺傷事件が起きてないか探ってたのさ」


前半の台詞はおいといて、とりあえず返答をする。

「あぁ。そういや回覧板でそういうのが回ってきたな。刺殺された猫が今月になって3匹発見されたから、放し飼いには注意しましょうって」


佐目野が、右手で額を覆いながら小さくため息を吐く。こちらを馬鹿にするのが目的というよりは、素で呆れ返っているように感じる……それが余計に腹だたしい。


俺が黙ったままでいると、加藤刑事が助け船を出す。

「トチ狂った殺人犯ってのは、小さい獲物から徐々に対象を大きくしていくものさ……君はそれを確かめにここに来てたってことだろ?」


「流石刑事さん。よくご存知で。ですが、そのことを知っていたのならもっとこの辺りを警戒しておくべきでしたね……せっかく、私も()()()を出しておいたというのに」


加藤刑事が眉をひそめて思案する。

ややあって、「あっ」と小さく声を上げた。


「『近いうち、再び惨劇が起こることになる』っていう脅迫文、アレを出したのは君か!」


「このような殺人を犯す者は、事件を起こして『はい、満足!』とはなりません……まるで連続ドラマを見ているがごとく。次の物語を見ることへの執念を燃やします。そこに終わりはない。終わらせるためには、あなた方が放送を打ち切るしかないんですよ」


最初のシナリオ構成:

事件前に周辺をうろついていた佐目野に不信感を抱く阿久田→何をしていたのか問い詰める→佐目野、阿久田を滅茶苦茶煽る→阿久田、佐目野を殴る(佐目野の狙い通り)→「阿久田に殴られた」と上司にチクる→阿久田謹慎。ブチギレ→佐目野を殴った際に付着した髪の毛や、飛んだボタンを現場に置く→佐目野(誤認)逮捕→取り調べ編


こんな風に考えてましたが、明らかに無理あるのでやめて置きました。

何で殴っただけで髪の毛抜けて、ボタンも飛ぶのか。現場検証終わったはずなのになんで今更新しい物証出てくるのか。何でそれが犯人(仮)の遺留品だと思えたのか。何で前回の事件と同一犯である可能性高いのに、DNA検査してないのか(したとしたら違うことに疑問持たなかったのか)、何で佐目野がホイホイと任意同行に応じるのか等。

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