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32.豊橋の吸血鬼①

全7話。

舞台は愛知県豊橋市。

主人公:阿久田 良輔 26歳。

一軒家に妻と2人+1トイプードルで暮らしている。

「うわぁーーーツ!!」


一仕事終え、リラックスしながら晩飯を食べていると、突然どこからか男の叫び声が聞こえてきた。

[どこからか]とは言ったものの、男の声がウチまでハッキリと聞こえる範囲内であるからそう遠くではないだろう。


「何かしら?今の……」

妻の菜子(さいこ)が心配そうに聞いてくる。


「さぁな。何事もなければいいんだが……とにかく行ってみる」


大人の怒鳴り声や、子どもの叫び声ならさして気にもとめない。そんなことはしょっちゅうある。

だが、大人の叫び声なんて聞いたことがない。

「何事もなければいい」と口は出したものの、何事もないのに外聞も気にせず、夜中に叫び声を上げる大人がどこにいるというのか。


グラスに残った日本酒をグイと飲みほし、玄関を飛び出す。

何も俺は、野次馬根性で現場を見に行くわけではない。

俺は警察官だ。何か問題が発生したのであれば、勤務時間であろうがなかろうが現場に駆け付けなければならない……そう何度も教えられてきた。


自転車にまたがり、声の聞こえた東側をひたすら走る。非常事態だ。もしも、同僚が既に現場に駆け付けていたとしても、先ほどまで日本酒を嗜んでいたことには目をつむっていただきたい。


現場の特定に苦労するかと思いきや、そんなことはなかった。ウチから800mほどのところにある家の前で20~30人ほどの人だかりができていた。一体何が起きたんだ?

よく見ると、人だかりの中心に30代と思しき男性が裸足のまま血まみれになって泣きわめいている。


「警察です!通してください!」


俺は野次馬を掻き分け、男のもとへと向かう。

最初は、こいつが何かやらかしたのかと思ったのだがどうもそうではないらしい。

あの叫び声は恐らくこの男のもの。だとすれば、自分で何か問題を起こしておきながら自分で叫び声を上げるような妙な真似はしないだろう。


「何があったんですか!?」


「妻が……ウチに帰ってきたら妻が!」


男は俺の胸倉を掴み、嗚咽する。

具体的に何が起きたのか聞いてみても、ただひたすら泣き叫ぶだけ。

パニックを起こしてまともな返答は帰って来ない。

どうしたものかと途方に暮れていると、目の前にある一軒家の玄関が開けっ放しになっていることに気づく。これがこの男の家というわけか……


このままではらちが明かない。俺は家の中へと突入することにした。

本当は、そんな勝手なことをしてはいけないのだが「私は部署が違いますから、今警察に電話しますね」なんて悠長なことをしている場合じゃないだろう。男は苛立ちを覚えて余計ヒステリックになるだろうし、家の中にまだ犯人が立てこもっている可能性だってある。


家の中に入ってすぐ。俺は異変に気付いた。


何だ……これ?


警察官になって4年。今は交通安全課に勤務している。当然ながら殺人事件なんて扱ったことは一度もない。

そんな俺が一目()()()()()分かる。

臭いでわかる……堪らず右手で鼻を押さえつける。

生臭い鉄のニオイとアンモニア臭。この家の中が血で充満しているということが、この家で凄惨な事件が起きたということが容易に想像できた。


リビングからは明かりが漏れている。先ほどまで誰かそこにいたということだ。

警戒しながら入ったつもりだったが、警戒が足らなかった。俺はすぐさま、鼻を押さえていた右手を口元に移動させる。

ついさっきまで呑気に食事をとっていたことを激しく後悔する。

その場から目を逸らし、必死に口の中まで戻ってきた胃の内容物を飲み込んだ。


靴を履くことも忘れ、慌てて家の中を飛び出す。

犯人が立てこもっていようがいまいが、そんなことはもうどうでもいい。

あのままあの場所に留まり続けていたら、俺の気がもたない……

何拍かおいて、ある程度落ち着きを取り戻した俺は警察に連絡をした。

救急車が必要でないことは一目でわかった。


リビングの床には……腹を十字に引き裂かれて臓物を辺り一面に飛び散らしている女性の姿があった。


シリーズ管理って、複数の作品を1つにするものであって1つの作品を複数には出来ないんですね(多分ん)。分かりにくくなると思いますが、章タイトルなくして今までのサブタイトルも変更します。ご了承ください。

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