22.文化祭に潜む霊:被害者側
とある男子高校生の視点
今日から3日間、高校での文化祭が始まる。
俺のクラスの出し物はお化け屋敷。
高校2年にもなって何がお化け屋敷だよ と馬鹿にしてたけどその出来栄えは贔屓目無しに凄かった。
クラスの中にメイク志望の奴や、小道具作りが趣味の奴がいたからだ。
「準備のほとんどを女子がやったんだから、本番のお化け役、受付は男子が中心にやってよ」 と言われたが、「お化けは女性と相場が決まっているし、受付も女子の方が向いてる」という謎理論を押し付ける奴がいて結局本番も全て女子が引き受けることになった。
勿論、中には手伝うという男子もいたが「もういい。女子だけでやるから」と突っぱねられていた。
女子もヤケになっている。
内心、「こいつら小学生かよ」 と思ったが何もしない俺が言える立場ではない。普段は別にここまで男女の仲が悪いわけじゃないんだがな……
俺は別段やることもなく、屋台巡りして食いまくろうと思ったんだがどこもかしこも似たようなものばかり。夏だからってかき氷しかださねぇのは流石に芸がなさすぎるぜ。
部活仲間のクラスいって茶化しにも行ったけど皆んな何だかんだで忙しそうだった。
……暇だ。体育館で催し物もあるみたいだが、それまでまだ時間がある。
何か面白いことでも起きねぇかな。
そう思っていた矢先、顔面血だらけの女が物凄い勢いで廊下を走っているのが見えた!
あ、よく見るとクラスの女子じゃねぇか。
「おい、そんなに慌ててどうしたんだよ?」
「何か急に皆んな倒れだしちゃって……」
この方向、どうやら保健室に行くようだ。
俺はというと、自分のクラスへと向かっていた。
一体何があったんだ?
そこで見たのは凄まじい光景。
お化け屋敷の入り口付近で、クラスの女子やお客さんの計13人が過呼吸やパニック起こして大騒ぎ。
「おい、どうしたんだよ?」
「分かんない!けど皆んな、本物のお化けを見たとか何とかって言って……」
「はぁ?そんなのいるわけねぇだろ」
「じゃあ!この状況はどう説明するのよ!」
確かに異様だ。真夏だというのに全員唇を真っ青にし、「幽霊」「本物」と震えながら繰り返し呟いている。
呆然としていると、さっき廊下ですれ違った女子が息を切らせながらスーツ姿の20代の男を連れてきていた。
「Sさん、連れてきたよ」
『S』……そういえば、ここのOBとかで文化祭のゲストに来ていたんだったな。
ってかお前、保健の先生連れてきたんじゃねぇのかよ。
「倒れているのはここにいる人で全員?」
「はい、そうです」
「わかった。とりあえず、ビニール袋持ってきて。3.4……5枚」
ビニール袋を受け取ったSは、過呼吸を起こしている5人の口元にそれをあてがった。
「さてと、じゃあ今からその人達連れて体育館に来てもらおうかな?」
「体育館……ですか?」
「そう。そこにお祓いの道具もあるし、なるべく人目につかない、広い場所が必要だからね」
野次馬根性でここまで来た俺だったが、流石にここで何もしないわけにはいかない。フラフラになっている女子に肩を貸し、体育館まで連れて行った。
Sはというと、ロープで巨大な五芒星を作り、その端々に水の入ったペットボトル、木片、火を付けたロウソク、土、金粉を置いていた。
「では、体調を崩された方々はこの中心に集まってください。座ってもらっても構いません」
全員が座り終わり、しばらくすると
「全員目を閉じてください」
と言い、懐から塩を取り出した。
「破ぁ!!」と叫びながら中央にいる人々に塩を投げ、「これでもう安心ですよ」と一言告げる。
すると、霊に取り憑かれていた奴らの震えは治り、その表情は嘘のようにスッキリしていた。
「あ、ありがとうございます!」
「何、礼には及びませんよ。霊だけに」
霊能力者はスゴイ、つまらない駄洒落を聞きながら俺はそう思った。
霊能力者のSさん




