18.片田舎の災いの裏で…④
「あれは、秋田さんが亡くなった頃でしょうか。
私の家に吉田という男がやってきまして、
『ここらで相次いで不幸な出来事が続いているのは、先祖の霊が怒っているからだ』と。
そりゃ、最初は疑問に思いました。相次ぐも何も秋田さん1人が亡くなっただけだし、それに何故そこで先祖の霊が出てくるのか、と。
そしたら、
『亡くなったのはまだ1人ですが、霊気に当てられ既に3人が入院している。先祖の霊は、都市開発を止めなかったあなた方に恨みを持っている』
そう言われました。
言われてみれば、その頃頻繁に救急車のサイレンの音が聞こえていましたし、そういうことが起きたのも都市開発が進んでからでした。
私が悩んでいると、
『もし、このまま放っておけばこの先あなたにも不幸なことが起こる。それを防ぐにはお祓いをするしかない。良い人を紹介する』
そうは言われましても、まだ半信半疑なわけですよ。
それに、値段を聞いたら100万円すると言われまして。これは怪しい!と思って うちにはそんな金ありませんと突っぱねたんです。
そうしたら……
『でしたら、お試しにこのお守りをお譲りします。ただ、これはあくまでも一時凌ぎに過ぎず、効果は時間とともに薄れます』
怪しい詐欺だと思っていましたが、無料でお守りを渡すと言うもんですから……
詐欺だろうが、そうでなかろうが無料ならば と受け取ったんです。
それから、半月と経たないうちに2人が亡くなりまして。背筋が凍りましたよ。
こりゃ本当に先祖の霊の祟りによるものじゃないか、このままじゃ私たちも危ない、と。そう思っていた矢先、再び吉田がやってきたんです。
『このままでは本当に危ないですよ。あなた方が救われるには、ご祈祷してもらうしかないです。私はあなたを救いたいんです』
……[わかりました]、 そう言う他ありませんでした。
それから吉田が何者かに電話をかけるとしばらくして、祈祷師という人が来ました。
30分くらいでしょうか?祈祷師の人は私たちの後ろの方を見ながら
『この人たちは関係ない』
『ここから出て行きなさい』
そのようなことを只ひたすらに繰り返し口にしていました。 それが終わると、[もう安心ですよ]そう言って帰っていきました。
それで私たちも安心しました。でも、それから程なくして妻は例の一酸化炭素中毒で病院に運ばれる羽目になりまして……幸い、一命はとりとめましたが。
人の不幸を利用してこのようなことをするなんて……ほんと、許せませんよ」
佐藤さんの話が一通り終わり、手津田さんが質問をする。
「失礼ですが、被害額はいくらですか?」
「妻と合わせて150万とられました」
「犯行に加わったのは吉田と祈祷師の2人だけですか?」
今度は私が質問する。手津田さんからは詐欺組織だと聞いていたのだが。
「えーっと……そうですね、その他に祈祷師を車で運んだ人がいましたよ」
「手津田さん、詐欺組織とやらはこの3人だけですか?」
それを組織と呼ぶには少々大袈裟ではないですか?
「分かっているだけでも、ね」
「それ以上いるかも知れない……と」
手津田さんは、佐藤さんの方を向き直して再度質問を開始する。
「祈祷師の人はどんな服装で来ましたか?」
「神主なんかがよくするような、白装束でした」
霊能力者の恰好ってやっぱそういうもんにすべきなのか?……見当しておくか
「被害に遭われたのは佐藤さんの他にもいらっしゃるんですか?」
「はい。私が知る限りでも3人はいますね」
「詐欺を行った人たちの連絡先はわかりますか?」
「いえ、わかりません」
分からない?今度は私が質問をする。
「とすると、祈祷のお願いをした時は、吉田という男がたまたまやってきたんですか?佐藤さんから連絡をとったわけではなく?」
「ええ、そうですね」
……何か引っかかるな。
私はおもむろに立ち上がり、店の中央付近の席
すなわち、刑事の前に立った。
「ちょっと話を聞いてもらいますよ」
海木さんの3件隣の秋田さん




