066 死神
ぅむ...
なんかすごくひどい夢を見たような...
「ッ...!?」
意識が一瞬で回復する。
同時に頭痛も走る。
すごく痛い。
今までやってきたことが全部フラッシュバックしている。
脳のキャパシティオーバー、そしてオーバーワークだ。
脳が爆発しそう。
そう思った時に吐いてしまった。
白い床に。
...?白い床...?
研究所に白い床は確かにあったが...あまりにも白すぎる。
私は目を上げた。
白い。
そういう感想しか述べられない。
少なくとも失神前にいた研究所の景色では無い。
上下左右全部白くて何も無い。
ここがどこなのか。
とにかくお兄様はどこ。さっきまで近くにいたのに。
私は歩いた。何時間そうしていたのだろう。もしかしたら数分かもしれない。
こんな何も無い空間。時間なんて感じられない。
お兄様も見つからず座り込んで考える。
どうしてこうなってしまったのか。
しかし無情にも失神前の記憶しか思い出せない。
「いや〜すまねえすまねえ。待たせたかね?」
声が聞こえた。お兄様ではない。とりあえず顔を上げる。唯一のヒントだ。
「ッきゃああああああああああ!!!!!」
目の前にいたのは骸骨。
しかもただの骸骨ではない。
黒いローブ、鎌。
そう、死の世界へと引きずり込まれるとおとぎ話にもあるままの姿で「それ」は現れた。
「...まあ、叫ばれるのも慣れっこだけどよお。やっぱり傷つくよなあ。しかもレディーに叫ばれた時なんかさらにキクぜ。」
「あなたは誰なんですか!?私は死んだんですか!?あなたに連れてこられたんですか!?お兄様はどこなんですか!?」
「久々に元気なヤツに会ったもんだ。とにかく落ち着けや。とって食いはしねえから。」
「お前さんもあのクチか。俺達死神が死の世界へと連れてきたんだと。そう思っているんだな?」
「まあ信用するかしないかは置いといて、俺達は神さんの使いなだけさ。」
「普通はすぐに閻魔さんの裁判で白黒つけられるんだが、どうもあんたはその判断が難しかったようだ。」
「ちなみに多分、お前さんは死んでない。戻ったら環境は若干変わるだろうけどな。」
私はまだ死んでいない?神様、閻魔様?環境が変わる?
「まあ、楽にしていな。お前さんが考えていることはわかるから。黙っても会話はできるぜ。」
「とにかくお前さんの生前の行いとアカシックレコードを神さんから預かってるから、いまから読ませてもらうぜ。」
生前の行い?アカシックレコード?考えがわかる?
私はどうなってしまったの?お兄さんは?
「まあまあ、そんなに慌てなさんな。」
「とにかくこの資料...っていうか辞典レベルだな、これは。もしかして神さんも閻魔さんもこれを読むのがめんどくさくて俺に押し付けたのか?はぁ〜...」
「あの...」
「すまねえな。少し黙っていてくれや。多分お前さんは生きて帰れる。さっきから考えているお兄さんはわからんが。もしかしたら他の死神が担当に行っているかもな。」
死神さんはそう言い放つと手元にある分厚い書類を読み漁るのに集中しだした。
とにかく言われた通り取って食われることはなさそうだ。
なにやら私の記録を確認すると言っていたので結果が出るまで待とう。むしろ私に残されている道はこれしかない。
...どれくらい時間が経っただろう。死神さんは相も変わらず資料を読むのに没頭している。
「なあ。」
「はっはい!!」
「おっと。すまねえな。びっくりさせちまったか。」
「結構善行を行なっていたみたいだな。これなら天国へ確実に行けるだろう。お兄さんはわからんが。」
「そんな...!?お兄様がいなければ---
「まあまあ。黙って聞けや。」
そう言うと死神さんはローブから煙草を取り出し火を付ける。
煙が頭蓋骨の穴という穴から漏れ出ていく。
思わず咳き込んでしまう。
煙草という存在は職業上よく知っているが、私はこの匂いがどうしても苦手です。
「すまねえな。こういうときくらいしか時間取れねえし、しかもプライベート空間となると今しか吸えないと思ってな。気分悪かったらすぐに消すぜ?」
「いえ、これからご説明を頂く身です。大丈夫です。」
「そいつはありがてえ。神さんに隠れてモクやるとすんげえ怒られるからなあ。この仕事も中々楽じゃないぜ。はは。」
「んで、まずはさっきも言った通り生前の行いは大いに良し。十中八九天国行きだ。」
「しかし、このアカシックレコード。これが問題みたいだな。こりゃめんどくさくて神さんも閻魔さんも投げ出す訳だわな。」
「アカシック、レコード?」
「ああ、なんというか脳みそや心に無い、身体の記憶ってやつだな。」
「先ほどの通り生前の行いは良し、だがコレによるとどうやら禁忌を犯したみたいだな。」
「禁忌...?私はそんなに悪いことを...?」
「ああ。コレが本人の記憶にあったら逆に地獄へと真っ逆さまだな。そういう意味ではラッキーだ。」
「お前さんがやってしまったのは...《蘇生》だ。」
「蘇生...?そのような実験は植物にしか」
「そのようだな。」
食い気味に話を挟んでくる。とにかく要件を伝えるから聞けということだろう。
「すまんな。モク吸えないばかりでストレスでよ。テレパシーみたいなもので通じるからその辺は安心してくれ。とにかく淡々と説明するぜ。」
「なにせショッキングな内容テンコモリだからよ。」




