058 下戸
アルヴァルトの中心部。
国というよりは、村といったほうが伝わりやすい。
舗装された道などなく、住居も自然のものばかりで作られているようだった。
「ん?あんたたちは...どちらさんかね?新しくこっちへ移住してきたのかね?」
「わあ、外からわざわざお疲れさま!!アルヴァルトへようこそ!」
「宴!!宴じゃ!!」
アルヴァルトを訪れただけでこの歓迎である。
あれよあれよと宴の準備が整っていく。
忙しくアルヴァルトの人々が行きかう中で。
問題のあの子を見つけた。
ほかの国民とは打って変わってテンションがかなり低い。
その子は家へと入ってしまった。
「どうしたの?」
「いえ。今あの家に入っていった...」
「ああ。あの子。」
「あの子もどうしてかしらね。」
「というと?」
「いや、昔はあんなにくらーい子じゃなかったんだけど。」
「お兄さんが行方不明になってから途端に暗くなってしまってね。」
「あの子、お兄ちゃんっ子だったからね。気持ちはわかるんだけど。」
「こちらとしては、もうちょっと頼ってほしいかなって。いつでも力になれるんだから。」
「本人の問題だからどうしようもないんだけどね。」
「あの子の名前は?」
「あら。あの子にホの字かい?」
「い、いえ。そんなわけじゃ。」
「まあまあ。あの子はラミナ。ちなみにお兄さんの名前はラーヘイ。そっけない態度を取られるかもだけど、仲良くしてやってね。」
「さあ!!宴を始めるぞ!!!」
こんな短い期間で宴に参加することになろうとは。
もう皆飲めや飲めやの大騒ぎ。
リリとローズは言うまでもない。
アルヴァルト産の葡萄酒やリキュール、はたまたヘビ酒やらテーブルに並んでおり、もう目も当てられない状態になった。
それにしてもヘビ酒って。よくそんなわからないものを躊躇せず飲めるものだ。
「お兄ちゃんも飲めや!!」
「いや、俺は...」
「なんだあ?わしの酒が飲めないってか?」
「わしの若いころは...---
と、おじさんの長話に付き合っていたのだが。
結局押し切られた。
葡萄酒を一口。
おいしい。
舌が軽く焼けるような感覚があったが、それ以上に葡萄の香りや深いコクが口の中で堪能できる。
こんなにおいしい飲み物があったのか。
葡萄酒マニアがいるのにも納得がいった。
これを趣味にできるのなら、人生にハリができるだろう。
しかし、次の瞬間に俺の意識は無くなった。
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夢を見た。
それは強大な敵に立ち向かう夢。
以前にも見たような夢だが。
今回は違う。
俺は何度も死んでいたのだ。
死んでは生き返り、立ち向かう。
しかし、生前の記憶はまた死ぬ直前に蘇るため、ずっと同じ行動を繰り返している。
無限ループ。
何度やっても死ぬだけの運命。
そんな夢。
「っ!?いって...」
起きる。同時に頭痛が走る。
「ようやく起きたのね。大丈夫?だいぶうなされてたけど。」
「何か嫌な夢をみたような...」
「あなた、下戸なのね。まさか葡萄酒一口でぶっ倒れるなんて。」
「ぶっ倒れただぁ?おい、ローズ俺の記憶じゃあいつ、リリに...」
「うん。」
「チャップ。ローズ。」
「...転がすわよ?」
ローズはチャップを抱きしめ、なにやらおびえた様子でブンブン首を横に振っている。
「え?何?リリ...さん?俺は一体何を---
「達人。ナニモナカッタノヨ?」
「はい。」
一体俺は何をしでかしたんだ。
「タツト、タツト。」
ローズが俺に耳打ちをする。
「生きているのが奇跡。」
本当に何をしでかしたんだ。俺は。
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「雪花!!!雪花!!!ここにいたのか!?」
「はぁ?たうと、あんたにゃに言って...うぉわぁっ!!!」
俺は雪花に抱きついた。やっと、やっと会えたんだ!!!
「ちょっと、達人!!!苦しい!!!ってか馴れ馴れしいわよ!!!!やめなさい!!!」
「もう離さない!!!せっかくお前と巡り会えたんだ!!!」
「ちょっと///達人...苦しいってば...」
リリは頬を赤らめている。
アルヴァルトの国民達はお酒のせいだと願っているが...
「あらあら、あっちはすごく盛り上がってるわね〜...お熱いこと...」
「離せ〜!!!達人!!!!離しなさいよ!!!んむっ...ん〜!!!」
「若いっていいわねぇ...」
ドゴーン...!!
「あ〜あ、あれじゃ雷が落ちても仕方ないか...」




