057 アルヴァルト入国
「達人様...ありがとうございます。」
「これは私の研究に必要なものでして...」
目の前に現れたのは一人の少女。
やせ細っていて、髪はボサボサ、手入れせずにそのまま伸ばしたという感じだ。
それに何よりも顔色が悪い。
妙に肌白く、目の周りが真っ黒だ。
そんな事よりも。
「なんで俺の---
「へへへ...それでは。ありがとうございました。」
そそくさと彼女は行ってしまった。
「タツト、お前ひょっとしなくても有名人なんじゃねーか?」
チャップはそういうが、冗談にしても正直笑えない。
「すごーく、嫌な予感がする。」
「奇遇ね。私もちょうどそんな事を思っていたところ。」
ほどなくして、俺達はアルヴァルトへと到着した。
「はぁーやっと着いた。」
「本当に疲れたな!!」
「その割には元気そうだけど?」
「そもそもチャップは肉体的疲労が無い。」
「こういうのは気分なんだよ。みんなと同じ気持ちを共有してだな---
「おー。コーラの売店だ。みんな飲もうぜ。」
「チャップも飲む?」
「すまなかった。」
アルヴァルトについてから、本当に喉がカラカラだ。
まさかあんな距離を歩くことになろうとは。
「はーい!!いらっしゃい!!」
コーラ屋台にいたのは、若い女性だった。
いたるところにあった、アルヴァルトの看板のように元気いっぱいだ。
「おや~?もしかして旅人さん?」
「ここらじゃ見かけない格好をしているわね。それ、なにでできてるの?」
「え?え~と、これは...鉄...かな?」
「おお~。こんな鉄なんて久々に見たよ~。ほ~これが~。」
なんて言いながら、鎧を指で突いてくる。
と思ったら、ハッとした表情をする。
「ごめんごめん!!コーラを飲みたいのかな?」
「はい、じゃあ、お兄さんから!!男の子だし、おまけしといたよ!!」
なんていいつつ、コーラを手渡された。
木のグラスになみなみと注がれている。
「飲み終わったらグラスは返却してねー。」
そんな台詞を聞く前に口をつける。
喉が限界だった。
しかし、すぐに後悔することになる。
襲ってきたのは。渋い味。
反射的に顔が渋くなる。
コーラと聞くと、甘く、爽快な炭酸飲料をイメージするだろう。
これは、甘くない。
ついでに炭酸も無い。
もっと言うと、ぬるい。
「それじゃ、お次は...」
「ごめん。私たちは他のがいいわ。水とか。」
「ええ~?水もあるけど、せっかくだし名物コーラを...」
「いや、水でお願いするわ。」
リリたちは危機回避に成功した。
アルヴァルトは自然の国。
自然と共存するというのが国のモットーであり、そこに住む国民や精霊、はたまた植物までもがコミュニケーションを取り、生活をしているという。
国とはいえ、王はいない。
精霊が管理をしているため、モンスター被害や動物被害は全くなく、争いも起こらないという。
すごく平和でいい所なのに、訪問者が全く来ないため、最近では移住者の増加を願い、迎え入れることを大切にしているとか。
そして、ルルやリリも何も知らない程、情報の露出が無いこと。
所在地がわかりにくいこともそうだが、この国では郵便や通信などを全く利用しない。
この国の住民の身体能力が非常に高く、木々を飛び回り、口頭もしくは手紙で伝達するためだ。
漏えいの心配も無く、確実に伝えられるとのことだが、国外に伝えることができないため、結果的に内輪のみの手段でしかない。
そのようなことから、この国の知名度が低いのだろう。
食生活は基本菜食。
ベジタリアンといえばわかるだろうか。肉はたまにしか食べない。
国民の服装も自然のものだけで作られている。
綿から作るものはもちろん、葉っぱまで使う。
しかし、中には露出が高すぎる人もいる。
もちろん男性や女性がいるのだが、目のやり場に困るところが悩みどころだ。
自然を追求した結果らしい。
ルルの視線が怖いので極力下を見ながら歩くことにしている。
「それじゃまた機会があったらよろしく~!!」
コーラはもうこりごりだ。
後にもらった水のなんとおいしいことか。
あのコーラの後に飲んだのもあるかもしれないが、飲んだことのない味だった。
メニューに書いてあった言葉を借りて言うと、自然の名水だからおいしくて当たり前!!
そんな屋台の女の子と話した後に、国の中心部へと向かうことに。
中心部まではそんなに時間がかからなかった。




