056 迷子と謎の少女
「なぁ~タツト~ここはどこなんだよ~。」
「俺に聞かれても...なあ、リリ?」
「別に迷ったわけじゃないわよ!!地図によると...」
リリは地図をクルクル回している。
これでは着きそうにないかもしれないな。
完全に迷子だ。
アルヴァルトへの道は順調に思えたが、目的地に近づくほど緑が多くなってきて、方向感覚が無くなる。
まだ日が高いのが救いか。暮れ時ならとうに野宿の準備をするところだ。
「ちょっと貸して。」
ローズがリリから地図をひったくる。
何やら時計を見ながら、地図とにらめっこしている。
「こっち。」
そう言うと、手綱を握りしめ、馬車を操りだした。
「本当に合ってるのよね?」
「俺に聞かれても...」
「男でしょ!しっかりしてくれないと困るわよ!」
ローズが馬車を操りだして、早3時間。
まったく景色に変わりは見えてこない。
日も落ちてきた。
俺達はアルヴァルトへ近づいているのか?
ローズに任せっきりで大丈夫なのか。
「なあ、ローズ---
「着いた。」
「「「へ?」」」
目の前には、Welcome to Alwaldと書かれた木製の看板。
本当についたようだ。
看板の目の前にちゃんと魔法陣も設置してある。
「なあ、リリ---
「すごい!!どうやって分かったの!?」
ローズ曰く。
時計と日があれば、大体の方角を把握できるらしい。
方位磁石があればよかったのだが、準備不足だった。完全に俺達の落ち度だ。
時計の短針もしくは自身の影を日の出ている方向とうまく合わせると、北南の目安が出るらしい。
ローズがいなければ、完全に迷っていた。
「さあ、着いたし、さっそく登録するわよ!!」
アルヴァルトの魔法陣登録もさっさと済まされ、いざ入国。
馬車は看板の隣に設置されていた小屋へ置いてきた。
管理人もいるようで、世話もしてくれる。
しかし、他に訪問者がいないのか、馬車は俺達の他には無かった。
以前入国したニーロのように審査などもちろん必要ないので、ちょっとした違和感を覚えたのが面白かった。
それにしても本当に緑の多い国だ。
山や森そのものというのが正しい。
入口の看板を超えたあたりでも、人の住処がうかがえないほどだ。
自然と共生する国というのが正しいだろうか。
舗装された道ではなく、管理人の指示通りに少し手入れされた獣道を歩いていく。
迷子防止のためだろうか。
アルヴァルトはこちら!という看板がある程度の間隔で設けられている。
「逆に怪しく感じるわね。」
「どうしてだ?」
「もしこれが罠だったら敵の思うつぼってやつよ。」
「でも、特段見られているような感じもしないし、殺気だって感じない。大丈夫じゃないのか?」
「そうなんだけど、こうも親切だと逆に疑っちゃうわ。」
「それはお前の性格が...」
「なんですって?」
「なんでもありません。はい。」
アルヴァルトまであと100m!!
こんな看板を見かけて、俺たちはようやく休めると安堵する。
かなりの距離を歩いてきた。
こんな距離を歩くなら、馬車を使えばよかった。
そんなことを思ったとき。
「ああああ、拾ってくださいー。」
なんて、棒読みの台詞が聞こえてきた。
同時に果実、木の実が俺達の歩く道へと転がってきた。
まず親切心が働き、転がってきた物を拾う。
次に聞こえてきた言葉に耳を疑った。
「へへへ...達人様...やはりお優しい...ありがとうございます。」




