046孤独なガンマン
「クソが...」
ドチャッ
俺に喧嘩を売ったのが運の尽きだ。
俺の名は...
いや。名乗りたくない。
皆、俺の事を一匹狼のグレイブと呼んでいる。
ちょっとばかり銃の腕がいいからといって、時の人としてちょっとばかり有名になっている。
正直言って、俺が言うのもなんだが。
ガンマンの中では結構上位にいる存在ではないのかと自負している。
周りの人間が弱いから。
それ故皆俺の前で倒れていくから。
いつからだっただろうか。
物心がついたころから、このリボルバー、ホーンと一緒だった。
緊急用にデリンジャーを一丁仕込んであるが、使ったことは無い。
アイラと名付けている。パッと浮かんだ。まさか女のような名前になるとは思わなかった。
もちろんメンテナンスはどちらも怠ったことがない。
ちょっとでも怠るとそりゃもう。機嫌を損ねるとかそういったものじゃない。
まあ、置いといて。
改めて名乗らせていただこう。
俺の名前はグレイブ。
残念ながら、本名ではない。
皆そう呼ぶので、俺の名前がこれで定着してしまった。
なぜ名乗らないかって?
名乗るようなものじゃない。というわけでもなく。
俺にも親が付けてくれた...名前がある。クソッタレが。
本当の、理由は、ちょっとばかり...
人間不信になってしまってだな。
まあ、あれだ。
パーティの人間に裏切られたのが大きなショックとなってしまったからだ。
その時から俺は凄腕ガンマンとして活躍をさせてもらっていたわけだが。
どうも商売がうまくいかなくてな。
何事も右肩上がりとはいかないもんだ。
そんな俺の日常はというと。
ちょっとばかりの小悪党を始末していく日常。
おいおい、その日暮らしとかいうんじゃない。
意外と賞金首もおいしい時があるんだ。
しかし、この世界は争いが無く、とんでもなく平和だ。
随分昔に異星人が侵略してきたらしいが、戦雄アーデが活躍したとか。
その強さは平和ボケをしていた国から生まれたとはとても考えにくいような強さだったらしい。
一回の敗戦により、信用が落ち、処刑されたせいで、まったく情報が無いのが不憫というか。
でも、それは俺の憧れだった。
英雄になるだけじゃない。
例え名が歴史に残らないとしても、世界を変えるような偉業を成し遂げる。
日々争いの中に身を置いている俺は、近々激しい戦闘が起きることをなんとなく予想していた。
そして。
例の異星人がこの世界に飛び込んできた。
奴らが攻め込んでいった地は草さえも残らない。
とんでもない戦闘力。
俺にはおあつらえ向きだ。
この心構えが俺を挫折させることになる。
その時は全く想像なんてしていなかった。
想像できなかったといえば。
俺に愛する人ができたことだ。
話が変わりすぎだって?
まあ、聞いてくれよ。
昔の事だが、本当に昔の事だが、俺はパーティに裏切られた経験がある。
正直。屈辱的ではあるが、トラウマだ。
俺はそれから一匹狼として行動している。
それをこなせる程の力があったから。
そんなある日。
ある一人の女性に目を奪われる事態が発生する。
俺はガンマンだ。
ロマンチストであるべきだ。個人的な意見であるが。
だが、一目惚れをしてしまった。恥ずかしながら。事実だ。
それからは...
意識をしないようにした。
所詮は人だ。
いつか絶対に裏切られる。
そんな事を自分勝手ながら確信をしていた。
俺は悲しいかな、いつしか人を信じられなくなっていたのだ。
だが、神の悪戯か、その一目惚れの人物と頻繁にすれ違う。何?気取っているって?
そのたびに視線で追っている俺がいる。虚しくも。
この人ならば、もしかすると、もしかするかもしれない。
すれ違うたびに、これは運命なのだと思っては、かぶりを振る毎日。
俺は英雄になろうと欲する人間だ。
そんな色欲に惑わされている場合ではない。
そして、旅先に現れる小悪党共をさばいていた。
だが、小悪党は小悪党。
たまには無関係の人を巻き込んで迷惑を振りまくものだ。
だがその迷惑は幸か不幸か俺にも降りかかった。
あの、すれ違うたびに、ストーカーばりに追っていたあの人が人質に取られているではないか。
「動くな!!コイツをぶっ殺すぞ!!」
人質に頭に銃を突きつけて、しかもそんなお決まりの台詞付きだ。
ズキューン
「バカ野郎。腐っても俺はグレイブだ。そんな的外しはしねぇよ。」
なんの苦も無く人質救出。
「あ、ありがとう...」
例の女性は相当怯えていたようだ。
俺の服をつかんで離さない。
「やっと...」
「やっと見つけた...私の旦那様...」
「は?なんて?あっ、おい!!」
女性はなにか言っていたようだが、俺の耳には届かなかった。
そのまま、走り去っていった。




