041逆転
戦争の発端として、あちこちに暴動を仕掛けている奴ら。
そんな奴らのボスと一対一。
魔術も効かず、リリは戦線離脱。
戦況は最悪だ。
有効な一手すら見当たらない。
「ぐああああああああ!?」
もう何度目だろうか。
奴の動きは想像以上に早く、防ぐのが精一杯。
それにもう何度も吹き飛ばされている。
限界だ。楽になれるならなってしまいたい。
「イイカゲン、シニヤガレッ!!!」
吹き飛ばされる。
でも、諦めるワケにはいかないんだ。
リリに言われただろう。
俺は勝てる。
コイツに勝てるんだ。
「フゥーッ、フゥーッ。」
「ハッ、オマエ モウ ムシノ イキ ナンダカラヨ。」
「コノママ クタバッチマイナヨ?ナ?」
奴が飛んでくる。
ついでに大きくハンマーを振りかぶって俺を叩き潰そうとしてくる。
「諦めてはなりません、ルズベリーの勇者よ。」
声が聞こえる。リリではない。
「あなたはこの世界を救えるだけの力を持っています。」
「ただ、今はまだ使いこなせません。」
「それに今戦うには経験不足の相手です。」
「これからも苦戦するでしょう。でも諦めてはいけません。」
「諦めたら終わりです。最初で最後になりますが、私の力を貸してあげましょう。」
「さあ、行くのです。勇者よ。この戦いを勝ち抜くのです。」
「私はいつでもあなたを見守っています。私の未練をどうか...」
不思議だ。
なんだか知らないけど、奴の動きがとてもスローに見える。
これなら。
これなら、避けることも反撃も可能かもしれない。
しかし、ダメージが大きい。
身体は鉛のように鈍い。
思い切り振りかぶって、こちらからも攻撃を仕掛ける。
やっとの思いで、ハンマーを剣で受け止める。
飛び散る火花。
響く金属音。
両者の武器は弾かれた。
「ムゥッ。ドコニ ソンナ チカラガ...」
今回は相手も痺れたみたいだ。
「コノ クソヤロウ ガッ!!!」
弾かれたハンマーをそのまま振り下ろしてくる。
やはりスローに見える。
深呼吸を一つ。
鼻先寸前でかわし、奴の胴体に一発食らわせる。
「ムゥゥ...」
いける。
しかし、俺も満身創痍。
意識がぶっ飛びそうだ。
脚もフラついている。
次が最後の一撃。
それで仕留められないなら、終わりだ。
「ハッハッハッハッハッハッハ。」
奴が笑う。相変わらずの高笑いだ。
そんなに余裕があるのか。
「ワレワレカラ ニゲオオセタ ダケノ コトハ アルナ。」
「ダガ、クドイナ。オシイガ ソロソロ コロスゾ。」
奴がそう言い放つと、真正面から叩き付けてくる。
ガッキィィィイイイン
俺はそれを剣で受け止める。
ただし、弾き返しはしない。
そのままハンマーごと斬り捨ててやる。
ハンマーと剣の衝突部分からは火花がこれでもかというくらい散っている。
「ウオオオオオオ!!!」
「うあああああああああ!!!?」
ダメかもしれない。
奴には余裕があって、俺にはそれがない。
絶体絶命の状況だ。
「オマエハ ココデ オシマイダ!!!」
「コノママ ツブサレテ シヌンダ!!」
「ワガ クニノ ドレイト ハタラカセルコトガ デキナイノハ イタイガ、シカタナイ!!」
「ショセン ジャクショウ シュゾクヨ!!ワガ テニ カケラレル コトヲ コウエイニ オモウンダナ!!」
馬鹿が。
どう転んでも、勝つのは俺だ。
諦めない。
諦めたらそこで終わりだ。
クソが。早く斬っちまえよ。こんなやつ。
エミーと約束したじゃないか。
みんなを笑顔にするって。
この程度の奴を倒せないでどうするんだ。
いけ。
いくんだよ!
大剣アトワーデはハンマーに食らいついたまま、火花を散らしている。
両者の武器は押さず引かずでまったく動きがない。
いけ!!!
いくんだよ!!!!!
アトワーデ!!!奴を斬りさけ!!!
「アトワーデエエエエエエエェェェェェェェ!!!!!」
叫ぶと同時に、剣が炎に包まれる。
その炎はハンマーを溶かし、斬り込みを入れていく。
「ナニッ!?」
ハンマーを焼き溶かし、奴を完全に捉えた。
「クソ...コンナ ヤツニ...」
ハンマーと一緒に奴を両断した。
グシャ
奴が倒れる。
さすがに事切れている。真っ二つだ。
やった。
やったんだ。俺は勝ったんだ。
俺の意識はそこで途切れた。




