040勇者として
目の前に立ちはだかる強大な敵。
しかもボス核にぶち当たってしまったようだ。
一対一なのがせめてもの救いか。
ほかの奴らはローズを追っていった。
俺を殺すには一人で十分。そう踏んだのだろう。
それに、不意を突かれて吹っ飛ばされたリリが気になる。
未だに瓦礫の下でピクリとも動いていない。目の端で確認をする。
「オイオイ。オレヲ メノマエニ シテ タニンヲ キニ スルトハ ヨユウ ナ コッタナ!!」
奴が仕掛けてくる。
ギリギリ剣で防ぐことはできたが、今度は吹っ飛ばされる。
「ぐはっ。」
リリと同様に建物に叩き付けられる。
身体が揺さぶられる。臓物をひっかきまわされたようだ。立ち直りに時間がかかる。
リリと距離を離された。
奴は!?
余裕の様子だ。再起不能のリリを気にしている様子はない。
じっくりと俺を仕留める気か。
じっと俺のほうを見ている。
「ソウデナクテハ オモシロクナイ。セイゼイ タチムカッテ ミセルンダナ。」
どうする。
戦闘にすらなっていない。
大きい体躯に絶対的な力。それに速さまで兼ねそろえている。
反応できるかすら危うい。
ようやく立ち直る。
「うおおおおおお!!!」
奴に向かって俺は飛んでいく。
「フン。チョットハ ミドコロガ アルナ。ニゲズニ クルトハ。」
奴が振りかぶる。
大きなハンマーだが、振りはとてつもなく速い。
その戦いぶりはまるでバーサーカー。
突っ込んで斬りかかるだけではダメだ。
ヨハナとの戦闘経験を活かす。
リリのステップだ。
「ム。キエタ ダト...?」
成功だ。
脚にめがけ思い切り斬りかかる。
「ムム。」
手ごたえを感じる。深く斬り込みをいれることができた。
そう思った束の間。
ハンマーがうなりをあげてこちらへと向かってくる。
「ぐあああああ!!」
なんとか防御成功をしたが、剣がぐにゃりと曲がるような嫌な感触を感じる。
すさまじい衝撃だ。
またしても吹っ飛ばされた。
「アマク ミテイタヨウダ。ワレニ イチゲキヲ クラワセル コトガ デキルトハナ。」
「オレモ センシダ。キサマヲ センシト ミトメ コロサセテ モラウゾ。」
続く衝撃で俺は満身創痍寸前だ。
俺は弱かった。
こんなにも弱かったのか俺は。
どうする。
どうする?
どうする!!?
勝てない。俺は。
俺はこいつに勝てない。
「シャキッとしなさい!!達人!!」
幻聴が聞こえる。
今まで身近にいた、とても頼りになる人。
俺を勇者と認め、旅を一緒にしてきた人。
「達人!!!!!」
「リリ!?」
リリが。リリが立っている。
しかし、立つのがやっとみたいだ。
俺が吹っ飛ばされた先はちょうどリリの近くだったようだ。
「エミーに感謝しないとね。」
「立ってて大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけないでしょ。回復薬が効いたって、ギリギリよ。」
「それに。」
一歩踏み出し、攻撃魔術を奴に浴びせる。
やはり、バリアのように弾かれてしまう。
「やっぱり、ダメ...」
「リリ!!」
糸が切れたかのように倒れるリリを受け止める。
「奴はどこで手に入れたのか、魔術無効の装備をしているわ。私は役立たず。」
「でもね、達人。あきらめちゃダメよ。あなたは絶対に勝てる。」
リリの意識が途切れる。
ゆっくりと横たわらせる。
倒さなければ。
倒さなければ、希望の道が途絶える。
俺は絶対に勝たなければいけない。
「ハッハッハッハッハ!!コウカゼツダイダナ!!ホリョドモニ ツクラセタ カイガ アッタワ!!」
奴は勝ち誇っている様子だ。
だが、それまでだ。
俺は絶対に勝って見せる。
勇者として。
ルズベリーの窮地を、この世界の窮地を救う勇者として。




