003出会い
魔境。
そうここは魔境だ。
何がそう思わせるのか。
また違和感を感じる。
そして安心感を感じる。
同時に虚無感を感じる。
…目が覚めた。
夢を見ていた気がする。
それも一瞬の出来事だったのに、無限の時が過ぎたかのような。
一気に濃い夢を見たせいか、倦怠感が残っている。
これは今日も授業で寝るしかないな。うん。
・・・おかしい。
今日はすんなりと魔境から抜け出せたものだ。
時計のアラームすらなっていないのに、目を覚ますことができた。
というか、時計すらない。
それに、俺のベッドはこんないい匂いがしない。
もっというとデザインはこんなにかわいらしい、女の子っぽいものじゃない。
部屋だってこんな立派じゃなかったはず。城かここは?
それに雪花が起こしに---
そうだ!!雪花は!?
あの後どうなった!?
「おめざめでしょうか。」
ガチャリとなんとも気品のあるいい音をたてて扉が開いた。
立っていたのはまた違う女性。耳が長いのは相変わらずだ。
そんなことより。
「雪花は!?どこにいるんだ!?無事なんだろうな!?」
今にも胸倉をつかみそうな勢いでまくしたてる。
無事でいてくれ。最後に見た光景は嘘だと言ってくれ。
「お連れ様は無事です---
無事。よかった。それが聞けてよかった。膝から崩れ落ちそうになる。
---しかしこの国にはいません。」
あ?
なんて言った?
いない?
一瞬頭が空っぽになる。言葉を絞り出せない。
あれは現実だったのか。いや、俺がこの場所に立っていることが何よりの証明じゃないか。
何があった?何が起きた?何がいけなかったんだ?
何何なに何何何ナニ何何nani何何何何何なに何何なにナニナニ
気が付くと俺は吐いていた。吐くものがなくなって胃液を出しても、それでも吐き続けよと脳が働きかける。
「心中お察しします。落ち着く時間が必要でしょう。まずはこちらへ。」
頭がおかしくなりそうだった。
藁にもすがる思いで、その女性についていくことにした。
「目が覚めましたか。ご気分はいかがでしょうか。」
そこには一人の少女、それも誰もが二度も三度も振り返るであろう美少女が立っていた。
しかし、小さい。船で助けられたあの少女と似たような感じ。
そんな彼女に何か一言だけでもなげかけられただけで、怒り狂うかもしれないと内心思っていたのだが、俺は意外と落ち着いている。
そんな自分に腹がたった。疲れているんだ。そうだ。
それにしても、彼女を取り巻く、あの騎士のような見た目の人、時に怪しい魔術でも使いますと言いたげな服装をしている人たちは何者だろうか。
ただ立っているだけなのに、肌がピリピリする。
映画で見るマフィアのようだ。
信頼でかためられた仲間。簡単に崩れはしない関係を思わせる。
有無を言わせない空気がただただ漂う。
「あなたは---
「なぜひとりだったんだ?」
「...」
肌のピリピリが増した気がする。
「仕方なかったのです。なるべく察知をされないように侵入するには---
「仕方なくないだろうが!!大事な人をさらわれてるんだよ!!そもそもそっちの不手際じゃないのか!?」
これ以上言ってると間違いなく俺は殺されるだろう。
ピリピリが勢い付いてきた。
間違いない。殺気だこれは。
そんなことは言ってられない。雪花が。雪花に会いたい。
「助けてもらえたのは本当に感謝してる、ありがとう。でもな、あいつは今どんな---
「お姉さまが今から説明してあげようとしてるんだからちょっとは黙ってなさい!!」
後ろから甲高い声が響いてくる。お姉さま?
振り向きながら叫び返す。
「うるさいんだよ!!こっちはな---
「黙ってなさいって言ってるでしょ!!」
少女の右手が空をつまみ、一気に右に動かした。
「んむぐっ!!」
口が開かない。まるでチャックをしめられたかのように。
「んー!!!!んーんー!!!」
「さあ、お姉さま♪続きをどうぞ。」
「こら、客人におイタをしてはいけませんよ。その手が速い癖は直しなさいと言っているでしょう。」
「えー。冒険者なのに、遅くてどうするのよ~。それにお話の進行しやすくなったんだからいいでしょ?」
「そういう問題ではありません!」
俺そっちのけで、話をしている。
殺気もどこへやら。
すごく和んでいる空気が漂っている。嘘だろ?
「失礼しました。お話を続けましょう。」
「あ、続けるんだ。」