038奴らの下僕
ニーロに張り込みを始めてからもう1週間が経つ。
これほど音沙汰が無いとなると、もう奴らも感づいているのではないか?
そして今日はローズの同行も最終日となる。
お互いに目標があるとはいえ、いざ別れるとなるとやはり寂しいものである。
「今日はどうだろうな。」
「さ~てね。わたしも奴らじゃないし、いつここに来ようかなんて。わからないわ。」
「でも、万が一来るとしたら次が最後なのは間違いないわね。」
「集金先がつぶされてたとなるともう用済みでしょうし。」
「そうだな。やつらもたくさん略奪をしただろうしな。」
しかし、こうも現れないとなると、やつらのしっぽを掴めない。
現れてくれと願うばかりだ。
その願いもかなわず。
ニーロを練り歩いたが、やはり奴らは現れなかった。
奴らの侵略があったというのに、にぎわうところはそれなりににぎわっている。
市場が特に騒がしい。
人は強い。この逆境を乗り越えるためだろうか。あれは、サービス合戦だった。
何も買っていないのに、たらふく食わされた。
いよいよ張り込みを切り上げる時間になった。諦めるしかないのか。
「残念だけど、ローズともお別れになるかしらね。」
「そうだな。短かったけど、楽しかったよ。また会ったら---
「ちょっと待ちな。」
チャップが低いトーンで話す。
「あれ。」
ローズが指をさす。
その先には、先日の集金男が。
何やら様子がおかしい。
遅い時間で周りに人が少ないというのに、やけに周りを気にして歩いている。
あれはもしや。
「タイミングが合ったかもしれないわね。」
「やっぱりマージンの徴収か?」
「その線が濃厚ね。明らかに怪しいわ。あんなに人目を気にして歩くなんて。」
「素人丸出しね。よくあれでグレイブを倒したとか言って回れたものね。」
男は人目を避け、路地をグルグルと回って歩いていた。
時に人に混じるようにして歩いていたが、ちょっと肩がぶつかっただけで偉そうに突っかかる。
隠れようとしているのか。目立ちたいのか。
そんな男は広場を囲むようにして歩いている。
人がまったくいなくなる時間を探るかのようにグルグルと。
...長期戦になりそうだ。
もうすっかり辺りは暗くなっている。
人の影はほとんど見えないというのに、男はグルグルと歩き回っている。
「もう辛抱できない。いい加減聞き出そうぜ。」
「あなたって人は...もうちょっと我慢を覚えなさい。」
「もしあの男が奴らの来る時間を知っていたとして。」
「なんであの男は無駄にグルグルと路地を回っているの?」
「時間を合わせて外出すれば、誰にもバレずに用を済ませるはずよ。」
「しかも、こんなに長い時間私たちが尾行しているというのに、気付く気配もない。つくづく素人ね。」
「そして、男が奴らの来る時間を知らない場合。」
「一番まずいかもしれないわね。」
「奴らがどこかで見ている可能性も浮上するわ。」
「でもそんな気配は無い。それに奴らは嫌って程目立つ装備で出てくるわ。」
「いくら人が少ないといっても、それはそれは目立つでしょうね。騒ぎがないことからその線は無しね。」
「以上のことから、私たちは待つしかないわ。」
「それもそうだが...もう夜が明けそうだぜ?」
夕方に尾行を始めたはずだが、もう日が昇り始めている。
いつまで歩くんだあの男は。
「もう、いいだろうか。」
男の声がよく聞こえる。
周りには誰もいない。それに、空気も冷たく、音がよく反響する。
「まったく、人使いが荒い連中だ。半日は時間をかけてグルグル回れだなんて。」
独り言が多い男だ。
しかし、これで男が何も知らないということが分かった。
男がポケットからベルを取り出し、鳴らした。
その瞬間。
パリーン
空間が割れた。




