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37For Next Grave.

あれから張り込みを続けて1週間が経った。

奴らは全然姿を現さない。

「残念だけど今日の張り込みが終わったら私は帰る。」

もしかしたら、グレイブが現れるのでは、とローズも一緒に張り込みを続けてくれていたのだが、もう時間の無駄だと思ったのだろう。

ローズは部屋で愛銃のメンテナンスをしている。

「よくそんな複雑なのいじれるな。」

もちろん俺は銃を触ったことがないので、見ているだけで混乱しそうになる。

こんなにもバラバラになるものをローズは扱っているのか。とひたすら感嘆するばかりである。

「あれから私は大変な目にあった。」

「全部ママと私を捨てていったパパのせい。」


------------------------------


私は物心がついたころからパパがいない。

ママと、お気に入りのぬいぐるみのチャップ。

ずっとママに育てられた。

私に名前はあったが、捨てた。

「パパは、大切な仕事をしているのよ。怒らないであげて。ね?」

なんてママは私に言い聞かせようとしたが。

それなら、なんでママは一人で泣いているの?

...

今日はいつになくママの機嫌がいい。

聞くと、パパが久しぶりに帰ってくるらしい。

ママの鼻歌なんて久しぶりだ。きれいなメロディー。

かくいう私もちょっとワクワクしていた。

パパに会える。

こういうのも恥ずかしいが、私も甘えたい盛りだったのだろう。

しかし、待てども待てどもパパは来なかった。

「ちょっと探しに出てくるわ。」

ママも帰ってこなくなった。

待てども待てども。

どのくらい時間がたっただろう?

ふいにノックが聞こえる。

「ママ!?」

扉を渾身の力で開ける。いつもと違い、扉が重い。

扉に立っていたのは、ママの友達だった。

私の顔を見て驚いていた。そんなにひどい顔だったのだろう。

ママが死んだ。

パパを探している途中に族に襲われたという。

家が広い。

私は一人になったのだ。

その広い場所で私は何をしていたのだろう。

無駄に時間だけが流れていく。

帰ってくる人を待ち続けて。

待てども待てども誰も帰ってこない。

体を壊して3日以上寝ていた日もあった。

あの時の孤独感はもう味わいたくない。

私も後を追おうとしたとき。

部屋に銃があるのを見つけた。

今の私にはおあつらえ向きだろう。

柔らかい、いかにも高そうな肌触りのいい布に包まれていた。

開けると、銃。オートマチックが二丁。

それに手紙。ママの字ではない。

For next Grave.

あいつだ。パパ以外ありえない。

あいつは最初からこのつもりだったんだ。

目にもの見せてやる。

はらわたが煮えくり返った。

その日から私は銃に夢中になった。

あいつの額に一発お見舞いする。

来る日も来る日も銃を改造し続けた。

高そうな布に包まれていたというのに、素人目にも銃自体は全く手入れが行き届いていなかった。

さすがに最初からうまくいじれなかった。

改造中に手を切ってしまい、机に置いていたチャップに血がついてしまった。

しかし、気にする余裕などなかった。

復讐を遂げるその日までは。

改造が行き詰まり、もうどうしようもないと思ったころ。

「よお。お嬢ちゃん。どうしたんだ?そんな顔して。」

声が聞こえた。

どこから?私は家に誰も入れていない。

「お嬢ちゃん。そんな警戒するなって。俺は見た目通りジェントルメンなんだぜ?」

ジェントルメン。もしかして。

チャップを抱え上げる。

「おお。お嬢ちゃん。いくら俺がジェントルメンだからってそう熱いハグされるとさすがの俺でも照れるぜ。」

「私はいつもこう。」

「知ってるよ。俺はこのぬいぐるみだったんだ。いつも見てたよ。」

「いつも?」

「そう。いつも。」

それから他愛のない話で盛り上がった。

久々に人と触れ合えた気がする。

ずっと一緒だったチャップとコミュニケーションが取れるようになったのもうれしかったのかもしれない。

チャップと話しながら改造を進めていると、あっという間だった。

「完成、したな。」

「うん。チャップのおかげ。」

「俺は何もしていないぜ。お前自らの手で作り上げたんだ。アルメール・グレイブ。」

「その名前は捨てる。」

「おいおい。名前を捨てるだなんて。」

「その名前はパパがつけたの。いまの私に必要ない。」

「ま、お前がそういうならそれでいいけどよ。」

こうして私とチャップとの奇妙な旅が始まった。

腐っても親子ということなのだろうか。

戦闘がつきものであるのは覚悟していたが、その最中で奇妙な体験をする。

この銃が私を知っている。

変な話だが、そう感じるのだ。間違いない。

自分でメンテナンス、改造したとはいえ、こんなに調子がいいなんて。

まるで私が私じゃないみたい。

どうみても私の体には合わない銃。

軽々と扱える。私にはこれが合っている。これしかない。

女子供一人でどうにかなるのかと不安がよぎる時があった気がするが、関係ない。

チャップもいる。

それに私は元気だ。いまなら何でもできる気がする。突き進むしかないんだ。

こうして、私はパパに一発お見舞いすることを目標に旅を続けている。

ジャキン

「終わった。」

「見事なものだな~。まるで職人技だよ。」

「ほら。無駄口叩いてないで、いくわよ。いつ来るかわからないんだから。」

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