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032チャップとダチ

「なに...これ...」

そこにはニーロの風景が広がっていた。

瓦礫の山だ。

聞いていたすべての欲が満たされる国とはとても思えない。

華やかな雰囲気などなく、まさに閑古鳥が鳴いている。

「我々の国も奴らに侵略をされました。」

入口にいた係の人が語りだす。

「奴らはすべてを奪っていきました。」

「もはやこの国には富や名声など残っておりません。」

「今や審査など飾り、誰でも入国できます。」

「欲がすべて満たされると言いますが、逆を言えば、すべてを奪うこともある国なのです。」

「きっとそのツケが回ってきたのでしょう。もう見る影もありません。」

俺たちはもっと早くに気が付けたはずだ。

ここまでの道のりの事、ルルが話を通したというのに審査に時間がかかったこと、外にいる人達は明るく振舞っていたものの、中の係の人たちが皆暗い顔をしていたこと。

奴らは深く爪痕を残していった。

「これが私の憧れだった国ね。」

「ちょっと見て回りましょうか。」

リリは寂しげだ。

歩けど歩けど周りは瓦礫だらけ。

無事な建物はあるのだが、大半が半壊もしくは瓦礫と化していた。

「なんだこれ。」

そこにはとても大きな像。10mくらいはあるだろうか。

それが横たわっている。

こんな大きな像、普通は広場に置くだろう。狭い通路にそれはあった。

「ニーロの王よ。」

「この国はちょっとした宗教じみたものがあってね。」

「この素晴らしい国を作り上げた王に感謝して、国民が像を作るのよ。」

皆に称えられていた証なのだろう。今では失墜を意味してしまっている。

「本当になにもかも無くなってしまったのね。」

周りには浮浪者、冒険者。

そのくらいしか見当たらなかった。

裕福そうな人なんて見かけない。

すべて奴らのせいだろう。

歩き回っているといつの間にか陽が沈みかけていた。

「はぁ~、どうも辛気臭くって駄目ね。」

「お、ちょうどいいところに。」

「あそこ、行きましょうか。」

リリが指さす。

「あれは...酒場?」

「そう。もちろんごちそうするわよ。」

「俺酒飲めないぞ...?」

「男のクセに弱いの?」

「いや、まだ未成年だし...」

「え?あなた歳いくつよ?」

「18だけど...」

「大丈夫じゃない。15歳からオーケーなんだから。」

「とは言ってもだなぁ...」

「いいから。付き合いなさいよ。」

言われるままついていくことに。

扉をくぐると、店員や客たちがすごい形相でこちらを見る。

俺たちが安全だと確信すると、すぐに酒の席に戻る。

「申し訳ございません。こんな情勢なので警戒をせずにはいられません。」

老紳士がテーブルにコースターを敷きながら挨拶をする。

バーテンダーという言葉を姿に現すとまさに目の前のような人になるのだろう。ダンディ...

「気にすることは無いわ。私はレッドアイ。無塩でお願い。」

「お、俺はオレンジジュースで...」

「もう。」

お酒は嫌なことがあったり、忘れたいことがあったら飲むといい。

リリが言っていた。そして、ただの酒飲みの言葉だとも。

最後には俺の肩を借りなければ歩けないほどベロンベロンになっていた。

それでも支払いはしっかりとこなした。流石である。

「そこのホテルでいいわよ~。ちょっとくらい高くてもお姉さまは許してくれるわ~。」

「わかったから。すぐ休もうな。」

さほど歩くことはできず、近場の安ホテルへ。

リリは部屋へ着いた途端に、ベッドへダイブをした。

そのまま寝息を立てている。

俺も一息つこうかと思った時。

「やい、おめーは一体何者だ?」

気づかなかったが、部屋の奥の机に女の子が一人座っていた。

フリルのたくさんついた服に、白い髪。

紅いバラの髪飾りが印象的だ。

机には銃のようなものが置かれていた。

バラバラなところを見ると、メンテナンス中だったのだろうか。

「おめーは何者だと聞いている!!」

ただはっきり言えるのは、この子はしゃべっていない。

「え、えーと、君は?」

「おいおーい、レディに最初に名前を聞くだなんてなぁ。てめーから名乗りやがれ!!」

「え、あ、ごめん。俺は達人。」

「タツト...」

女の子がようやく口を開く。

だとしたらこの口が悪い声はどこから?

「さっきからてめーは俺が話してやってるってのにどこ見てやがる?」

どこだ?女の子のほうから聞こえはするのだが...

「ここだよ!!こ・こ!!」

机にあったぬいぐるみ。

くまさんのぬいぐるみ。

タキシードを着た紳士風のくまさんのぬいぐるみ。

ここはブラックタイ着用のパーティ会場だっただろうか。

ソレがふわっと浮き上がった。

「ど、どうも...?」

「よお!!達人!!あいさつしたからにはこれから俺たちはダチだ!!よろしくな!!」

ぬいぐるみが飛んでしゃべるなんて。気付いたら友達にされてしまった。

これはもう慣れたもの勝ちだろう。

「よろしく?」

「なんで疑問形なんだよ!!もっとイージーに行こうぜ。」

「俺はチャップ。こいつは...名前が()え。本人は嫌がるんだが、親父さんにならってグレイブって呼んでるけどな。」

グレイブ?名前がない?

「お前、もしかして知らないのか?」

チャップはぬいぐるみで、もちろん表情が変わらないのでわからないが、口調から呆れられているのはわかる。

「まあ、昔のガンマンさ。長い話は俺は嫌いだ。まあ、よろしくな。」

それは後で聞くとして。

部屋を間違えられたんだろう。ちゃんと鍵も渡されたはずなんだが。

リリも起こして、部屋を移動しなければ。

「おいおい、せっかくダチになったんだ。気にすることじゃないだろう?」

「グレイブも寂しがってたんだ。一晩くらい相部屋になったくらいで文句でも言うつもりか?」

紳士のくまさんに言われるがまま、奇妙なダチと一晩を共に過ごした。

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