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002救い

魔境。

そうここは魔境だ。

何がそう思わせるのか。

違う。何かがいつもと違う。

「!?」

目が覚める。

俺は一体...

目を疑った。

ここはどこだ。

「オイ ヨウヤク オキタゾ」

「ソウカ コレデ テキゴウシテイルト ヨウヤク カクテイ シタワケダナ」

聞き覚えのある、嫌な声が聞こえる。

ただ、頭痛がしない。肉声だ。

絶望的なのはソレが人間じゃないこと。

グロテスクな見た目、まるで肉片を身にまとっているような風貌だ。

連れ去られる前の光景はどうやら夢ではなかったようだ。

ここは…乗り物の中のようだ。

窓から見えるあの景色は何だろうか。

ずっと光が流れ続けている。

少なくとも、俺たちが住んでいたところではない。

吃驚(びっくり)だが、冷静に判断ができている自分がいた。

幸いなのは、まだ雪花が目覚めていないことだろうか。

こんな光景こいつに見せたくない。

まさか日常がこんなに簡単に壊れてしまうなんて。

「キサマラ テキゴウ シタモノハ ワレワレノ モルモット ケン ドレイト シテ カツヨウ シテヤル」

「オイ コイツ イワユル メス デスゼ アタリヲ ヒイタンジャ ナイデスカ」

「ハハハ ソウ ハヤマルナ テキゴウ シタ トハイエ ハンショクヨウニ スルニハ ソウトウナ ジカンガ カカル」

やつらは下卑た笑い声を発しながら、何やら話している。

話し声や奴らの様子から察することができた。

やつら、人間を。テキゴウしたとかいう人間を己の欲望で潰す気だ。

わかったところで、どうしようもない。

相手は少なく見積もっても3-4mはある。

でかい。でかすぎる。

それに俺たちは身動きができないようになっていた。

舌噛み防止だろうか。口がふさがれている。

そして親指だけを何か硬質な物質で縛られ背中に回されている。

最後に脚をグルグル巻きに。こっちは何でできているのか全く分からない。

すっぽりと何かに包まれてしまっている。脚を曲げることすらできない。

「キコエルカ ワカルカ オイ ワレワレノ フネヘ ヨウコソ」

「コレヨリ ジゲンヲ トッパシテ ワレワレノ クニ ヘト ゴアンナイ シヨウ」

やつらの一人が顔をこれでもかというくらい近づけて話す。

近くで見れば見るほど醜悪な顔だ。

まるで豚の臓物をぶちまけたような顔だ。

誘拐された恐怖からそう見えるというわけではない。

化け物そのものではないか。

俺達は一体どうなったのか。これからどうなるんだ。

「モチロン キョヒケンハ ナイ セイゼイ ハヤジニ ダケハ ヤメテクレヨ」

「ソレデハ カイテキナ タビヲ ドウゾ ゴユックリ オタノシミ クダサイ」

やつらは高笑いをしながら、部屋を後にした。

この部屋からは出られない。そういうことなのだろう。

泣いてしまった。

無言で涙を流す。

雪花がまだ目を覚ましていなくてよかったと思った。こんな頼りない姿、みられたくない。最低な考えだ。

雪花は一緒に泣いてくれただろうか。

せめて死ぬなら、何も知らないうちにさっさと殺してくれ。

本当に最低な願いだ。

でも、真実を知ってしまうよりもきっとそれはだいぶマシだろう。

あんなやつらにいいように使われる事実なんて知ってほしくない。

助けて...

助けてくれ...

助けてくれよ。

...なんでこんな目に

なんでこんな目に合わなければいけないんだよ!!!

助けろよ!!

ヒーローだか何だか知らないけど、正義があるならだれでもいいから、助けてく---

パリーン

割れた。

空間が割れた。

空間から人が出てくる。

女の子だ。

若い…?幼い…?見た目は俺以下なんじゃないか?

人...にしては耳が長い。何やら仮面をつけていて、表情は読み取れない。

「大丈夫ですか!?さあ、私に身を委ねて!!絶対に助けますから!!」

近づいてきた人は若いというか、第一印象通り幼かった。

せいぜい中学生くらいの見た目。

しかし、その小さな体躯からは想像できない力ですぐさま抱えられる。

女性特有の抱擁感を感じられる。

声を聞き、それをすぐに理解でき、直に触れた安心感で満たされる。

その安心感も束の間。

「ジャマヲ スルカアアアアア キサマアアアアア」

あの肉塊がすぐさま扉を開け、こちらへと飛んでくる。

ちょっと待て。早すぎる。

今俺を運び出そうとしているんだぞ?

雪花は?

間に合うか?

どうするんだよ。おい。

なんで一人で来たんだよ。おい。

「カノジョハ ダイジョウブ デスカラ!!!ヤツラガ テヲ クダセルヨウニ ナルマデ ジカンガ カカリマス!!」

何を言っているんだ。

「ゼッタイニ タスケダシマスカラ!!ヤクソク シマス!!ヤクソク シマスカラ!!」

彼女は何を言っているんだ。

雪花が残っているんだってば。ねえ。

待ってくれよ。

マッテクレヨ...

彼女に俺の思いは届かず、選択権を提示される事もなく運び出される。

通ったと思われる空間が狭まるのを眺めながら、俺の意識は無情にも遠のいていった。

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