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028憎めないヤツ

「うおおおおおおお!!?」

あれから何度も何度も吹き飛ばされた。

血を流し過ぎた。

体力がそろそろ限界に入っている。

「つぎが最後になりそうだな。大口をたたいた割に貴様はその程度なのだ!!」

ヨハナは傷一つ負わずピンピンしている。

ヨハナがポーズをとる。

これしかないだろうか。

剣を盾に突っ込んでいく。

うまい具合に風を防ぐことができた。

これなら...

と思った時に、真横にヨハナがいた。

俺はバカか。

剣が死角になっているというのに攻撃できるわけがないだろう。

吹き飛ばされる。

「やるな。ちょっとヒヤヒヤさせてもらったぞ。」

そう言う割には余裕そうだ。

絶対に勝ってみせる。

とは意気込むものの。

身体が動かなくなってきた。

もう限界か。

ふとリリを見る。

目を瞑って、勝負の決着を待っていた。

勝負の当事者ではないのだ。当たり前だ。

最近の稽古厳しかったな。

リリの魔術をぜんぜん読み切れなくて苦戦しまくってたっけ。

その前に、俺は全くの素人で、丸腰のリリすらに勝てなかったっけ。

斬りかかるとすぐに目の前から消えて。

...消えた?

「正真正銘これが最後だ!!」

ヨハナがポーズをとる。

俺は突っ込んでいく。

「ふん、なんど来ようと同じこと!!」

この瞬間。

確かこんな感じだったはず。

リリのあのステップを真似る。

気付くとヨハナの背後に立っていた。

風の魔術は空振り。

最大の攻撃力で攻撃したのだろう。砂埃が大きく広がる。

「はーはっはっは!!!我の風の前に勝てるものなどいないのだ!!」

成功だ。ご自慢の風の魔術で俺を消し去ったと勘違いしているのだろう。

不意打ちのようで申し訳ないが、これも勝負だ。

刃面ではなく、剣の広い部分でバットのようにして殴打する。

「ぐふっ。」

弱めに振りぬいたつもりだったが、かなりの距離を飛んで行った。

「おつかれさま。」

あっという間に体が軽くなる。リリが回復してくれたようだ。

「てっきりトドメを刺すと思ってたけど。」

「イラついてはいたけど、そこまですることじゃないだろ。」

「あいつも強いし、なにより夢を持ってるみたいだったし。」

「なんかあなたらしいわね。」

リリに信頼されているのだろう。

曖昧に返したが、言わんとすることは理解してくれている。

「じゃあ、今度こそ帰りましょうか。」

「ま、待て...」

ヨハナがどこから拾ったのか、杖をついてこっちへと戻ってきた。

「今回だけは見逃してやろう!!次こそはこうはいかんぞ!!」

そんなよく聞く捨て台詞を吐いて、ヨハナは去っていった。よたよたと。

「それに、なんか憎めないしな。」

「それもそうね。」

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「おかえりなさい。初ダンジョンはどうでしたか?」

「どうもこうも...」

「さんざんな目にあったわよ!!全く!!」

発言権を奪われた。

「せっかく潜入したっていうのに、廃れていたのよ!!あのダンジョン!!」

「あらあら。」

「でもマスターが悪いってわけじゃないのよ。」

「心無い冒険者のせいよ。」

「彼女のやさしさに付け込んで、この国のダンジョンを失墜させようとしてたのよ。」

「お暇な方々ですねぇ。」

「全くもってね。」

「でもハーマリーもあの様子じゃ大丈夫だな。」

「ハーマリー?マスターが変わってらしたんですか?」

「そうなのよ~。間違ってもキツネっぽいなんて言っちゃダメよ。お姉さま。」

「そうそう。キツネじゃなく、アレはフェレットだからな。」

「?」

「...私もたまには外の情勢を知るべきですね。お恥ずかしい。」

「そういえばヨハナってやつが挑んできたな。」

「ヨハナさん...ですか。」

「そうそう。風魔法しか使えないんだけど、とにかく魔術が強力で殺されかけたんだけど。」

「冒険者同士の喧嘩は仕方ないですわ。プライドがどうしてもぶつかり合う事は避けられませんし。」

「お姉様はそのヨハナっての知ってる?」

「さぁ...最近ご入国されたのでしょうかね?」

「お姉様なら大丈夫だろうけど、なんか血の気多いから気をつけてよね。」

「さ〜て、どうでしょうね?」

「もう、そんな不安なことを楽しそうに言わないでよ!」

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