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018ダンジョンへ

動けない。

これがツケってやつなのだろうか。

昨日の稽古が祟ったのか、身体中が痛い。

リリが見兼ねて、なにやら薬を持ってきてくれた。

見た目は湿布のようだが、禍々しい色をしていた。

そして、何より臭い。

鼻が曲がるなんてもんじゃない。

リリがガスマスクを着けてきたくらいだ。

最初サラさんが小さくなったかとびっくりした。

「国外の厳しい気候で育つ強い薬草を調合した貼り薬よ。よーーーーーく、効くから我慢しなさい。」

「それにしても、臭すぎ..」

「せっかくエミーが作ってくれたのに。それにお兄ちゃんを早く治してあげたいって言ってたわよ?」

魔法の言葉を投げかけられた。

断る理由が無かった。

道理で魔術ですぐに回復してくれないわけだ。

聞くと、エミーの新薬開発の一環だったようだ。

本当に効果は絶大で、ものの3時間で回復した。

しかし、嗅覚は回復しなかった。

とりあえずルルリリ姉妹はどこにいるかと探し回っていると。

「すみません、お姉さま。まさかアレを使うことになるなんて。アイツも貧弱なのが悪いんです。」

「まあまあ、そういわずに。彼も頑張っているようですし。時は金なりです。もっと稽古をつけてもらいますよ。」

俺が言うのもなんだが、いい話っぽいのだが。

どうやら消臭作業に勤しんでいるようだ。

しかし、その姿はシュールである。

ミニサラさんが増えていた。

「それにしても、サラさんのガスマスクは効果抜群ね。お姉さま。」

まさかのサラさんの私物だった。

たくさん持っているのか。

乙女の身だしなみなのか。

薬のせいか、俺の体がとてつもなく臭かったらしいので、シャワーへとぶち込まれた。


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「はあっ、はあっ。」

シャワーを終えるやいなや、すぐに稽古が始まった。

2日目だが、動きが見えてきた気がする。

しかし、エミーと違って、ステップが違うようだ。

何種類もパターンがあって読み切れない。

気づくとリリは消え、

「まだまだね。」

首に手刀。

「...いい感じに仕上がっているわよ。ちょっとヒヤヒヤする場面が増えてきたわ。」

「そろそろ私も斬られそうだし、これ使いなさい。」

あの痛くない棒を渡される。

「それでも私の首は狙えるから。精々頑張りなさい。」

リリがいつになく弱気な発言をした。

俺は強くなれているんだろうか?

「うおおおおおおお!!」

「はあっ!!」

一閃。

「ふんっ!!」

二閃。

「きゃあっ!!」

バツン!!

俺の攻撃はリリの腰を捉えた。

「よっしゃあああああ!!」

「な、なかなかやるじゃない。ふんっ。」

あのリリを捉えた。

ギリギリだけども。

もっともっと俺は強くなれる。

そんな気がする。

「今日はそのあたりでおやめになってはどうでしょう?」

感動するのも束の間、ルルから突然声がかかった。

「お姉さま!!」

「達人様もレベルが上がったようですし。」

「でもお姉さま。」

「私が剣を持ち変えるように指示していなかったら、今頃あなたは...」

「それにいくら自信があるからって、真剣で稽古はいけませんよ?」

「もう、わかったわよ!!」

リリは怒った風だが、俺は知っている。

俺が剣に慣れるように計らってくれたことを。

身を呈して、戦闘の何たるかを教えてくれようとしていたことを。

「あらあら、では、続きは中でお茶でもしながら話しましょうか。」

「甘いお茶菓子も用意しますよ。」

ガシャン

なにやら物が落ちる音がした。

台車から箱が落ちたようだ。

「お菓子。甘いの?私もいい?」

今日も配達に来ていたのか、エミーがルルに言い寄っている。

「うふふ。いいですよ。ではいきましょうか。」


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「もう少し経験を積んだら、近場のダンジョンから攻めてみてはどうでしょうか?」

「私はちょっと早いと思うんだけど。アミュレットだって斬られてないのに。」

今後の稽古の話だろうか。ゲームとかでよく聞く単語が聞こえた。

ダンジョン、実際にそのようなものがあって、そこに経験として乗り込もうという魂胆だろうか。

「お兄ちゃん強くなったの?はやいの。すごいの。」

「いでっ。」

不意にエミーの拳が顎にヒット。

反射的に痛いと言ってしまった。

「ごめんなの。」

「大丈夫。」

エミーの頭を撫でる。

椅子は4つ用意されているのだが、エミーは俺の膝の上。

使われている椅子は3つ。

相当懐かれているみたいだ。

惜しいのは、ルルリリ姉妹はエミーを見つつ、すごく楽しそうに話している。

エミーが嬉しそうにお菓子を食べているからだろう。

エミーがお菓子をほおばる顔は相当可愛いんだろうなぁ。

俺の膝に座っているので、後頭部しか見えない。惜しい。

「というわけで、ダンジョンに潜ってもらいます。準備していてください。」

エミーの顔が見たいとモヤモヤしている間に話が決まってしまったようだ。

「まあ私がいれば百人力ってやつよ。」

「お兄ちゃんがんばるの。必要なものは何でも作ってあげるの。」

強力なサポートもいるみたいだ。

「ダンジョンマスターがいますので、挨拶は忘れずにしてください。」

「ダンジョンマスター?」

「管理者の事です。ダンジョンの構造を管理しています。」

「ダンジョンの構造を?そういうのって、地形とか、決まっているものじゃないのか?」

「基本的にはそうなのですが、この国近辺のダンジョンには管理者がいます。」

「さすがにモンスターは管理できないみたいですが、構造を変えることで、飽きない環境、そして挑戦し甲斐のあるダンジョンになります。」

「必然的に戦略を立てる必要性が出てきますし、レベルアップも効率的にできます。」

「いつ出発していただくかはまだ決めてませんので、心の準備だけはしておいてください。」

いよいよ本格的な戦闘体験をすることになりそうだ。

少し楽しみな自分がいる。

「力量としてはまだまだだけど、足を引っ張らないように頑張るのよ?」

「何を。大活躍して、鼻を明かしてやるよ。」

「まあ...期待しているわ。」

リリはなにか含みのあるいいかたをした。

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