表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/79

016リリと稽古

強大な敵。

地球の生活ではまず遭遇し得ないであろう敵。

俺は弱かった。

こんなにも弱かったのか俺は。

立ち向かおうとしても、見事に叩き伏せられる。

こんなのに俺は勝てるのか。

夢を見た気がする。

それもこれから俺の身に起こりそうな不吉の象徴。

しかし肝心の内容が思い出せない。

「今日は早いわね。」

リリが起こしに来た。

今日は例のビシバシの日だ。

ちょっとだけ気が滅入るような。

でもワクワクもするような。

「いやー、今日もおいしいなあ。」

「あなたはいつも幸せそうな顔ね。」

「そりゃこんなうまかったらな。」

「それにしても、それ似合ってるな。今までそんなのつけてたっけ?」

リリの胸元には大きなアミュレット。

女神のようなモチーフがあしらわれている。

「これに気づくなんてあなたも見る目があるわね。」

リリは鼻高々だ。

「お姉さまがつくってくださったのよ!!私に一番似合うにきまってるじゃない!!」

えっへんと胸を反らす。

「その幼児体型が玉に(たまにきず)といったところかな。」

「なによ!!あなたデリカシーってものがないわけ!?」

「なんかアミュレットのほうが妖艶で美しいというか..」

「ムキーッ!!あなた覚えてなさいよ!!」

カンカンに赤くなり、戻って行ってしまった。

それにしてもムキーって。

本当に言う人はいるんだなぁ。

…やばい。今日稽古だった。

なんで俺は墓穴を掘ってしまったのだろう。


---------------------------


「さあ、はじめましょうか。」

以前の広い庭で稽古が始まる

「始めるも何も、俺ケンカすらしたことがないんだけど。」

「あなたの能力があるでしょ?それさえ使いこなせれば楽勝よ。」

「と言ってもなぁ。」

「まずは私と手合わせよ。」

「はい?」

「あなたのレベルを見てあげるって言ってるの。」

「その剣使っていいから、私を殺しにきなさい。」

いきなり物騒な話になる。

「おっしゃっていることがよく分からないのですが..」

「まああなた程度じゃ一歩も動けずに私に殺されてしまうのがオ・チ・ね。」

いくら俺にケンカや戦闘の経験がないとはいえ、丸腰の女の子にこんな言われ方をすると、さすがに不愉快だ。

よーし。やってやろうじゃないの。

奇襲だ奇襲。

十分間合いにいたリリに思いっきり斬りかかる。

さすがに男として如何かと思う。

しかし、剣は地面に突き刺さる。

リリが、消えた?

次の瞬間、首に軽く手刀を当てられる。

「はい、あなた死んだわよ。」

「たしかに奇襲も戦闘には重要な手段だけど、私にはバレバレだったわね。」

うわ、すごい敗北感。

今の一瞬で俺は殺されてしまったのか。ショック。

「うおおお!!」

しつこく奇襲をかける。

立ち上がりざまに斬りかかる。

またリリが、消えた。

首に手刀。

こんな短い時間でデジャブを感じることになろうとは。

こんなにも弱かったのか俺は。

「お前魔術使ってるだろ!?そりゃ俺でも勝てないだろ!!」

「その言いがかりは残念ながらハズレよ。お姉さまからこれをうけとって、身につけているんですもの。」

今朝のアミュレットを見せられる。

「一体どういうことだ?」

「これ魔術封印のアミュレットなのよ。これを身につけている間は魔術は使えないわ。」

なにやらリリは魔術すら使えない、赤ん坊同然の丸腰だという。

はたから見たら(というか現実にだが)、俺は生身の女の子に思い切り斬りかかっていたことになる。

事案発生である。

「あなたよほど戦闘経験がないのね。」

「だから言っただろう...」

「何をそんなにがっかりしてるのよ?今は私に勝てなくても仕方ないのよ。」

「そうは言ってもだなぁ。」

「まああなたのレベルはわかったし、あとはなんとか慣れることね。」

「そうねえ、私のこのネックレスでも斬れるようになったら、卒業かしらね。」

「そんなの神業じゃねえか..」

「できるようになるわよ。さあ、続けるわよ。」

「!?」

不意に服の裾を掴まれる。

「お兄ちゃん、油断?」

「エミー!?」

「おはよう。」

エミーがあらわれた。

「あなた気配察知もできないのね。」

リリに呆れられる。

というか、察知なんて普通できないだろうが。

どうせ俺は温室育ちですよ。

「今日エミーが魔術物資をお姉さまに届ける日だったからね。エミーにいたずらをお願いしたのよ。」

「それにしても、稽古中じゃ危なくないか、これ。」

「エミーなら平気平気。」

手をパタパタと振る。

「むしろあなたよりかは強いかもね。」

「そうだ、エミー。ちょっと時間くれない?」

「ちょっと忙しいの。」

「アップルクッキー焼いてあげるから。今日作る予定なのよ。」

「何するの?」

途端にエミーの目が輝く。キラキラだ。

「じゃあ、達人。エミーと戦いなさい。」

急な提案に俺は絶句した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ