表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/79

011ステータス

「おつかいご苦労様でした。」

ルルは変わらず笑顔で出迎えてくれる。

「書類をお預かりしますね。」

何が書かれているのか、分厚い書類を手渡す。

「私はこれからちょっとお仕事しますので、1日は空けます。リリ、頼みましたよ。」

「はーい。」

ルルは自室にこもるのだろうか。1日丸々空けるとは。

一体何をしているんだろうか。

「それじゃ、昼食の用意もできたみたいだし、行きましょう。」

そういえばおつかいのおかげか、空腹感が今まで体験したことないくらいだ。

空腹は最高の調味料だったか。

このケースの場合、食事は上等なものなので、どちらにせよほっぺが落ちそうになる。

これが...上質。

知るというのはなんとも悲しいものだ。

「そういや、あのお店でやった施術とかなんとかって何をされたんだ?俺は。」

「魔術装置であなたの体をナノ単位で解析したのよ。」

まるでMRI…?ということでいいだろうか。

「というと...」

「まあ、早い話があなたの能力調査よ。あなたの場合、外界から来たにしては開花が早すぎるからね。」

「その能力というのが...」

「そう。あの書類に書かれているわ。ただ、魔術にに長けた人しか解読できないわ。」

「魔術能力開花した人達の中で、歴代最強をうたうお姉さまでさえ1日かかるわ。十分早いけど。」

「1日空けるといったのは、俺のためだったのか。」

「そう。ちゃんとお礼しておきなさいよ。あと、もしかしたら査定試験を受けさせられるかも。」

「げ。試験?試験は苦手なんだよなぁ。」

「そうねぇ。試験は厳しいわよ?」

「勘弁してくれ...」

後に聞いた話だが、能力別に試験は存在しており、その試験の内容も試験官によりまちまちだ。

1年に一回試験があるらしく、その時期はある程度決まっているが、やはり試験官の気まぐれらしい。

試験を受けるために、魔術で形成した別次元の魔術空間で行われるらしいのだが、説明されても全く分からなかった。

とにかくその空間は無限の広さを誇り、空間の端を探り当て、己の能力を持って破壊しようと試みてもその試みはあっさり崩されるほど強固らしい。

結果にブレが出ないように、その空間では最高のポテンシャルを出せるように常に回復魔法がかけられる。

一気に説明されて、しかもこんなファンタジーでしか聞かないような事をまくしたてられ、俺の頭はパンク寸前だった。

この状態じゃとても試験どころじゃない。なんとかしないと。

しかし、傾向と対策を練れるだけの知識が無いので、結局は待つしかないのであった。

そして、次の日の朝。

「おはようございます。達人様。」

ルルが食卓にいた。

「あれ?ルル、なんでここに?」

「失礼な人ですね。私だって朝食くらい食べます。」

ルルはわざとらしく頬を膨らませる。

「いや、すまん。そういうことじゃなくて...」

「ふふっ。失礼しました。私の仕事は終わりました。朝食の後でお話があります。」

1日どころか、半日で帰ってきた。

「あー、お姉さま!!おかえりなさーい!!おはよう!!」

「はい、リリはいつも元気ですね。」


-------------------------------------------------


「もう解析が終わっちゃうなんて、末恐ろしいわね、お姉さま...」

そばで何やら恨めしそうにしているリリをよそに話が始まる。

「突然ですが、今日から首輪を解除いたします。今までの無礼をお許しください。」

「いや、その、ご丁寧にどうも。」

そんな無礼というほど、着け心地が悪いわけでもないのだが。

「私はあなたを信頼しています。」

「はあ...」

「さて、あなたの解析結果ですが、やはり能力開花していました。」

「先日お話しした通り、あなたの能力は超筋力です。」

「それと、若干ですが、魔術能力も開花しかけています。」

「能力が2つ?そんなこと普通じゃありえない..!!お姉さま、それって...!!」

「ええ。かのこの国を救った女戦士アーデと同じです。」

「アーデ?」

女戦士アーデ。

この国ルズベリーを救った英雄である。

彼女の背丈ほどもある分厚い大剣をもち、軽々と振り回す。

同時に魔術にも長け、国の戦争地へいち早く到り、猛威を振るったという。

このように英雄としての実績を積み重ねてきた彼女だが、一度敗戦したことがある。

連戦連勝が常識だった彼女にたった一度泥が付いただけで、その猛威は失墜。

最終的には非道にも処刑をされ、一生を終えてしまう。

そんな無情な結果のおかげか、アーデに関する資料もほとんど残っていない。

そんな彼女と俺が同じような能力を授かったという。

「ものは試しです。庭に剣を用意いたしました。行きましょう。」

庭へと行くと、剣が地面に突き立てられていた。

遠目で小さく見えたが、近づくととても大きいではないか。

俺の背丈ほどもある。

「こちらは、かつてのアーデが使っていた大剣です。」

「そんな大層なもの持ってもいいのか!?」

「はい。ちょっとしたアンティーク物ですが、性能は折り紙付きです。これを使わずに保管するだけなんて、それこそ宝の持ち腐れです。」

「アーデと同じ能力を持った者です。きっと彼女もあなたに使われることを光栄に思っているでしょう。」

言われるままに剣の前に立たされる。

それにしても大きい。そして分厚い。こんな重そうなもの持てるだろうか。

かつてのアーデの姿が思い浮かぶようだ。ただの剣だが威圧感を感じる。

意を決して、握る。

握った瞬間に分かる。俺に扱える事が。

「試しに振ってみてください。」

剣を地面から抜き、片手で天へ突きさすように掲げる。

軽い。まるで空気のようだ。

信じられないくらい体に馴染む。

剣技は全く知らないのだが、練習用に設置されていた丸太へと切りかかる。

「ふんっ!!」

あんなに太い丸太が真っ二つになる。

朝飯前だと気取った台詞を言いたくなるくらいに。

しかし。

ピシッ

「きゃああああああああああああぁぁッ!!!?」

剣が砕けた。

砕けた破片が危うくリリをかすめる。

「何するのよ!!死ぬかと思ったじゃない!!バカ!!バカ!!バカ!!」

「あばばばばば」

リリから電撃を浴びせられる。痛い。

「なんだよ!!俺悪くねえだろうが!!」

「知らないわよ!!こっちはすごく怖かったんだからね!!」

「大体この剣が!!...はっ。」

剣が砕けた?

「ルル...?」

ルルはすごく驚いているようだった。

「これも必然...なのでしょうね。」

だが、すぐに落ち着きを取り戻したようだ。

「盛者必衰という言葉があるように、彼女、アーデには未練があったのでしょう。」

砕けたかけらを拾いながら、思い出に浸るように語る。

「それが剣に宿っていたのでしょう。しかし、剣を扱える者が現れた。それだけで彼女の魂は安心したのでしょう。」

「現に彼女の魂はあなたと一緒に在るみたいです。」

彼女の言っていることがいまいちよくわからないが、とりあえず剣を砕いてしまったことにお咎めはないようだ。

「た~つ~と~」

「あなたどうするつもり!?かつてのアーデの剣なのよ!!」

「こんなにコナゴナに砕いちゃって!!ただでさえ復元できないくらいの貴重な魔術も施されていたのに!!」

「そ、そんな事言われても仕方ないだろ、もう直せないんだろ!?」

「あーー!!お姉さまコイツ開き直ったわよ!!剣砕いたクセに!!」

「今日も二人は仲がよろしいのですね。いいことですわ。」

どうか、今度の英雄は皆に愛されますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ