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あんな出来事がありましたが、ここでの暮らしは意外にも平和です。

きつい労働をさせられるのではと思ったら、特別そんなことはなく、内職のような簡単な仕事をさせられたり。

ノルマが設定されてますが、それほどきつくありません。

ダマラさん曰く、奴らに塩を送っているようなものだが、生きるためだ。仕方がない。だそうで。

部品を組み付けるだけの簡単な作業なのですが、これが一体何に使われるのか予想がつきません。

ノルマが終わったらその日は自由。牢屋...というよりお城の一室で自由に過ごしていいそうです。

通信機器以外の雑貨や贅沢品は、ドアのモニターに入力すれば、一週間以内に食事と一緒に支給されます。

ダマラさんが、キセルやお酒を愉しんでいる時があって、聞いてみるとそんなシステムがあるようで。

「すまん。うっかり説明するの忘れてたわ。」

と平謝りされました。

シャワールームまで完備されていて、この一室だけで生活できてしまい、あまりに快適でダメになってしまいそうです。

「ここでダメになるようなら、私の国の一族の恥になる。私は負けない。セッカも自尊心だけはしっかり持っておきなよ。」

とダマラさんは言います。言った矢先にゴロゴロしてますが。

私は一刻も早く、あの日常へと帰りたいと願ってます。

この平和な捕虜生活の中で私に異変が起きました。

ある日の食事のとき。

「あんなかっこいい事言った手前だけどさ、やっぱここの食事はおいしいよな~。」

「もう、ダマラさんったら。またこぼしてますよ。」

「いやー、これ本当うまいわ~。」

(いやー、これ本当うまいわ~。)

(?)

ダマラさんの声がまるでエコーのように二重に聞こえたような。

「こっちも。うまいいいぃ。」

(うまいいいぃ。)

また聞こえる。

「しあわせ~。」

(しあわせ~。)

さすがに3回も聞こえるとなると、気のせいではないでしょう。私疲れているんでしょうか。

「どうしたセッカ?こっち見て?」

(しっかしセッカは肌白くてかわいいよな~。)

今度は違う声が聞こえてきました。

「ダマラさんって正直な人って言われません?」

「おお、よく言われる言われる。」

(よくわかったなぁ。セッカ)

「ちなみに天然、わかりやすいとは?」

「う。...たまに言われる。」

(なんか痛いトコ突かれたな...)

やっぱり。

これはダマラさんの心の声…たぶん。

あまりじっと見るのもアレなので食事に戻る。

「どうしたんだ?いきなり。私ともっと親睦を深めたいか?」

「そんなことありません。これ以上親睦になったらいろいろと危なっかしいです。」

「なんだよーいいじゃねえか~。女同士もっともっと仲良くしようぜ~。」

「しょ、初対面のことを忘れたとは言わせませんよ!!」

おかしい。食事に戻ったところでダマラさんの心が聴こえなくなる。

ダマラさんに気を向ける。

「...おい。どうしたんだ、そんな気難しい顔して。」

(苦手な食べ物でもあったかな?)

「今、苦手な食べ物でもあったかなと心配したでしょう?」

「い、いや。別にそんな、あるならもらおうとかおもってないし!!」

「...」

私はお見通しだと目で訴えかける。

「...うう。すまん。なんでわかったんだ?」

「不思議と声が聴こえるんです。」

「声?」

「心の声のような、声が。直接頭の中に。」

「ふむ...お前、もしかして、適合者とかいうやつじゃないのか!?」

「適合者?」

「そうそう、まず私の国じゃ滅多にお目にかかれないエリート中のエリートのことだよ!!」

「外界から来たヤツしかお目にかかれないヤツだよ!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて。」

ダマラさんは私の手を両手で握ってくる。

「最初からそんな能力を持ってたのか!?」

目がこれ以上ないくらいキラキラしている。

「いや、これが初めてで...」

「じゃあやっぱりエリートなんじゃないか!!」

「くぅ~まさか私にエリートな友達ができるなんて!!」

「ちょ、ちょっと!!」

ダマラさんの手を振りほどく。

以前もこんなやり取りがあったような。

「私は本当に一般人で、エリートなんかじゃないです...」

「早く平和な日常に帰りたいと願う一般人なんです。」

「ああ、悪い...雪花にも故郷はあるもんな。」

「すまなかった。一人で盛り上がっちゃって。」

「い、いえ...」

通学路で人がいないと気づき、目が覚めると、牢屋というお城の一室の中で。

そこでは繁殖用として捕虜がたくさんいて。

実際には全く危害のない平和な牢獄で。

でも私の住んでいたあの平和の中じゃなくて。

そして急にエリートになって。

ああ、頭がパンクしそう。

ダマラさんのバカ。

私は一体どうすれば。

どうすればいいの。

「なあ...」

ふいにダマラさんが話しかけてくる。

「私にはセッカのような能力は無いけどさ。」

「今セッカがすごく悩んでるってのは痛いほどわかる。」

「私、セッカと会ってそんなに経ってないけどさ。」

「初対面でちょこっと失礼なこともしちゃったけどさ。」

「一応友達なんだからさ。だよね?お互いわからないことだらけだけど、力になれるよう頑張るからさ。」

「お互いいつもの日常へと帰りたいのは変わらないと思うんだ。」

「帰ることのできる日まで一緒に頑張ろうよ。頑張るからさ。」

馬鹿は私で。

「ダマラさん!!...ダマラさん...」

気が付くと私はダマラさんに抱き着き思いっきり泣いていました。

ダマラさんも泣いているようでした。

牢屋の一室で鳴き声が反響し続けました。


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あれからも私達は平和な牢屋で日々を過ごしています。

とりあえず私にできることは。

待ち続けること。

生き残ること。

これに全力を注ぐしかありません。

ふと牢屋にある小さな窓を見ると。

まるで自由の象徴のように、空は青く澄んでいて、太陽はまぶしくて。

こんなに空がキレイだと思ったのは初めてでした。

窓には外に出られないように、鉄格子がはめられていますが。

でも予感がします。

私たちは自由になれると。

いつか達人が私の前に現れてくれると。助けに来てくれると。

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