プロット状態、読み飛ばしてください(エピローグ)
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エピローグ:魔法少女VS魔法少年
あれから1年の時が過ぎた。
人間界はすっかり様変わりして、東京は商店街もビル群も軒並み破壊され、ゴーストタウンと化した。
そこでは銃の乱射音と光の発射音が混ざり合う。人間の銃弾と、魔法使い達の魔法が混ざり合う音。
そう、文字通りの戦争が始まった。
11か月前、突如自分達を「魔法使い」と名乗る者達が国会議事堂を占拠した。
彼らは杖1本で銃を持つ政府軍と渡り合い、これを次々と鎮圧。
そしてその集団の長である「魔法女王」なる者が世界に対して宣戦布告。
結果、「1万人の魔法使い」対「70億人の人類」という図式が完成した。
当初はその圧倒的な人口差から人類の勝利は時間の問題かと思われたが彼らの力の源である杖は時にはナイフを越える近距離武器、時には大砲を越える長距離武器になる程に強力な武器だった。空中戦においては軍隊の戦闘機の速度を彼らの箒が凌駕していた。
そんな彼ら魔法使いの中で一際恐ろしい魔法使いが槍を持つ紫色の魔法使いの少年であった。軍の戦闘記録によると彼に銃弾を撃ち込めば弾は全てこちらに跳ね返り、ナイフで刺せばその衝撃すら跳ね返され、こちらに切り傷ができているとの記録がある。下手に彼のいる場に核爆弾でも落とせばそれすら跳ね返されるかもしれない。女王に対して核爆弾を落とすという選択肢を各国がとらない理由が常に彼がボディガードについているからである。その全てを反射する魔法の特徴から、軍の間では彼は「リフレクター」という呼称をつけられている。
「この町に魔法使いが潜伏しているという情報が入りました。住民の皆様は落ち着いて避難所に避難してください。繰り返しますーー」サイレンとアナウンスが町中に鳴り響く。
埼玉県男女町。ここに女王が潜伏していると聞きつけた政府軍は避難警報を出し、住民を避難所に逃がしたのち、町中の建物を探し回った。そして、過去の戦闘の爆発で天井にぽっかり穴が空き、廃墟同然と化した男女町中央図書館にてその身柄を発見した。
「見つけたぞ! 魔法女王だ! 奴を捕縛しろ! 無理なら射殺で構わん!」
「構え! 撃て!」
指揮官の合図とともに政府軍が一斉に銃を放つ。
しかし銃弾が女王に触れる前に空の見える天井から1人の少年が落下してきた。
彼に触れた銃弾は全て動きを止め、そのまま政府軍の脚に跳ね返り、命中した。
「いてえっ!」
「出たか。気をつけろ。「リフレクター」だ。奴の前で銃弾もナイフも効かない。奴は狙うな。女王の殺害のみに専念しろ!」
「了解です!」
政府軍が行動に出る前に天井から桜が棘のように女王に降り注いだ。
リフレクターは女王に棘が刺さる前に女王をかばい、空から降り注ぐ桜の棘を政府軍の方に反射させた。
「いてぇ!」
「今度は何だ?」
リフレクターが空を見上げ、呟く。
「来たか」リフレクターが空を見上げ呟く。
桃色の三角帽とドレス、長い金髪の少女が箒にまたがり、リフレクターと女王に杖を向けたまま空で静止していた。
「何だ? 新手の魔女か? いや、魔法少女?」
「こんな時に何アニメの話してんだおめー」
「いや、アレ見ろよ」
「あっほんとだ。魔法少女だ」
リフレクターは箒にまたがり、空を飛んで桃色の少女のところに駆け寄った。
「朝日……」
「月夜……」
二人はお互いの名を呼び合う。
「朝日。私は貴方を守るため、女王を殺す。例え貴方と戦うことになってでも」
「月夜。僕は君を守るため、女王を殺させない。例え君と戦うことになってでも」
大切な人を守ることを願えば、大切な人を幸せにできない。
大切な人の幸せを願えば、大切な人を守れない。
彼らは想い人の幸せより、想い人を守ることを優先した。
お互いを守るため、お互い戦い合うことを選択した。
これはそんな、とある魔法少女ととある魔法少年のお話。