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第85話 シェンナの洗礼

「あー、もう! かわいいわぁっ!! 」


 えっ? えっ!? なに、どういうことっ!?


 目の前のゴツい鎧を着た女性は衛兵士とか なんとからしいけど、

なんでおれは この人に抱きつかれてるんだっ!?



「周りにいる男達って角ばってたり、むさ苦しかったり、

老けてたり、調子乗ってて気に入らないのばっかりだし!!

衛兵士になって初めて 好みの子に会えて良かったーー!! 」


 いや、知らんがな……


 それに、子っていう歳じゃないぞ おれ……



「ねぇ名前は!? 」

「そ、蒼真……って言います……」


 ガッ! って、肩を掴まれ押され、顔を見合されて、

おれは自分の名前を言うのが精いっぱいだった。


「名前も かわいいぃ!! 」


 すりすりすりすりっ!!


「っ!? 」


 い、勢いに圧倒されるっ……この人 凛々しい顔つきなのに

頬を赤くして抱き着いて ほ、頬ずりされてるっ……


 この場にいるジョン達も おれも、

この人の勢いに呑まれて動けないみたいだし……



「ところで男? 女? どっち? 」

「お、男……」


 また肩を掴まれ押されて質問された。


 性別伝えてるし、そ、そろそろ離れてくれるかな……?



「それは好都合だわっ!! ――」

「な、何が―― んんん~~~っ!?!?!? 」


 ガッシリと体も頭も掴まれて、く、唇をををっ!?


「ん、んん~~!! 」


 ガンガンっ!


 だ、ダメだっ!? 甲冑着てるから体叩いても効かないっ!?


「んっ……ぅ……」


 いきなりだったから、い、息が……


「……ぅんっ……」


 抱きしめる力が強くて ほどけないし……


「っふっ……んぅ……、……」


 た、助け……て……





 ジョンは激怒した。

激怒とまでいかなくても怒ってはいた。


 かの暴虐奸智(かんち)、か どうかはわからないが、

初対面でいきなり彼の唇を奪った彼女(シェンナ)

許すわけにはいかなかった。



(ボクだって、彼に口づけをしたことがないのにっ!! )


 ジョンはシェンナに嫉妬していた。


 普段、抱きしめるのですら抵抗され、

今回の件で、彼から公然と抱きしめる許可をもらったばかりなのに、


 初めて出会ってすぐに、強引に唇を奪った彼女が

ジョンは許せなかったのだ。


 それにソーマが抵抗しているようだが、

それを意に介さないシェンナの様子にも反感を抱いていた。



「彼から―― 離れたまえっ!! 」


 ジョンは椅子から立ち上がり、

シェンナからソーマを引き離しに動いた。





「あの……本当に、申し訳ございませんでした……」


 ジョンに怒られて、

我に返ったシェンナは反省の声を上げた。



「だから、この姿勢だけは許していただけませんか……? 」


 庭園の、土の上に正座させられたシェンナは、

若干プルプルと体を震わせながらジョンに許可を求めた。


 見上げたシェンナの視線の先には、

腕を組んで威圧的に見下ろすジョンが立っていた。



 全身を甲冑で身を包んだ彼女は、

その甲冑の構造のせいで、正座をさせられるのが辛かったのだった。


 それに、人の上にあろうとする国の兵士、衛兵士であるシェンナにとって、

膝をつかされ、他人を見上げさせられるのもまた苦痛であった。



 今回の場合はシェンナの自業自得ゆえに言われるがまま従ったのであって、

決して怒りを(あらわ)にしているジョンが怖かったわけでは――



「彼が抵抗していたのを、君は認めて許したのかな? 」

「っ、うぅぅ……」


 眉間にしわを作っているジョンの険しい言葉に、

シェンナはビクッと大きく体を震わせた。



 なお、シェンナに強引に唇を奪われていたソーマは

酸欠気味になって ぐったりと脱力したため、

ミザリーとパンジー、パプル家の使用人によって自室へと運ばれていた。



「そ、それでだ。衛兵士が何の用で来たんだ? 」


 見かねたディールが流れを変えるため、シェンナに尋ねた。


「あ、えっと、その……」


 シェンナは本来の目的を思い出し、


「黒い魔物と黒髪の人間の……情報を受けて……

こちらに、ブリアン家の人間がいるとも……聞いたもので……」


 シェンナは言葉を選びながら、たどたどしく そう答えた。


 連れていこうとした人物(ソーマ)を動けなくさせたのは

他でもない彼女自身だし、また言葉の選びによっては、

再びジョンの怒りを買ってしまうからだった。



「誰から? 」

「え? 」


 ジョンの質問に、シェンナは虚を突かれた。


「誰からその情報を? 」

「そ、それは……出所を教えるわけには……」

「……まぁいい。 ボクたちも『それ』について、

国衛館か斡旋所かに出向こうと思っていたところだったんだ。」


 ジョンのその言葉を聞いて、


「で、ではこれから――」


「誰が立っても良いと言ったかな? 」


「―― そ、そんな……」


 喜色を浮かべ立ち上がろうとしたシェンナは再び正座させられていた。



「ぼくとパンジーとで行ってくるよ。」

「あぁ、それが良いと思う。」


 そんな彼女の様子を他所(よそ)に、

ディールはパンジーを探しに屋敷内へ入り、


「さて君は、黒魔導教団について、どれくらい知っているのかな? 」


 ジョンはシェンナに尋ねることにした。

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