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第63話 無くしたモノ

「まさか、地面が揺れるとは思わなかったね。」

「朝っぱらからなんて、運が悪いですねブラウさん。」


 机の下から出てくるブラウに同じく、

紅い髪の男マルゼダが軽く応じた。


 ブラウは昨晩、ブリアン家の屋敷に帰らず、

街で偶然再会したマルゼダの借りている宿で、一晩を明かしたのだった。


 夜も深かったため早々に睡眠をとって、

日が昇って寝起きの直後に、街を地震が襲ったのだった。



「あまり揺れが強くはなかったが……」

「まぁ『不安がある以上に準備は多くするべきだ』に、

越したことはないですね。」

「そうだな。」


 地震そのものが、かつて一度起きたことがあったか否かくらいのもので、

二人は一応、再度 地震が起きるかもしれないと警戒をすることにした。


「そういえば、彼はどうです? 」

「あー、あの後、更に体調を崩してね……」

「声も出なくなってるのに……」


 重なる彼の不幸に、マルゼダは哀れみを感じざるを得なかった。


「一応、シアンも心配だから、屋敷に戻るよ。」

「あ、おれも行って良いですか!? 」

「もちろんだとも。」


 二人は宿を引き払い、ブリアン家の屋敷に行くことにした。


 通りすがる街の人々は、

起きた地震に対して軽く話題にし、日々の生活を変わらずに送っていた。





 ぁ、頭が痛い……喉もガラガラな感じがする……


 いつ寝ていたのか、いつ起きたのか、

それすらわからないけど『おれ』が気づいた時には、もう朝だった。


 ガラス窓から差し込む光の方から顔を背けて目を向けるとミザリーさんが、

逆に光の方へ向くとアルテナがこちらを向いて眠っていた。



 どっちも裸!?



 って、よく見たらアルテナは、鎧を外した下着(ビキニ)の恰好だ。

 ドレスより露出度の高い鎧を着た( ビキニアーマー )姿のほうが、

やっぱりアルテナって感じがする。


 ブリアン家( ここ )に来てからは、上に借り物のドレスを着ているから、

すぅすぅと寝息を立てているアルテナが、剣士じゃなくてお姫様に見えるんだよね。


 でも、なんでアルテナも一緒のベッドで寝てたんだ?

まぁ、三人一緒でも、ベッドには余裕な広さがあるんだけどさ……


 あ……おれ、ドレス着たまま寝てる……


 ハイネックで手首のほうもキュッと絞られ、

首や袖口の中から白いレースが外へとふわふわ出ている。

 スカートも長めのワインレッドのドレスを、

おれは昨日から着ていたんだ。


 脱がされてない……ってことは、首と腹の痣も見られてないんだよな?


 良かった……


 そのことにちょっと安心していた。



 さて、朝の排泄……二人ともまだ寝てるみたいだし、

そっとしておくか……


 二人を起こさないようにベッドから抜け出したところで、



(そういえば、おれの服って、どこにあるんだっけ? )


 初めてジョンの屋敷に来て洗濯に出して以降、

体調崩したり、ミザリーさんが率先して着替えを用意してくれたりで、

自分のパジャマやこの世界で貰った服を自分の目で確認していないことを思い出して、

おれは部屋の中を探すことにしたんだけど――



「ど、どこにあるんだ? おれの服……

鎧も、ベルトも靴も、部屋にないのかっ!? 」


 寝込んでいる間、この部屋に鎧や親父さんに貰った道具入れの腰巻(  ベルト  )や、

下駄もどきな板靴も、使用人の人とかが運んでくれてた気がしていたはずなのに……



「ふぁ……すっかり寝てしまいました……どうしました? 」

「ん、んん……どうしたのよソーマ、そんなに慌てて。」


 部屋をゴソゴソと物音を立てていたから二人が起きたけど、

それどころじゃない。


「おれの服とか、どこにあるんです? 」

「え? 」

「そんなの部屋に……変ね……」


 おれに言われて、ふたりとも部屋を見回して、事態に気づいたようだった。


 タンスやクローゼットも、

ないって確認したところは開けっ放しにしていて、


 この部屋で収納できそうなところは、

もう開けてないところがなかったんだ。


「おれの服……より、親父さんに作ってもらった鎧も、腰巻も、

おれにために作ってもらった靴も、なんでここにないんですか!? 」


 思わず声が張り上がる。


 別にミザリーさんが悪いわけじゃないと思うけど、でも、

膨れ上がった感情のやり場が、他になかったんだ。


「そ、それは……」

「どこにあるんだよ……」


 なんかもう、色々泣きたくなってきた……

すでに泣いていたような気もするけど……頭が痛い……



「と、とりあえず他の人に言って、探してもらいましょう。」


 アルテナにそう言われ、尿意もあったから、

おれは渋々部屋を出た。



「あっ……」

「シアンさん……」


 扉を開けるとシアンさんがいて、

でも驚いた彼女はうつむくと、


「あ、あの、えっと、そ、その……~~! 」

「あっ……シアンさん……」


 おれから逃げるように走りだし、彼女の部屋に駆け込むと、

バタンと強く扉を閉める音が廊下に響いた。


 ……あー、思い出してきた。

おれ……押し倒されたんだっけ……


 おれが覚えているのは、あの時の彼女の……ぐっ……


 漏れそう。


 シアンさんには悪いけど『こっち』のことを優先させてもらうことにした。



 結局、ジョンやバーントさん、

他の使用人のみんなに、屋敷の中を徹底的に探してもらったけど、

おれの持ち物は全部なくなっていたみたいだった。


 ……なんでなんだよ……本当に……

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