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第52話 玉石

 ミザリーさんがメイド服を着て部屋から出て しばらくしたら、

白衣を着た医者みたいな人やミザリーさんに他のメイドさんたちに、

アルテナたちが一斉に顔を見にやってきて、

それだけで更に疲れたような気がしていた。


 おれは未だに何も着てないから、

正直、あまり人に会いたくもないんだけどね……


 起きて服を探す余裕もなかったし……



 で、診察をしたお医者さんが言うには、


「食事不足に、今までの疲労やら不調が溜まっていたのが、

体が冷えて、突如として症状に現れてきた。」


 らしくって、ベッドの上での安静を言い渡された。


 声が出ないことに関しては、

お医者さんも初めてらしく、様子見をするしかないそうだ。


 魔力がどうこうとかお医者さんが言ってた気がするけど、

『様子見をする』って聞いてからだから、後の話はあまり聞いていなかった。



 それより申し訳なくてアルテナ、シアンさん、ブラウさん、

ついでにバーントさんへ視線を向けると、


「しばらく休んどきなさい。」

「お体を大事にしてくださいね。」

「どのみち、しばらく滞在するんだから良いだろう。」

「……寝てろ。」


 と、ありがたいお言葉が。


 元の世界では……体調不良でも休めなかったしね……


 まだ声も出ないし、言葉に甘えて休ませてもらおうかな。



 それにしてもバーントさんは、

当たり前のようにブラウさんのそばにいるな。


 おれの知らない間に何が? ――





 ソーマの様子を見終えたバーントがジョンの部屋に入ると、

席についているジョンは、白い寝間着姿で蜂蜜酒を飲んでいた。


「どうした? ボクを笑いに来たか? 」


 ジョンの顔は酒で赤く、

相当に酔っているようであった。


「ジョン。」

「パパとママは相変わらず、あちこちの女を連れてくるし、

使用人たちの女たちは影で何を言ってるのかわからないし……」

「……」

「やっぱり女より男の方が良いよ。

気を使わなくて済むからね。」

「……」

「あぁ……やっぱり男娼を買おうかな……」


 そう嫌味らしく愚痴っているジョンの言葉を、

バーントは過去にも、繰り返し それらを聞いたことがあった。


 ブリアン家の先祖は、

その当時のボルレオ王とともに戦ってきたらしく、

魔物発生後のノースァーマの復興にも一役買っている。


 当時は『王と親交が深かっただけ』と、周囲に揶揄されていたらしいが、

今ではそこらの貴族がこぞって娘を嫁にと言うくらいの立場になっている。



 ―― だからこそ、ジョンには相手方の家柄だけではなく、

惚れ込んだ娘を嫁にし、家を継いでもらいたい。

 そのために、男に情愛を向けられていては困る――



 その想いをジョンの両親から聞かされたから、

バーントはそれを汲んで、ブリアン家お抱えの冒険者の一団から抜けたのだった。


 貴族お抱えの冒険者の一団に入団できるだけの素質のあったバーントは、

依頼をこなし、その時の依頼に応じて頭役を務めるまでになった。


 元が貴族のお抱え冒険者であったことから、

彼を『玉石(ぎょくせき)』の~~、と呼ぶ者たちもいるが。



「それで、彼を……」

「……、……、……? 」


 ジョンは視線をバーントへ向け、言葉を待った。


「ソーマを、お抱えの男娼にしようとしたのか?」

「――っ!? 」


 その反応に、バーントは図星だと感じた。


「そんなつもりじゃなかったんだ……」

「だが……」

「最初は……ちょっとからかうつもりたったし、

彼の対応がおもしろかったから……」

「彼が今、声が出ないことも知っていただろう。」


 うつむいているジョンの悔いている様子を見ながらも、

バーントの言葉は彼の胸を突いた。


「そうだよ! 知ってたさっ! 」


 ジョンはカッと顔を上げ、バーントへ叫んだ。


「あぁ知ってたよ! 声は出ない、背も低い、

抱き着いたら逃げ出せないほどに、力もない。

 早々になんとかしないと、って思ったね!! 」

「ジョン……」

「わかっているさ! 自分が最低だってことくらい!

でもバーントだって悪いんだからなっ!! 」


 ジョンの叫びは止まらず、

彼は立ち上がりバーントの前にまで詰め寄った。


「おれが……? 」

「パパやママに何を言われたのか、

あの時、急にボクの前からいなくなったじゃないかっ!!」

「――っ!? 」


 瞳を潤ませて叫ぶジョンに、

バーントは背後から刃物で刺されたかのような衝撃を受けた。


 ―― おれのせいなのか? ……


「すまない……」

「――っ、謝ってほしいんじゃないんだよ!! 」


 ジョンはバーントに抱き着いた。


「ボクは……ボクは!! ただそばにいて欲しかっただけなんだよ……」

「ジョン……」

「ブリアン家だ貴族だ、本当はそんなもの、どうだっていいんだよ……

ただ、立場もなく一緒に居てくれる人さえ、そばに居てくれれば……」

「……」

「女はどいつもこいつも『ブリアン家に嫁ぎたい』だけで、

ボクと結ばれたいわけでもなんでもないんだよ……」

「ジョン……」

「男じゃなくても良かったんだよ……ボクは……ボクは……」


 バーントの胸のうちで泣くジョンを、

バーントは抱きしめることもできずに手を震わせていた。



 ……おれのせいじゃないか……


 (ジョン)が男色に走ったのも、(ソーマ)が傷ついたのも――


 ―― おれのせいじゃないか……

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