その男、アルイア
初投稿です(二回目)
まだまだ拙い文章ですし、更新も不定期ですが、よろしくお願いします。
屍だらけのその大地には様々な姿をした七人が立っていた。
彼らも満身創痍でなんとか立っている状況だった。
たった七人でその大戦を終わらせた者たちを人々は『七つの大罪』と呼んだ…
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ラングドリア王国を震撼させたメライゴア大戦から5年。
名もない平原に男は立っていた。
「ふぅ、こんなもんか…」
竜の鱗の鎧を着た男…アルイアは剣から血を振り払いながらそう呟いた。
そういえばカッコよく聞こえるが、実際には血をかぶったかなり強面である俺が剣をふっているだけだ。
俺は王国のギルドに属した冒険者で、今日受けた依頼であるオーガの討伐に来ていた。
「た、たすけてぇぇぇぇ!」
俺が討伐証明部位とされているオーガの角を剥ぎ取っていると、そんな声が背後から聞こえてきた。
振り返ると、いかにも初心者といった風貌の少年が三匹のゴブリンに追いかけられている。
「そこの人〜!助けてくださいぃぃぃ!」
チッ、面倒くせえ。
「わかった、わかったから大声出してモンスターを引き寄せるような真似しながら走るのはやめろ!」
「す、すみませぇぇぇぇん!!」
「うるせえって言ってんだろ!」
そんなやり取りをしていたら、少年とゴブリンがここまでやってきた。俺は剣を構えて、横に振り切る。
「おらぁ!!!」
「ゥ……」
首を一閃された三匹は悲鳴をあげる暇もなく絶命した。
「はぁはぁ、助かりました。ありがとうござ…ひっ!」
またか…俺はこんな風貌だからよく怖がられるし、ましてや血なんてかぶってると怪物にしか見えないと自分でもわかっている。それでも、毎回のように怖がられると気が滅入るというものだ。
「あっ、すみません!命の恩人なのに!」
「気にすんな、いつものことだ。それよりなんでそんな初心者丸出しのお前が一応中級者以上向けのこの平原にいるんだよ。」
「い、いやぁ。そんなことより僕メルルって言います。あなたは?」
そんなことよりってこいつ…
「はぁ、俺の名前はアルイアだ」
「アルイアさんですね!この度はありがとうございました!」
「ああ。このまま帰すのも心配だからギルドまで送ってやるよ」
「何から何までありがとうございます!」
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「ほら、入るぞ」
俺が扉を開けてギルドに入ると、騒がしかった冒険者たちが静まり返った。
「お、大物なんですね…」
「嫌われてるだけだ」
受付に向かうといつも通り引きつった笑みを浮かべた受付嬢が対応してきた。
「よ、ようこそ」
「クエスト達成報告をしに来た」
「は、はい。オーガですね。こちら報酬の3000ラウンになります。ありがとうございましたっ!」
挙げ句の果てには涙目に早口で追い出されるかのようになってしまった。こういうのが地味にこたえるんだよな…
「おい、メルル。俺はいつも通り歓迎されてないようだし宿に帰る、じゃあな」
「え、帰っちゃうんですか?」
心なしか寂しそうな顔をするメルル。
「ああ、その方がみんな嬉しいだろうしな」
「あの!また今度お礼をさせてください!」
「気にするな、なんのためかはわからんが初心者であるお前がモンスター討伐を受けるってことは金がいるんだろう。貯めておけ。」
「…ありがとうございます!」
「じゃあな」
ギルドを出ると、冒険者達は騒がしさを取り戻した。
そんなことを気にしないようにしながら俺はいつも泊まっている宿である『兎の足跡亭』への道を進む。この宿はこんな俺でも快く接客してくれる数少ない宿だ。飯はうまいし、部屋は綺麗だし最高だ。
「ただいま」
「あらあら、おかえりアルイア!今日の晩御飯はグリーンボアのステーキだよ!今から食べるかい?」
この恰幅のいいおば、お姉さんは『兎の足跡亭』の女将であるベリムさんだ。
「ああ、いただくよ」
「あんた!ステーキ一つ!」
「おう…………」
寡黙なこの人はヨネズさんでベリムさんの夫だ。声の大きいベリムさんと相性がピッタリだと思う。
「はいよ!」
少し待っていると料理が運ばれてきた。とてもいい匂いがしてうまそうだ。
「いただきます。」
口に肉を入れるとジューシーな肉汁が染み出してきてとても美味しい。添えてあるルグリアキャロットもマッチしている。
あっという間に食べ終わってしまった。
「ごちそうさま。」
そう言って席から立ち上がる。
「いつも綺麗に食べてくれてありがとね!」
こんな風になんでもないような言葉にも好意的に返事をしてくれるから、この人たちが俺は好きだ。
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部屋に戻ると鎧を脱いで俺はベッドに倒れこんだ。月明かりに右手を伸ばしながら今日を振り返ってみると、久しぶりにベリムさんとヨネズさん、受付嬢以外と会話をしたなと思い少し悲しくなる。
そして手を伸ばしていると嫌でも目に入るのが手の甲にある竜の紋様だ。これのおかげで飛躍的に身体能力が上がっているとはいえ、消せるのなら消したいものだ。
顔のせいもあるが、この紋様のせいで俺は人と関わりを持つことができない。本当に忌々しい。
そんなことを思いながら眠りについた。
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