表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
プロローグよりも前に
6/52

魔力と魔法の向上を[その5 ]

誤字を直しました。

ご指摘ありがとうございました。

 ジョナスは王宮勤めなのに、暇さえあればーーいや、暇がなくてもデイトン家に来るようになった。彼の得意な空間移動なら、瞬時に来れる。


「じゃあ、まずは僕とフェリシアで。ウチのカントリーハウスまで。さっき行ったところだから、ちゃんと頭の中に思い描いて」


 ジョナスがフェリシアの手を両手で握る。途中で万が一手が離れても、フェリシアの魔力は覚えたのですぐに探し出せるだろうが、迷子にはさせない方がいい。

 魔法に苦手意識を持たせるのは得策ではないのだ。


「いきます。

 ーー時と空間を司るもの達よ。我が力に応え、かの地へと導け!」


 いつもより少し張った声でフェリシアが唱えると、瞬時に足元に魔方陣が浮かび上がり、煌めきを残し、二人の姿が消えた。

 そして五分ほどで二人が帰ってきた。


「はあ……っ、はあっ……」


 肩で息をするフェリシアをソファーに座らせ、ジョナスはリオンを振り返った。


「次はリオンの番」

「はい」


 ジョナスがフェリシアにしたようにリオンの手を取る。息を整え、リオンが呪文を唱えるとジョナスのカントリーハウスに瞬時にたどり着いた。


「じゃあ帰ろう」

「はい」


 少し疲労してあがる息を整える。リオンはさっきフェリシアが何も喋れず、身体全身を使って息をしていた理由を思い知った。


「いきます

 ーー時と空間を司るもの達よ。我が力に応え、かの地へと導け!」


 自身に纏う風の煌めきが辺り一面を占め、そして緩和するとデイトン家へ戻っていた。

 フェリシアは未だ呼吸が荒い。リオンは自分の呼吸も荒いと思ったが、ジョナスはにっこり微笑むと、さらりと告げる。


「じゃあもう一度」

「……え?」

「もう一度。リオンはまだ余裕があるからね」


 リオンは息を吐き、もう一度ブロウズ家とデイトン家を往復し、フェリシアの隣に座り込んだ。


「はあ……っ、はあっ……」


 隣ではまだフェリシアが荒い呼吸を繰返している。リオンは自分の呼吸の荒らさもそこそこに、フェリシアの頭を撫でた。

 フェリシアはリオンに寄りかかり、目を閉じた。


「今日はここまで。ゆっくり休んで」


 はい、と言いたいが、息の荒らさがそれを許してくれない。取り敢えず頷いた。


 二人は最近ジョナスの教えで、空間移動をメインに鍛練していた。始めは庭を数メートル移動しただけだった。次第に邸内の部屋から部屋へ。段々距離を伸ばし、今日はとうとう他の領地であるブロウズ伯爵家のカントリーハウスだ。

 まずリオンとフェリシアを連れてジョナスが自分の家へ移動した。空間移動するには、その場所をきちんと知っておく必要があるからだ。


(流石ジョナス様だ)


 リオンは宮廷魔術師を窺い見た。侍女が用意した紅茶と菓子を楽しんでいる。

 自分はジョナスを連れて二往復しただけで息があがっている。

 しかしジョナスは二人を連れて、しかも呼吸を荒くしていない。なぜ?

 リオンの視線に気付き、ジョナスはにっこり笑う。


「慣れて無駄な魔力を使わなくなるともう少し楽に出来るよ」


 欲しい答をさらりとくれ、リオンも目を閉じた。しばらくどうしようもない。




「宮廷魔術師がこんなに頻繁に抜け出していいのかい?」

「魔術団は僕一人じゃないしね。問題ないよ、きっと」


 きっと、か。ライナスは苦笑したが、割りを食うのは自分ではないので放っておくことにした。

 先程までフェリシアとリオンに空間移動の指導をしていたのだが、二人とも魔力をつかいきり、ソファーで眠ってしまった。


「ブロウズ家への移動の練習とは……何を考えている?」

「いやぁ。リオンとライナスが持っている属性が違うから、僕が協力してあげようかなって」


 嘘ではないが、本当でもないだろう。軽く睨むと目をそらす。


「ウチは別に魔力がなくても跡継ぎに問題ないんだけどね。そろそろ何とかしろって言われちゃって」

「親戚は?」

「ダメダメ。遠縁の上に強欲なのばっかりだよ」


 ライナスはいい子がいたよね、と羨ましそうにジョナスがため息を吐き出す。


「別に血が繋がってなくてもいいんだけどなぁ。良さそうな子いない?」


 跡継ぎ問題は、貴族なら避けられないだろう。領地の運営もある。


「さあ?私も詳しくないからな」

「僕は全く知らないしね」


 二人はため息を漏らし、二杯目の紅茶を手にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ