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女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
美味しいお祭りの女神
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美味しいお祭り[その1 ]

誤字を直しました。

ご指摘ありがとうございました。

 フェリシアの説明だけでも、カイルはだいたい把握出来、料理は押し寿司から変更することになった。

 変更と言っても、押し寿司を知っているのは四人だけだったので、初めからこの料理だと周りは思っている。


 あの話し合いのあと、一番大変だったのはジョナスの説得だったが、なんとか成功した。

 品評会には休みを取って家族で行くと同時に決まったのは仕方ない。なぜかライナスとリオンも来ることになっていたが。


 そして、今日。

 先にリドホルム国へ行くフェリシアに難題がふりかかっていた。


「フェリシアを困らせるんじゃありません」

「いやっ」

「やだやだやだっ。今日は僕と遊んで!」


 この数日、作り方の指導にデイトン伯爵家に泊まり込んでいた。その方がバーシェス商会に行きやすいからなのだが、昼も夜もフェリシアがいないと、甥と姪が最近ご立腹だ。


(可愛い)


 周りに年下がいないフェリシアは、甥と姪に滅法弱い。甘やかしてはいけないとジョナスの溺愛を受けるフェリシアは分かっているが、それでも少し甘い。


「お仕事なのよ?あとからみんなで来てね」


 ぎゅっ、と抱き締めたあと頬に口付けて微笑みかける。まだむすっとしている二人に最後の手に出る。


「あんまり我が儘言うと、二人はお留守番になるわよ?」

「いやっ」

「そんなのやだっ」


 涙目で見上げてくる二人にメロメロだ。

 頭を撫で、あとから来てね、と言えば頷いた。


「もう時間だろ」


 その様子を苦笑して見ていたローレンスは、今回ライラと共に留守番だ。

 三人目が腹にいるライラを異国に連れていくことも、一人で留守番させることも出来ないというのが理由だ。

 当初、ジョナスと子供二人だけなのを不安がったが、ライナスとリオンも一緒だと知ると、デイトン伯爵家の二人にブロウズ伯爵家の四人をお願いした。

 ジョナスと子供二人と、勿論フェリシアだ。


「では、行って参ります」


 空間収納に詰め込んだフェリシアは、手ぶらに近い格好で飛んでいった。

 今はもうデイトン家だ。


「さあ、二人とも。今日と明日の勉強を済ませなさい。祭りに行く約束だったよな?」

「……はい」

「……はぁい」


 とぼとぼと侍女に連れていく子供をしばらく見たあと、ローレンスは妻に手を差し出した。


「君はゆっくりしていて」

「ええ。自室で編み物でもしておくわ」


 いつもよりゆっくり歩きながら、更に賑やかになるであろう未来を思い描くのは悪くなかった。




 □ □ □ □ □




 フェリシアはリドホルムに着くと、さっさと荷物をほどき、バーシェス商会の人達と品評会の会場へ向かった。


 品評会では、リドホルム国から一人サポート役としてこちらにつくが、それがなかなかの人物だった。


「審査員席はあちらになります」


 言いながら手で指す方向と視線が異なる。「手で指す方と顔を向けてる方どっちだ」とカイルが睨み付けると、手を強調する。

 しかしフェリシアは、たまたま会場にいた品評会運営委員の人間に確認したところ、そのどちらでもない方向を知らされた。


「もう冷蔵庫は使えますよ」


 勿論、調理スペースを設置している大工に確認したところ、魔道具の使用はまだ出来ないとのことだった。


 この二つの件だけでも彼のことを信用出来ないと感じた。

 なので、本番は椅子に腰掛けて残り時間を時折知らせてもらうことになっていた。

 表向きの理由は、エイジャー国の調理方法がリドホルム国ではメジャーでないため、となっている。


 バーシェス商会の人達も、オッレが信用ならないと分かっているので、品評会のことについては、宿で話すことになった。

 オッレがついて来たがったが、受け入れないといけない理由がない。


 運営委員に明日必要な材料のリストを提出し、帰ろうと思ったが、ふいにフェリシアは材料のリストを渡した相手を振り返った。


「お名前を聞いても?」

「……え?」

「そのリストのものをお願いしますわ」

「はい。承りました」

「それで貴女のお名前は?」


 リストを渡された女性が黙り込んだ。

 嫌な予感がして、フェリシアは彼女からリストを返してもらおうと手を伸ばすと、くしゃくしゃになるほど胸に抱きかかえられた。


「名乗れない方ではなく、他の方にお願いしますから、返してください」

「キチンと承りますから!!」


 更にくしゃくしゃにされるリストにフェリシアが眉を寄せた。神が関わるこの祭りで、何かがおかしい。

 その時、近付いてくる靴の音がする。


「如何なさいました?」


 リストをくしゃくしゃにした女性とフェリシアの間に入り、こちらを見てきた。

 まるで私が悪役だ、とフェリシアは面白くない。しかし話さない訳にはいかなかった。


「明日の品評会の材料のリストをお渡しして、材料の手配をお願いしようとしたのですが……」

「何か不具合でも?」

「名前をお伺い出来なかったので、どこからか潜り込んだ運営委員のフリをした偽者かと……」


 間に入ってきた女性は、リストをくしゃくしゃにした女性を振り返った。


「どういうこと?」

「いえ、あの」

「リストもくしゃくしゃですし。疑っても仕方がない状況ではありませんか?」


 フェリシアがため息をつくと、うしろからカイルがやって来た。


「どうした?」

「材料のリストをお渡しした方の名前をお伺いしたところ、拒否されましたの。

 その上、リストはあんなにくしゃくしゃに」


 フェリシアの言葉に、カイルが女性の胸にあるリストを見た。自然と険しい目付きになる。


「品評会運営委員は、俺達の邪魔をしたいようだな」

「その様なことはありません!」


 間に入ってきた女性が少し大きな声を出す。


「そうか?

 リドホルム国からあてがわれたサポート役も使えないしな」

「使えないとは、どういうことでしょうか?」

「そのままだ。

 審査員の席は違う場所を教えられるわ、まだ使えない冷蔵庫を使えると言い出すわ、正直迷惑だ」

「そんな馬鹿な……」

「挙げ句にリストをくしゃくしゃにした上に名乗れないだと?これでどう信用しろってんだ」


 呆然とカイルの言葉を聞いていた女性は、リストを持つ女性に手を伸ばした。


「リストを貸しなさい」

「いえ、でも」

「いいから貸しなさい!」


 渋々リストを渡し、むすっとしている。


「リストに間違いはごさいませんか?」

「……ああ。大丈夫だ」

「では、私マルティナが承りました」


 聞くまでもなく名乗ったマルティナに、カイルはにやりと笑った。分かっているじゃねぇか、と表情が言っている。


「あとは任せた」

「お任せください」


 カイルが片手を上げ歩きだしたので、フェリシアはマルティナに軽く頭を下げ、後を追った。

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