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女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
初恋のこじらせ方
28/52

正しい魔法の使い方[その3 ]

誤字を直しました。

ご指摘ありがとうございました。

 食堂に入って来たのは……。


(……誰?)


 マシューが人物を特定出来ないでいると、フェリシアが微かにだが嫌そうに彼女を見た。


「フェリシア、きちんと御忠告差し上げたはずですわ」

「……殿下の御前ですのよ?」


 フェリシアは、名前を呼ばれたが呼び返しはしなかった。


「いかがされましたか?」


 別の入り口から入って来たのはエイムズ子爵のシンディーだ。

 王宮でのお茶会で、何度も会っているため、「お久し振りでございます」とアレクシス達に挨拶している。


「こちらのフェリシアが、婚約者がいながら他の異性と仲良くしていたみたいで……」

「まあ!」


(フェリシア様、じゃないの?なんで呼び捨て)


 年が近い上位貴族なら把握しているつもりだ。しかしフェリシアを呼び捨てにした令嬢を知らない。


「君は誰?」

「あ。私はフェリシアのクラスメイトで、オルコット子爵の娘、ローザです」


 ローザはマシューの問に、満面の笑みを浮かべる。

 対してフェリシアは、なんで聞いちゃうの、とマシューに視線で訴える。


(聞いたら駄目だったの?)


 しかも、アレクシス、アーリン、ヴィンセント、ベリンダの四人にも何やってるんだ、という視線を送られた。

 しかし、相手のローザはそんな彼らに気付かず、にっこり笑う。


「アレクシス様、ヴィンセント様。

 先日は昼食をご一緒させていただきありがとうございました」

「だいぶ緊張されてたみたいですけど」

「またご一緒していいですか?」


 アレクシスの婚約者で公爵令嬢のアーリンの発言を途中で遮り、アレクシスとヴィンセントに笑みを向ける。

 一体誰が八方美人なのか、と問いたいくらいだ。


「あら、お茶をされていらっしゃるの?

 久し振りに私も参加させていただいてもよろしいでしょうか?」


 にっこり微笑むシンディーに、フィリスが肩を竦めた。


「茶器が足りないわ」

「食堂ですもの。借りれるでしょう」


 言いながらシンディーはフィリスの隣に座った。それでは誰が借りに行くのだろうか。


「呼ばれていない場に強引に参加するものではない」


 アレクシスの固い表情と声に、二人は一瞬だけフリーズした。しかし、一瞬だけだ。


「では次回お誘いいただけませんか?」

「私もお願いします」


 シンディーの発言にローザが便乗する。珍しくアレクシスが顔をしかめた。


「それで、バイロン。

 フェリシアがグレンの婚約者だと分かっただろう。色々と言っているようだが、フェリシアの傷になってはーー」

「しかし!

 フェリシアはグレンを嫌っています!!」


 バイロンはフェリシアからもらった手紙をアレクシスの前に並べ、なかでも嫌々婚約したことと恋愛感情がないと書かれたものを渡した。


「……フェリシアの字ではないな」

「は?」

「これらの手紙はフェリシアが書いていない」


 アレクシスが断言すると、食堂にいた人々がざわめきだした。


「あの、アレクシス様」


 白い手を軽くあげたフェリシアに視線が集まる。


「是非、使いたい魔道具があるのですけど、よろしいでしょうか?」

「使いたい魔道具?」

「はい。

 触れていた人間を特定する魔道具ーー残魔力測定機です」


 ざわめきが大きくなる。

 魔道具はけっして安くない。なぜそれがすんなり鞄から出てくるのか。


 それとは別に、マシューは反応のおかしい人間をしっかり観察していた。


「私はそのような手紙を書いた覚えがありません。ですから、これがアボット公爵家の……」


 ちらり、と視線でフェリシアはバイロンを見る。バイロンは苛立たしげに舌打ちした。


「バイロンだ」

「バイロン様以外のどなたかの残った魔力が割り出せればーー」


 残った魔力で人が特定出来るのは、指紋のように人により魔力に特徴があるからだ。

 色、光り方、渦の巻き方など。


「次いで、このーー虚実の鐘」


 食堂内のざわめきが更に大きくなる。ざわめきに引き寄せられたのか、新たに何人かが入って来て、周りから説明を受けている姿がちらほら見える。


 にっこりとフェリシアは頬に手をあて笑う。


「範囲はこの食堂内。ええ、きちんと広範囲のものを持参しておりますわ」


 実に楽しげだ。

 皆が隣のグレンを窺うと、彼は回りの反応とは全く異なる表情を浮かべている。


(バカップルは健在、と)


 マシューはフェリシアの用意周到さに引っ掛かるものがあった。フェリシアの養父が宮廷魔術師団の副団長だとしても、そんなに簡単に買い与える代物ではないはずだ。


(確かにあの家は変わってるけど)


 しかし、虚実の鐘ーー裁判で使う魔道具をわざわざ使うとは、大げさだ。

 範囲によっても値段は変わるが、食堂となるとだいぶ凝った髪飾りほどには高価な物だ。使い捨てだというのに。

 質問に対して、真実を語ったら『リンゴン』と高めの鐘の音が、嘘を述べたら『ブッブー』と低音の鐘がなる。

 どんな仕組みでそうなっているのかマシューには理解できないが、魔術で魂と契約させられるそうだ。

 そのため、有名な俳優でも騙せないという。


「しかし、フェリシア」


 アレクシスが声を発すると、辺りが静かになる。

 その効果を狙って間をとったアレクシスは、いつもより少し意地悪な笑みを浮かべた。

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